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ガールズ・ゲーム  作者: 草鳥
二章
14/139

14.果てへの導線




 カガミさんがいなくなって、自分で探すことも、会いに行くことも諦めて。

 日々を空虚に過ごしながらも、それを受け止めきれないでいる自分がいた。


 あの人が急にいなくなるなんてありえない。きっとこれは夢なんだ。目が覚めたらカガミさんがおはようって言ってくれて、高校入学おめでとうって微笑みかけてくれる。

 そんな思いを心の底に抱いていた。


 でも、色彩が抜け落ちた世界は、まるで悪い夢みたいで。いつまでたっても覚めなくて。


 次の日も、その次の日も覚めなくて。

 一週間が過ぎても覚めなくて。

 一ヶ月過ぎても覚めなくて。

 半年経っても覚めなくて。

 一年経っても覚めなかった。


 いつになったら――覚めるのかな。






 ぐい、とジェットコースターの急カーブに入ったときのように身体を大きく振り回される感覚がして、その直後思い切り何かに背中をぶつけた。そのまましりもちをついてしまう。

 ガァン! という音と、硬いものにぶつかった衝撃で意識が覚醒する。


「いったー……うぷ、なんでぇ……?」


 一瞬だけ猛烈な吐き気がして、すぐに治まった。

 前回は普通に目を覚ましたというのに今回はどうしてこんなに乱暴なスタートになるのか。回によって違うのか、それとも今回がイレギュラーなのか――そう思案を巡らせようとした時だった。


「あいてっ!」


 何かが脳天に落ちてきた。涙目になりつつその何かを拾い上げる。それは分厚いファイルだった。座り込んだまま振り返ってみると、そこには金属製の棚があった。自分はこれに背中をぶつけたのだ、ということと、同時にここからファイルが落ちてきたということを理解する。

 見回してみると、神谷は自分がいる場所が小さな部屋だということがわかった。照明はついておらず薄暗いが、いくつか棚が設置されており、そこにはビンやビーカー、試験管が保管されてあるのがわかった。

 見たことのない場所だ、と思う。微かに薬のような刺激臭が鼻につき、病院を想起させた。


「そうだ、なんなんだろこのファイル」


 自身の脳天を直撃したファイルをおもむろに開く。

 その行動に意味は無かった。ただの好奇心だった。痛い思いをしたのだから、せっかくだし――そんな軽い気持ちだった。

 適当に挟まれた書類をぱらぱらとめくり、適当なところで止める。

 そこに書かれていたのは、


 ――異能保持者(ホルダー)の――人工――体組織とその――月――相関――


「え……」


 かすれてところどころ読めなかったが、そんな単語が並んでいた。

 具体的にファイルの中身を想像していたわけではない。だがあまりにも想定とかけ離れたその内容に、神谷の唇が震えた。

 何かとても不穏な予感がして、思わず手で口を覆う。

 震える指で他の書類も見てみると、やはり大部分が掠れて読めなくなっていた。しかし、どの書類にも共通していたのは『異能保持者(ホルダー)』という単語だった。

 異能。人工。体組織。

 それらの単語と先ほどから臭う薬品のような臭いが結びついて、生理的な不快感を催す。

 ここはいったい、何の施設なのか。


「異能……異能、って……」


 右手を軽く開き力を込めると、キィン、と甲高い音を響かせて白い光が勢いよく噴き出す。

 これが異能? そんな疑問が頭に浮かぶ。常人の域を超えた身体能力をもたらしてくれるこの光は、確かに異能と呼ぶにふさわしい。だが、これはどういう仕組みで自分に宿ったのだろうか。


「いや、そうは言ってもこれはゲームの世界なんだから……異能とかがあってもおかしくないのかな……? おかしくないよね?」


 未だにどういう世界観なのかはわからないが、設定の補強としてこういった資料が置かれていたりするのはゲームにおいてよくあることだ。プラウを倒すことだけが目的のゲームにそんなものが必要あるのか、という疑問はあったが、とりあえず置いておくことにした。

 今はそれよりも、


「そうだ、プラウを探さなきゃ」

  

 そう呟いて立ち上がった瞬間だった。


 身体が強く引っ張られるような感覚のあと、ぐるり、と視界が回転し一瞬にして意識が暗転した。

 最後の瞬間、誰かの声が聞こえたような気がして――それすらも闇に溶けた。

 

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