納骨堂
「うっ……」
あの門の向こうに引きずり込まれた後、気が付くと私たちは道路の真ん中で倒れていた。
「みんな、大丈夫?」
「だいじょーぶやでー」
「私も」
「俺も」
「こっちも大丈夫だ」
次々と返事が返ってくる。
あれ、しらすは?
周囲を見回すと、すぐに見つかった、けど……
「しらす、大丈夫?」
四つん這いになりながら、しらすは小刻みに震えていた。
「ん? 弟子ちゃんか……クスッ」
しらすはすっと立ち上がると私に返事をして、何故か笑った。
「プッ、フフッ……あははははははははははは!!!」
「ちょ、ちょっとホントに大丈夫!?」
狂ったように笑い続けるしらす。いや、もとから狂ってるね、うん。
そう考えると別に変じゃ……いや、流石にここまでおかしくはなかったような。
「弟子ちゃん、私、全部、全部思い出したよ」
「ん、そうなの? でもなんで今?」
「なんで? そんなのここに来たからに決まってるじゃん、フフッ……今までの私、ホントにバカ
だった」
うん、知ってる。
「なんでこんな事忘れてたんだろ……こんな、こんな大事で大志で……おかしいこと! あはははははは!!」
ずっと笑い続けていたしらすだったけど、急に真顔に戻ってこう言った。
「じゃあね、弟子ちゃん……はやくアイツを、......さなきゃ」
そして、ふらふらとまるで幽霊のように去っていくしらす……いや、デージーさん。
なんとなくだけど、ここで逃がしたら大変なことになる気がする……
「カゲロウさん! デージーさんを撃って!!」
「は? 急にどうし」
「速く!!! 足でいいから!」
「っ、わかった」
その言葉とほぼ同時に発射した銃弾は、しかしデージーさんに当たる直前でなにかに弾かれデージーさんの足を止めることはできなかった。
「フフッ、あはははは!! それじゃ、バイバイ」
建物を曲がり、デージーさんの姿が見えなくなる。
「っ!」
急いで後を追いかけ、曲がったところを見るが、すでにいなくなっていた。
「デージーさん、一体何をしようとしていたの……?」
……気を取り直して、まずは周囲を確認しよう。
私たちがいるのは道路の真ん中、周囲には高層ビルが建て並んでいる。
……え、高層ビル? この世界で?
いや、まぁ銃があるんだからおかしくはないんだけど、今までの町はあくまでファンタジー感の方が強い街並みだった。それが急に未来みたいになった?
それに、海底だから当然なんだろうけど自然の明かりが一切ない。
にも拘わらず町の明かりでそこそこ明るい感じ。
イメージとしてはポケ〇ンブ〇ック2のブラック〇ティ、もしくは同じくポケ〇ンのUS〇Mのウルトラメガロ〇リスみたいな感じ。
「みんな、とりあえずデージーさんを追わない?」
そう聞いてみるとウチはさんせーとかわたしもーとか、みんな賛同してくれてるみたい。
さてと、それじゃ急にいなくなった師匠を探しに行こっか。
まずはしらすが行った路地を真っすぐ進んで行こうかな。どうせ道わかんないし。
「あ、そういえば皆、ここってやっぱりルルイエだよね」
「そりゃそうやろな~、クトゥルフ倒したら出てきたし、渦ん中深海系の神話生物ぎょーさんおったもん」
「はぁ、だよねー……」
海底都市「ルルイエ」、そこはクトゥルフ神話においてクトゥルフを筆頭とするグレート・オールド・ワン達が地上に出ることを夢見ながら眠っている場所。
きっとこれから、神話生物とかいっぱい出てくるんだろうな~。
……でも、な~んか違和感あるんだよね、なにかはわかんないけど……
ルルイエをてくてく歩いていると、大きな建物の前に着いた。
なにやら教会のようなところで、扉の前に看板が立っていて、「Ossuary」と書いてある。
「……おすありぃ? こんな英単語あったかなぁ? トーカちゃんわかる?」
「いや、わかんない……てかこれ英語なの?」
あ、そういえば兄、大学でいろんな国の言葉勉強してたような……
「カゲロウさん読める?」
「これはラテン語か? ……たぶん読めるぞ」
「ホンマ!? カゲロウさんラテン語わかるん? かっこええな~」
「……納骨堂、だな」
納骨堂? なーんか聞いたことが……いやそりゃグレート・オールド・ワンの1柱なんだろうけど、だれだったっけな~……
「納骨堂……とりあえず開けるか。お前らいいか?」
いいか? と聞きつつ私たちの返事を待たず両開きの扉を開ける大三郎さん。
扉を開けるとそこでは……大量のゾンビ、いや、グールが日本語でも英語でもない謎の言語で歌を歌っていた……
「look to the sky. way up on high……」
大勢のグール達が歌う声が聞こえてくる。
「え、うま!? グール歌うま!?」
……わかる、わかるよヒバナ。
グール達の歌声は、透き通るような高音と、心臓を震わすような低音が綺麗にマッチしていて、ずっと聞いていたくなるような美しさを持っていた……死んでるくせに。
あ、グールは死んでるわけじゃないんだっけ? ゾンビと違って。
まぁいっか。
「どうする? 中見てく?」
「あー……なんかありそうだし行くか」
大三郎さんなんかここ積極的だねなんか。
さっきもこっちの返事聞かず扉開けたし。
ていうか……なんかこの歌を聞いてると、不思議な気持ちになるっていうか……それに何となく続きが浮かんでくる。
「Prison walls break, Old Ones awake……」
「トーカちゃんがグールとハモッてる!? しかも上手い!」
……なんか楽しくなってきた。
グール達の前方にある教壇みたいな所に立って一礼。
あ、グール返礼してきた。意外と紳士的だね。
変換でちゃちゃっと指揮棒を創り、まずは普通に指揮をする。
おぉ、乗ってきた。それじゃちょっと転調入れてみよっか。
4拍子から8拍子、ロック調にする。
お、いいねいいね、中々サマになってる。
てかいつのまにかドラムとギター、ベースが入ってるんだけど!
いいねいいね、楽しくなってきたよ!
「ドラムソロカモーン!」
デケデケドンドンガッシャーンと軽快なビートを搔き鳴らす。
「え、トーカちゃん超いい笑顔なんだけど……すっごい楽しそう」
「てかだいぶ曲調変わったな」
「もとの讃美歌っぽい雰囲気皆無やね」
「みんな! ラストパート行くよーーー!!」
「「「「「kじゅひふぇんsdzぱおjf!!」」」」」
言葉は通じなくても、私たちは音楽を通じて心が、魂が繋がっていた。
「「「they will return!!!!」」」
……終わった……
「ありがとうございましたーー!」
「「「gfdjhskjlpこいwくぉhだ!!」」」」
「うん! 私も楽しかったよー!」
バイバーイとみんなに手を振り、仲間たちの所に戻る。
「ただいま~! いやー楽しかった!」
「あ、お帰り」
「えらい盛り上がりやったな~」
「おー、楽しかったか?」
「いい歌だった」
みんなから思い思いの感想が返ってくる。
「んー、満足!」
「ええ、なかなかのパフォーマンスでしたね、私も大満足です」
「「「「「!? 誰!?」」」」」
振り向くと、そこにはなぜかメイド服を着た女の子が立っていた……超かわいい。
「これは失礼、挨拶がまだでしたね」
そういって、彼女は自己紹介を始めた。
「私はモルディギアン、僭越ながら邪神をやらせていただいてます」
納骨堂の神である、その名を。