大渦
「なんやかんやうろいろいろとあったクトゥルフ様との戦闘を終えたトーカちゃん達の前に大きな、それはもう大きな大渦が出現したのであった……!」
「ヒバナさん、それはいったい誰に説明しているのですか?」
「ちょ、トーカちゃんそれまだ続いてたの!?」
「ふふっ、冗談だよ」
「も~」
で、この大渦、いったいなんだろね。
「しらすは何か知らない? これについて」
「う~ん……あっ! そういえば私の時代にも急に海に大穴だ空いた~みたいな事件があったようななかったような……」
結局どっちなの?
……てか、
「いつまで人の姿でいる気?」
「ん~? そりゃあもちろん飽きるまで♪ 水着もあるしね」
「あっはい」
「どう? 弟子ちゃん、似合ってる?」
しらすの水着姿は……なんていうか、その……
「ほぇ~えらいえっちいの着とるな~しらす」
「にゃっはっは、そりゃあ折角の水着だしね♪」
ねこの時のマイクロビキニをそのまんま(流石にサイズは違うよ!?)着てるから少し、いやかなりきわどい。
流石は100歳オーバー、だてに長生きしてないね。
「はぁ、取り合えず探敵しとくね」
「トーカちゃんのソレ、たしかホムンクルスだっけ? 便利でいいなぁ、私も魔導錬金術選べばよかったなー」
フクロウ型のホムンクルスを飛ばして渦の中を探っていると、ヒバナがそんなことを言った。
「錬金術に興味あるの!? だったらぜひ私の工房に……」
「ストーップ! ヒバナ、悪いことは言わない。やめときな」
「そ、そう? トーカちゃんがそういうならしないけど」
「ん、それがいいよ。言うほど楽しくもないしね」
「ちょっと弟子ちゃーん、折角の入門者を潰さないでよ~」
「ヤだ。それにしらすもう錬金術使えないじゃん」
「ふーんだ、今なら使えるもーん」
もーんって……駄々っ子じゃないんだから……てえ?
「ちょ、嘘、どういうこと?」
「ん~? どったの弟子ちゃん」
「ホムンクルスから急に情報が送られて来なくなった……?」
「へ? 弟子ちゃんなら設計ミスとかはないと思うけど……どう?」
「いや、出撃させる前に確認したし、そんなことは」
「てことは……なにかに襲われた、とか?」
データが途絶える直前までなにも変なところはなかったと思う、けど……
「クトゥルフが出てきたんだしそういうのがあってもおかしくないんだよね……まぁいいや、取り合えずヒバナ、ゴー」
「はいはいっと、底まで着いたら連絡するね」
デスペナが無いとこういうときホント便利だね、うん。
「んじゃ、いってきまーす」
そういってヒバナは渦に飛び込んで行った。
それから数分、メンバーで雑談をしていると、ヒバナからメッセが届いた。
『ごめん、死んだ! 今街にいる』
『へ? どゆこと?』
『いや~底ってか落ちてる途中にうじゃうじゃ神話生物的なのがいてさ、ちょっとバトってた』
『うへぇ』
どうやら、一筋縄ではいかないらしい。
「そういえばしらす変身時間大丈夫なの?」
「あぁ、なんかありえないんだけど11日分ぐらい変身時間がストックされててさ、なんかわかる?」
「大人の事情ってやつだよ……」
落下中に襲ってくる敵か~、どうやって攻略しよう......。
「むむむむむ......あ、そうだ! ねぇ大三郎さん」
「ん? なんだ」
「なんかあの渦をゆっくり降りれる船とかない?」
プラン1、自由落下のせいで戦いづらいなら足場作ればいいじゃん作戦。
単純だけどこれが一番有効だと思う。
「わりい、そんな船はねえんだ。ゆっくり昇るのならあるんだがな」
「そっか......ん、ありがと」
だったらどうすれば......あ待って超簡単なのあるじゃん。
「しらす、ヒバナ戻ってきたら障壁お願い」
「ん~? あぁなるほど。りょーかーい」
呪文『ナークティトの障壁』は物理ダメージも防げるから上に立てるはずだしこれなら周りからの攻撃も防げる。一石二鳥だね!
「ただまー」
あ、ヒバナが戻ってきた。
「それじゃしらす、お願い」
みんなを一ヶ所に固めて準備をする。
「いえすまーむ。それじゃ行くよ、Are you ready?」
「「「Yes!」」」
返事をするとしらすがどこかから虹色に光る鉱石を取りだし、それが次々と割れていく。
「大渦旅行、団体様ごあんなーい!」
最後の鉱石が割れると同時に私達の周りを障壁が包み、大渦の真上にワープした。
「落下の衝撃に注意してね、落ちるよ!」
「へ? ......っあぁぁああぁあぁぁ!!」
結局落ちるのかよぉぉぉぉお!!
「うわぁぁぁぁ!? キショイキショイマジキモイ!!!」
「にゃっはっは、元気だねぇ弟子ちゃん」
「むしろなんでこの状況で落ち着けるの!?」
自由落下中の障壁、やっと落ちる感覚に慣れてきたと思ったら障壁の周りに神話生物がウジャウジャと寄ってきた。
ダゴンや落とし子、深きものとかとにかくキモイ奴らが大量に障壁の外周を這い回っててホンットキモイ。
ロンちゃんはあまりのキモさにさっきから軽く発狂してる。
「お、魚はん、えらいぎょーさん友達連れてきたなぁ、ウチも話し相手が増えてうれしいわぁ、ありがとな」
......訂正、大分イッちゃってる。
最初にロンちゃんがダゴンに話しかけたときは本当にビビった。しかも自己紹介始めたんだもん、なぜか会話成立してるし。
ていうかこの渦深くない? もう3分ぐらい落ち続けてる気がするんだけど。
「ねぇしらす、まだ底に着かないの? そろそろロンちゃん見てらんないんだけど」
「ほぇー、自分ら今は苛められてるん? 大変やなぁ、ウチが相談相手なったろか?」
「ろーちゃん大分穏やかな顔してるね、あれもう戻ってこないんじゃない?」
そんなこんなで雑談をしてると、今まで落下中だったせいで天井に座ってた私達が急に本来の地面に落とされた。
それと同時に今まで感じていた浮遊感もなくなる。
「ん、着いた?」
「そーみたいだね、ろーちゃんは......」
「およ? ダーさんにふー君達はどこいったん? 急に暗くなったけど」
「治ってないね」
「ヒバナ、ゴー」
「ラジャー」
指示を出すと、ヒバナがてくてくとロンちゃんの方へ歩いていき......
「せいっ!」
「ゴフッ!?」
......うわぁお、モロ腹に入ったねあれ、ゲームじゃなかったらむしろ気を失いそう。
「ひーちゃんこわぁ、随分荒治療だね」
「流石はヒバナ、ロリっ娘相手に全力で腹パンとかまさに鬼畜」
「ちょ、トーカちゃんがやれっていったんじゃん!」
「いや、精々ビンタかなぁとか思ってたから......」
ヒバナさんマジパナイっす、そこに痺れる憧れ.....ることはないね、うん。
「ハッ!? ウチはいったい」
「ま、目が覚めたならいいや、ヒバナとロンちゃん、探敵お願い」
「ほえ? 探敵? てかここどこや? ま、まぁとりあえず行ってくるわ」
「発狂して腹パンで目覚まして休みなく探敵させるとかトーカちゃんこそきち」
「ん? なぁに? よく聞こえないな~」
「ナンデモナイデス」
うむ、わかればよろしい。