ショタ天使
さて、さっきのライブのせいで絶対デージーさんとの距離は離れただろうし、どこ行こうか?
「モルさんモルさん」
「はい、なんですか?」
「デージーさんの行き先に心当たりとかあります?」
「ふむ、そうですね……アトラックさんかオムモグさんの所あたりでしょうかね」
アトラックとオムグム……誰だっけ……思い出せない。
「その人? たちってどんな人やの?」
「会えばわかります」
「なんや、教えてくれへんの?」
「邪神ですから」
「ぶー」
「まぁ正直いえば一番可能性が高いのはヤツの所なんですが……」
ですが?
「ヤツがどこにいるかは私にもわかりませんので行くなら先ほどの2択でしょうかね」
ヤツの正体が私の予想道理ならそりゃあ居場所なんて特定できないよね、外なる神だし。
「では、どちらにします? アトラックさんかオムグムさんか」
う~ん、正直どっちに行っても嫌な予感しかしない……
「皆はどっちがいい?」
「私はオムグムさんって人で! なんか響きカッコいいし!」
「ウチはアトラックさんやな~」
「……俺もアトラックで」
「俺はオムグムの方だな」
う~ん同数。
「ちなみになぜ?」
「「「「なんとなく!」」」」
ですよねー……
「じゃあ私も何となくで……アトラックさんにしよう」
「決まったようですね。それでは皆さん、準備はいいですか?」
皆で顔を見合わせうなずきあう。準備完了!
「では、3、2、1……行きます」
その声と同時にモルさんが指をパチンと鳴らし、一瞬視界が白く飛んだと思うと目の前の景色は一変していた。
「『門の創造』、ホント便利ですよねこの呪文」
わかる。あれ覚えるとまじ便利。まぁ人間の探索者じゃそんなポンポン使えないんだけどね。
「アトラックさーん、いますかー?」
モルさんのその声に改めて周囲を見渡すと、どうやらここは洞窟のようだった。しかも大分深い。
遠くを見ても上へと続いてる道は見当たらず、大分深いところな気がする。
所々にある人工(神工?)の明かりがないと真っ暗になりそう。
そんなことを思っていると、右側の穴から人影が出てきた。
「なにさ……オレ糸紡ぐので忙しいんだけど」
そう言って出てきたのは……めんどくさいオーラを全身に纏った金髪碧眼のショタだった。
「うひゃー! 何この子!? かわいー!」
ヒバナがショタに飛び込み、頬ずりをする。うわぁ……
「ちょっとモル、なにこれ、鬱陶しい……殺すね?」
「ふぇっ!」
悲鳴を上げてヒバナが一瞬でここまで戻ってきて、先ほどまでヒバナがいた場所の地面が消滅していた。
うわぁ……
「まぁ待ってくださいアトラックさん、この人は彼女のご友人らしいですよ?」
「は? 彼女って誰だよ」
この様子だとここは外れっぽい?
「おや、覚えていないんですか?」
「ん、いや、待て……まさかデージーか?」
「えぇ、そのまさかです」
「マジ!? 帰ってきてんの!? どこ!?」
やっぱここにはいないみたい。
てかデージーさんどんだけ有名人なのさ……
「落ち着いてください、今それを探しているのです」
「はぁ、なんだよ、わかんねえのかよ」
「あ、あの」
「ん? なんだ、人間」
気になってたことをいくつか聞いてみよう。
……殺されないといいなぁ。超機嫌悪そうだし。
「1つ目、あなたは何者ですか?」
「オレか? オレはアトラック=ナチャ。ひたすら糸を紡いでる陰気ヤローだよ」
思い出した! そううだよクモの人だよクモの人。
「てことは関係は……」
「あぁ、オレがアイツに糸を提供して、その代わりそれで作ったものをもらってたんだ」
邪神と契約してたとか……恐ろしい娘!
「それでいつからかしょっちゅう話しかけられるようになってな、仕方なくオレが話し相手になってやってたんだ」
はーん、ふーん、ほーん。
「ホントに仕方なく?」
「は? あ、当たり前だろ! 邪神であるオレが人間なんかと話したいわけないじゃねえか!」
「ふーん、そーなんだー、へー」
「な、なんだよ」
いやー、かわいいなーこの邪神様。
絶対これツンで始まってデレで終わるアレじゃん。
想像してみてほしい。金髪碧眼の超絶美少年がそっぽ向きながらツンデレ(あ、言っちゃった)をしているのを……これが萌えか……。
「わかりますよトーカ、彼とてもかわいいですよね」
「ね~」
私とモルさんできゃっきゃうふふと女子トークをしていると、当然のようにアトラック君が反論してきた。
「お、オレがかわいいとはなんだ! かっこいいの間違いだろ」
「はいはい、かっこいいねアトラック君?」
「な!? このオレを君づけだと!? 貴様、人間のくせに調子に乗るなよ!!」
口は強い口調だけど、頬を薄ら赤く染めて言ってるんだよ? ……天使か。
飛び込んだヒバナの気持ちがちょっとわかった気がする。
「はぁ……かわいい」
「ーーーーーーーーっ!!(声にならない悲鳴)」
あ、声に出てた?
「で、で…………出てけーーーー!!!」
後ろに引っ張られる感覚を味わった後、気が付くと私たちはまた納骨堂に戻ってきていた。
「……かわいかったね」
「「「「「わかる」」」」」
今回の感想、かわいかった。
ん? デージーさん? ……あっ、完全に忘れてた。




