第4話 出合い
新キャラ大量投下です。
顔を照らす日差しによって現実へと引き戻された。
辺りを見回す。そこはいつもの見慣れた部屋ではなく、石造りの広い部屋だった。
そこで意識が覚醒し、昨日の出来事は夢でなかった事を思い知らされる。
「おはようございます。レイト様。」
突然呼びかけられ、驚いてしまった。
そこにはクラシックなメイド服に身を包んだ女性が部屋の掃除をしていた。
「えっ!?あっ!お、おはよう。」
女性は掃除をする手を止めた。
「はい、おはようございます。よく眠れましたか?」
「え、ええ。おかげさまで・・・」
「ふふ、ゆっくり体を休めて頂けたのなら幸いです。」
「ところで、あなたは・・・?」
「ああ!申し訳ございません!姫様よりレイト様のお世話をするよう申し付けられたフィオナと申しま す。以後お見知りおきを。」
「あ、ああ、よろしく。・・・ところで俺はこれからどうすれば?」
フィオナはクローゼットの中から服を持ってきた。
「レイト様が目を醒まされたらこちらのお召し物に着替えた後、訓練所へお連れするようにと申し付けられておりました。」
そう言ってフィオナは自然な手つきで黎兎の服を脱がそうとしてきた。
「いいいい、いや!ふ、服は自分で着替えるんで大丈夫です!」
「かしこまりました。それでは部屋の外にてお待ちしますので着替え終わりましたら訓練所の方へご案内致します。」
「は、はい、ありがとうございます。」
そう言ってフィオナは部屋から出て行った。
渡された服を着る。生地は地球のものと比べたら良いとは言えないが動きやすい服だった。
着替えをしたことで身が引き締まる。
服は派手な装飾などはないがそれでもリンネから与えられたものだ、服の重さ以上の期待と願いが込められている。
それを着るのだ、より一層覚悟が高まる。
扉に手をかけ、開く。そこにはフィオナが立っていた。
「フィオナさん、着替え終わったので案内お願いできますか?」
「はい、かしこまりました。では、ご案内させていただきます。」
フィオナは一度お辞儀をし、廊下を歩き始めた。
その後を追い、迷いそうなほど広い城の中を必死に付いて行った。
そして城の外にある柵で囲まれた訓練所に到着した。
城の外は周りが堀で囲まれており、橋の向こうに街が見えた。
ここは城下町が国のすぐ近くにはないみたいだった。
辺り一面の草原や木々都会では中々見られなくなった光景に黎兎は少しの感動を覚えた。
「レイト様こちらが訓練所になります。」
「ここが・・・」
柵で囲まれた高校のグラウンドくらいの広さの訓練所が目に入る。
そこには剣の訓練に使われているのであろう藁の人形や、中央に丸が描かれた鉄板が丸太に貼り付けられていた。
「お待ちしていました!レイト様!」
訓練所の方からリンネが駆け寄ってくる。
「リンネさん!待っていてくれたんですか!?」
「はい!それとレイト様をサポートして下さる皆様を待っていたのですが・・・」
「遅いわね!一体どれだけ待たせるのかしら!」
そう怒鳴りながらやって来た気の強そうな銀髪の少女。
ファンタジーに出てきそうな魔法使いのいかにもな帽子と服のその少女。
しかし黎兎の目はそんな格好よりも揺れ動くEかFはありそうな胸に釘付けだった。
(うっ、これは健全な男子高校生な俺にはキツイ・・・)
「あんたが異界人?ホントに大丈夫かしらとても原初の大陸を抜けられそうにないんだけど?」
いきなり罵声を浴びせられる。
「だめですよ~。人を見た目だけで判断しちゃ~。どれだけ強いかわからないんですから~。」
おっとりした口調で黎兎を擁護する水色の髪をした少女。
シスター風の服を着ており。12~4才くらいの背丈に見える。
多分黎兎よりは幼いと思える。
「まぁ、そうね。取りあえず実力を見せてもらいたいわね。」
「そうだよね~」
いきなりの事で困惑する。
「えぇっと?この人たちは?」
「そのいきなりの事で申し訳ございません。異界人の方がいらっしゃったので異界人の方をサポートして頂くためにお二人をお呼びしたのですが、レイト様にお会いするのが楽しみだったそうで早く来すぎてしまいまして、このようなことに。」
銀髪の少女は顔を赤らめ否定する。
「ちょっ、ちょっと!楽しみだなんてそんなことないんだから!」
それを受け水色髪の少女が銀髪の少女をつつきながら煽る。
「うりうり~。そうやって意地張るところが可愛いんだから~」
「ちょっと、やめなさいよ!」
そう言いつつも満更でもなさそうな顔をしていた。
「お前達!レイト殿も困っているだろう、いい加減にしないか。」
そう言いつつネイリーがこちらに来た。
「おはようございます。レイト殿体は休められましたか?」
「は、はい。おかげさまで」
「それはよかった。では姫様2人についてのご説明をお願いします。」
ネイリーはリンネの方へと顔を向け話を促した。
「そうですね。では、レイト様。このお二方について紹介させてもらってもよろしいでしょうか?」
「ええ。お願いします」
「まず、こちらの銀色の髪をした方が我が国で1、2を争うほどの国家認定魔導研究者のレレイアさんです。」
そう言うやいなやレレイアが近づいて来た。
「そう!アタシがこの国1番の魔導研究者のレレイア・イフリーレストよ!
このアタシがアンタのサポートをしてあげるんだから大船に乗ったつもりでいなさい!」
「この通り、とても自信家さんなんです。」
「は、はぁ・・・」
「しかし、この自信は確かな実力あってこそなのです。
魔導研究者は膨大な魔力と鍛錬された魔法の実力がなければ認定されません。
その数は我が国では40にも満たない程です。その中で1、2を争うのですから実力は十分です。」
「それは・・・すごいな。」
「でっしょ!アタシはすごいのよ!」
「最初はちょっと大丈夫かなって疑った。ごめん」
レレイアに向かって頭を下げる。
「いいのよ!大事なのは自分の過ちを素直に認めて次に活かすことなんだから!」
「ありがとう。じゃあこれからよろしくレレイア!」
そう言って、黎兎はレレイアに手を差し出した。
意図を察したのかレレイアも黎兎に手を差し出した。
「ええ、よろしくレイト!」
二人は握手を交わした。
「二人の世界に入るのもいいけど~。紹介してください~」
そう言ってもう一人の少女が割り込んできた。
「わわ、もう何すんのよ!」
「レレイアだけずっと握手しててずるいです~」
「うふふふ、お待たせしてしまったようですね。では、こちらの水色の髪をした方が我が国の癒術師のセレルさんです」
「はい~。セレル・ドラグニアです~。よろしく~レイトさん~」
そう言ってセレルは手を掴んできた。
「はい~。握手です~」
「あ、ああ、よろしくセレル。」
「はい~。よろしくです~。」
「セレルさんはこの大陸の人ではなく龍の大陸の龍巫女さんなんですよ。」
黎兎はセレルから手を離した。
「へぇ、そうなんですか。龍の大陸の人って結構交流が盛んなんですか?」
「いえ、龍の国はあまり他国と交流しないのですが・・・」
セレルが話しに割り込んでくる。
「私は逃げてきたんですよ~」
「えぇ!?それって亡命ってこと!?」
「うん~・・・。まぁそうですね~」
「何でそんなことを・・・?」
「龍巫女って息苦しいんですよね~。やれ人前で顔晒したらいけないとか~。龍社から出ちゃいけないとか~。決められた食べ物を食べちゃいけないとか~。そうやって色々束縛してくるから~、嫌になってたま~にしか出ない船に密航して逃げて来たんだよね~。」
「そんなキツイのか・・・」
「はい、龍巫女というのは龍の声を聞き、その神託を伝える神聖な人ですね。大きな魔力を持ちこの世界に広がってると言われる龍の魔力の波長と合う者のみが龍巫女になれるのです。龍を信奉する龍の大陸にとって1番大事な人間になりますね。その代わりに自身の行動に大きく制限が付けられるのですが。」
「なるほど。その龍の声ってやつはホントに聞こえるのか・・・?」
「聞こえるよ~。何言ってるのかさっぱりわからないけど~」
「えぇ・・・それじゃダメなんじゃ・・・」
「まぁ~セレルは修行の身だったから~、修行すればもしかしたら聞こえるのかも~?
でも多分~、偉い人が適当な神託をでっちあげてるのかもしれないけど~」
「う~ん、龍の大陸の闇は深いな。」
「では、レイト様。こちらがエルヘンヒンデ王家親衛隊隊長ネイリーです。ちゃんとしたご紹介はしていませんでしたね。」
「改めて、よろしくだ。レイト殿」
「ああ!よろしく!ネイリー」
手を取り握手をする。ネイリーの手は他の2人と違ってしっかり鍛えられていた。
数秒後手を離し、ネイリーはこう告げる。
「さて、挨拶も済んだことだし、今からレイト殿には魔法の使い方を教えましょう」
(・・・遂にこの時が来た。これから先は後戻りの出来ない道だと思う。だけど引き返すつもりはない。俺はリンネの願いを叶えるその為にも進まなくちゃいけない、この先へ。)
ここが、黎兎の異世界での戦いの幕開けだった・・・。
次回からはやっと魔法が登場するよ!
クッソ遅い気がする・・・。
でもまぁ気にしないでいこう!