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 勇者が寝込み始めて十日がたった。

 勇者の命はそう長くない、王女はそう感じつつもそれを受け入れきれずにいた。


 ☆☆☆☆☆☆


「姫様、わかりました」

 ある日、勇者がベッドで寝込みながら声を出した。


「勇者様、無理をしないでください。お体に障りますよ」

 王女は勇者と少しでも一緒の時間を過ごすために、ここ数日付きっ切りで勇者の看病をしていた。


「わかったんです。あの町で広がっている、そして僕をむしばんでいる病気の原因に」

「もうそんなのどうでもいいです! 勇者様が、勇者様が死んでしまっては意味がないじゃないですか……」

「姫様、そんなこと言っちゃダメですよ、姫様はこの国を守らないといけないんですから。話させてください、そしてこの国の未来のために役立ててください」

 王女は勇者の容態を考えるあまり、王女としての責務を考えられなくなっている。勇者は自分が死ぬことより、その事が心配だった。


「勇者様……、ごめんなさい、そうですね、私がしっかりしないと……」

「はい、僕の事を考えてくれるのはすごくうれしいです。けど聞いてください、この病の原因、それは……蚊です」

「え?」

 蚊、聞きなれた言葉ではあるが、今この場で出てきたことにより、王女の耳には全く別の言葉のように聞こえた。


「蚊なんですよ。僕と姫様はずっと一緒に居ましたよね? でも僕だけが病気になった。食べたものも同じで常に一緒にいた。じゃあ何が違うかって考えたら、蚊に刺された事が思い浮かんだんです」

「でも、蚊に刺されただけですよね? 蚊に刺されただけでこんな事になるなんて……」

「僕のいた世界だと、毎年何万っていう人が蚊による感染症で苦しんでいるらしいんです。僕も詳しくは知らないんですけど、一番人を殺しているのは蚊らしいです」

「そんな……」

 蚊、それは人類が常に戦い続けている最弱にして最強の敵。

 やつらは世界中にはびこり、常に人類の敵として君臨する。

 その小さき悪魔は、年間で70万人以上もの人を殺しているとされている。


「すみません、一緒に魔王を倒すって約束していたのに……自分の体だからよくわかります、僕はもう長くない」

「そんなの……、私のほうこそごめんなさい。あの時ちゃんと止めていれば……」


 アカゲ町へ向かわなければこんな事にはならなかった。完全に慢心していた。

 勇者や王女であればどんな相手が来ても対処できる、そう思っていた。

 実際に、認識できる相手や、ただの病であればこの二人がやられる事はない。

 だけどもう後の祭り、勇者の病が治ることはない。


「この世界に来てからずっと姫様と一緒にいましたよね。実を言うと、元の世界記憶が曖昧だったんです。だから、姫様と過ごしたこの2年間は僕にとって大切な思い出です。不謹慎かもしれないですけど、あの旅も旅行みたいで楽しかったです」

「私だって、勇者様と過ごした時間は一生の思い出です、忘れることなんてできないです」

「はは、僕のことは忘れて幸せになってくださいって言いたいですけど、忘れてほしくないな……、ごめんなさい、こんなかっこ悪い勇者で」

「忘れて、なんて言ったら怒りますからね」


「ありがとうございます、僕のこと絶対に忘れないでください」

「はい、絶対忘れません」

 そう言って王女は勇者に口づけをする。

 二人で行う最初で最後の口づけ。二人はお互いの愛を確かめ合うように舌を絡めた。

「姫様……」


「勇者様、大好きです。愛してます」

 王女は勇者を見つめながらそう言い、ナイフを取り出した。

「さようなら、また会いましょう」

 そして、ナイフを突き刺した。

「え……?」


「私、勇者様が他の誰かに殺されるなんて許せないんです。はぁ、勇者様が病にかかるという事は、その蚊が魔王なんでしょうね。許せない、よくも勇者様を……蚊如きが……!」

 王女にナイフで刺された勇者は、何が起きたかわからないままあっさりと息を引き取った。


「爺や」

 王女がそう言うと、何処からともなく一人の男が現れた。

「ここに」

 王女に爺やと呼ばれて現れたこの男は、古くから王女に仕えている側近だ。

 見た目は腰の曲がったお年寄りだが、その実力は王女に次ぐ。


「勇者様が亡くなってしまいました」

「うっうっ、おいたわしや」

 王女の表情は悲しみで満ちていた。呼ばれる前の様子はわからないが、長年使えている爺やにはその悲しみがよくわかるのだろう。


「ですが、勇者様は私達のために今代の魔王の正体を教えてくれました。勇者様が居なければわからなかったでしょう」

「おお! 流石は勇者様でございます」

「今代の魔王の正体は、蚊です」

 蚊と伝えられた爺やは、一瞬驚いたような表情をするもすぐにそれを受け入れた。

「それは、なんとも信じがたいですが、勇者様がそう言うのでしたら間違いないのでしょう」

 王女に仕えている者で勇者を信じない者はいない。


「正面から戦える相手ならば簡単ですが、蚊が相手ではそれも難しいでしょう。こんなことは初めてです。至急虫マニア協会を呼びなさい、対策を練ります」



 王女に指示を受けた爺やは、すぐに頭下げて答える。

「承知致しました、魔王様」

次回から新章です。そして最終章になります。


以前からお伝えしていた通り、9/30は更新お休みです。次回更新は10/7予定になります。

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