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side勇者:人間の敵

遅くなって申し訳ありません><


 アカゲ町に訪れた勇者一行は、現地の冒険者のキュリーを訪ねた。

 町は勇者達の予想を上回る惨状だった。


 ☆☆☆☆☆☆


 勇者が泊った部屋は小さめの6畳程の部屋で、ベッドとタンスが置いてあるだけの質素な部屋だ。

 一応来客用の部屋として用意されているが、使ったのは勇者が初めてだ。


 勇者が目を覚ますと視線を感じた。

「勇者様、おはようございます」

 声のほうに目を向けると、王女が楽しそうに勇者を眺めていた。


「おはようございます。姫様はいつからそこに?」

「キュリーがなかなか起きなくて暇だったんです。でも、勇者様を起こすわけにもいかなかったし、寝顔が可愛かったのでつい見入ってしまいました」

 王女はいたずらが成功をした子供のように笑顔を見せる。


「うう、少し恥ずかしいですね……。キュリーさんはまだ起きてこないんですか?」

「あの子は昔からお寝坊さんなんです」

「そうなんですか、意外ですね」

 昨日のキュリーのしっかりした姿からは想像できなかったが、長い付き合いの王女からすればキュリーのそういった面はかわいらしい短所だと思っている。

「私としては前と変わってなくてちょっと嬉しいんですけどね。でも、そろそろ起きてくると思いますよ?」

 そう言って王女が外を見る。

 つられて勇者も外を見ると、日も大分高くなっていた。そろそろお昼頃だろうか。


「あれ、もしかして僕も結構寝ちゃってました?」

「そうですね、ぐっすりと眠ってましたよ。きっと慣れない馬車の旅で疲れてしまったんですよ。お腹は減ってますか?キュリーが昨日のうちに用意してくれているので、すぐに食べられますよ」

「もう昼食ですかね、姫様はもう食べたんですか?」

「実は私もまだなんです、勇者様を眺めてたら時間を忘れてしまって」

「じゃあ早く食べましょうか、すぐに着替えるので待っててください」

 王女は先に食卓へ向かい、勇者は寝間着から着替えてから向かう。


「お待たせしました、すみません準備までさせちゃって」

 すぐに着替えを済ませた勇者は食卓で待っている王女に声をかける。既に食事が並べられていた。

「私がこんなことをするのは勇者様だけですからね?」

 王女は楽しそうにそう答えた。

「ありがとうございます、嬉しいです」


 二人で食事を取り、しばらく話していると、キュリーが起きてきた。

「すまないねぇ、待たせたかい?」

「大丈夫、勇者様と一緒だったから楽しかったです」

「そう言ってもらえると助かるよ。本当は一緒に食事でもと思ってたんだが、すぐに発つのかい?」

「そうですね。本当は少し観光もしたいんですけど、そんな状況でもないですからね」

「そうかい、久しぶりに会えてうれしかったんだけど、引き留めるわけにもいかないね」

「私もうれしかったです。また必ず来ます」

 この町にまた必ず来る、王女と勇者は決意を固める。

「ああ、待ってるよ」  



「ではそろそろお暇しますね。食事の前に馬車の準備はさせているので、そろそろ終わっているかと」

 御者には魔法で連絡をしている。些細な魔法であるが、魔法が使えない勇者にとっては羨ましく思える。

「馬車のところまで見送らせてくれ」

 三人はキュリーの家を発ち馬車の元へ向かった。


 来た時に馬車を降りた場所に着くと、既に用意はできているようだった。

「キュリー、ありがとうございました。何度も言いますけど無理だけはしないでください」

「ありがとうございます。勇者、姫を頼む」

「もちろんです」


 二人は馬車に乗り込む。

「キュリーさん、いい人ですね。この町に残して帰るのは少し不安ですが、きっと大丈夫ですよね」

「大丈夫です、あの子は強いですから」

 そう話していると、勇者は首筋にかゆみを覚え、ポリポリと掻きだした。


「あら、勇者様どうなさったんですか?」

「ちょっと蚊に刺されたみたいで」

「あら、蚊ですか……人間の敵ですね」

「はは、人間の敵ですか、たしかにそうですね。百害あって一利なしです」

 蚊は人の血を吸う。そしてその行為は人間にとって何ら利益にならない。害でしかない。

 しかし生態系全体を考えると重要であるが、そんなことを考える人間は稀である。

「あまり掻くとあとが残っちゃいますよ?」

「わかってはいるんですけどね、ついつい掻いちゃうんですよ」

「ふふ、私もです。わかってはいるんですけどね……」


******

  

 途中いくつかの町を経由し、城に帰ってきた。


「お疲れ様です。勇者様、いかがなさいました? 顔色が優れないですけど」

 普段一緒にいる王女でなければ気が付かない程度ではあるが、たしかに勇者の顔色は悪かった。

「そうですか? 自分では気が付かないんですけど、馬車で疲れちゃったのかな。すみません、今日はすぐに休みます」

「そうですね、それが良いです。軽い食事を用意させるので、部屋で食べてからお休みになってください」

「ありがとうございます。休めばすぐに回復すると思います」

「お大事になさってください。回復したらすぐに調査を始めましょう」


 しかし、勇者が回復することが無く、容態はどんどん悪くなっていった。

次回でこの章は終わりです。

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