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side勇者:姫と魔王と勇者

 キンチヨ城、勇者の部屋

 召喚された勇者は、代々この部屋で生活をしている。

 勇者と話しをするため、王女はそこに訪れていた。


 ☆☆☆☆☆☆


 コンコン


 勇者がちょうど起きた頃、扉をノックする音が聞こえた。

「おはようございます、勇者様。少々お話したいことがあるのですが、よろしいですか?」

 突然の王女の来訪に少々驚き、寝ぼけていた頭がぱっとさえる勇者。


「もちろんです、どうぞ中へ」

 慌てて扉を開いた勇者は、何時になく真剣な面持ちの王女に不穏な気配を感じる。

 普段の王女は常に笑顔だ。

 特に、勇者と話しているときの笑顔は見るものを魅了するほどである。


 向かい合って座り、王女と一緒に来たメイドが用意したお茶を飲んで一息つく。

 勇者が落ち着いたのを見て王女は話し始めた。

「以前お話ししたゴブリンを討伐した後に亡くなった冒険者のお話なのですが……」

「どうかしたのですか?」

「その方が滞在していた町全体が大変なことになってるみたいです」

「どういうことでしょうか」

「アカゲ町という田舎町なのですが、住民の大半が病に伏せっているようです」

「なっ!」

 突然の事態に戸惑う勇者。

「残念なことに、既に亡くなっている方もいるそうです」


「それは……、この前聞いた時は冒険者が死んだという話では?」

「はい、その冒険者の死を皮切りに倒れる方が増えたそうです。ついに魔王が現れるのかもしれません」

 魔王はいきなり現れる場合もあるが、何かしらの予兆がある事が多い。

 この時期に何か起きた場合は魔王の予兆である可能性が高い。

 それは魔王の配下によるものか、将又偶然か、何かしら異常な事態が起きるのである。


「ただの流行り病ではないのですか?」

 勇者としては、魔王と病に関連性がないように感じられた。それは、最近この世界に訪れた者と、この世界の住人との考え方の違いである。


「わかりません。信用のおけるものからの情報ですと、空気感染等ではないようです。ただ、人によって症状も違い、同じ病気ではないようなんです。でも、その者の見立てでは原因は同じところにあると」

「原因がわかっているのですか?」

「いえ、あくまでも感によるものと言っていたので、でも彼女の感はよく当たるんです」

 原因はまったく分かっておらず、推測の域にすら達していない。


「感ですか……、一度町を直接見てみたいですね。町に行ってみたいのですが良いですか?」

「まだ原因は何もわかってないので、かなり危険ですよ?」

 原因不明の病、空気感染はしないと言われているが、所詮は感でしかない。何が起こるかなんてわからない。

「それでも僕は勇者です。困っている人がいるなら見過ごせません」


 勇者の真剣な表情をみて、王女は頬を緩める。

「そうですね……、勇者様が勇者様である限り、病気で死ぬことはないですから大丈夫でしょう」

「?」

「わかりました。町に向かいましょう」

 勇者は魔王と戦うためにこの世界にいる。ただの病気で死ぬことはない。


「ありがとうございます!」

「もちろん私も向かいますけどね」

「な!危険ですよ!!」

 まさか一国の姫がそのような場所に行くとは考えていなかった。

「それを勇者様がおっしゃいますか? 言いましたよね、私は常に勇者様と一緒にあると」

 それは以前に言っていた。王女と勇者は供に歩むもの、調査に向かうなら王女も一緒となる。

 それを思い出したのか、勇者も王女が発言を変えないことを悟る。


「わかりました。でも気を付けてくださいよ?」

「ふふふ、大丈夫ですよ。それに、まだ私のほうが勇者様より強いですから。勇者様こそお気を付けくださいね」

 勇者は強くなったが、未だに王女に勝てずにいた。当然その差は縮んでいるが……。

「わかりましたよ。はあ、魔法さえなければな……」

 勇者はこの世界で唯一魔法が使えない人間とされている。

 王女との手合わせの際には魔法に苦戦させられていた。

 しかし、既に王女以外の魔法であれば対処は可能になっている。


「ふふ、勇者様も大分強くなりましたからね。もう目隠ししては勝てないです」

「流石にもう目隠し状態で負けたりなんてしないですよ……」


「馬車の用意などもあるので、町へは明日向かいましょう。すぐに準備させますね、私のほうも準備があるので、今日はこれでお暇しますね」

 こんな状況だが、王女は少し楽しそうにしていた。勇者との旅が楽しいからだ。


 ******


 翌日、馬車には御者を除けば勇者と姫の二人だけであった。

「以前もそうでしたけど、よくお姫様一人で外に出て大丈夫なんですか?」

「あら、勇者様も一緒じゃないですか」

「確かに僕もいますけど、普通護衛とかいませんか?」

「仕方ないんですよ。以前も話した通り、お城で一番強いのは私なんです。私と肩を並べられるのは勇者様だけなんですからね」

「僕もまだ勝てないですけどね。はあ、こんな僕で魔王に勝てるんですかね?」

 勇者は未だに姫に勝てないことで、今一自信を持てないでいる。


「勇者様はこれからもっともっと強くなりますから、自信を持ってください。私だってもう勇者様の相手をするのは大変なんですよ?」

 王女はそう言って勇者を元気づける。

「ありがとうございます。そうですね、最初はもっと弱かった。それに、まだまだ強く慣れる気がします」

 実際に勇者の成長速度は異常だ。そもそもこの世界でオーガに単独で勝てる人間などほとんどいない。

 普段手合わせしている相手が強すぎるだけであったが、この世界の強さの基準を知らない勇者にはわからないことである。


「その意気です。それに、魔王と戦うときは私も一緒ですから」

 王女はそう笑顔で答える。


次回もside勇者です。


前回のあとがきでも書きましたが、30日は更新お休みします。

一応23日にこの章が終わる予定なので、切もいいはず……


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