side魔女:出会い
今回は冒険者一行のもう一人のメンバーになります。
ザボン一行がジカの森へ出かけている間
一人の魔女が留守番をしていた。
☆☆☆☆☆☆
私はキュリー、町の連中には魔女なんて呼ばれている。
自分で言うのもなんだが一流の魔法使いだ。私以上の魔法使いなど早々いない。
かつては別の仲間たちと旅をしていたこともあるが、色々あって今はザボン達のパーティに厄介になっている。
元々は都心に住んでいたが、存外にこの田舎町の事は気に入っている。
ザボン達がジカの森へ出かけて何日たったことだろうか。
ジカの森は初心者用の森だ。本来私たちが行くような場所ではないが、ザボンの弟が行方不明になっている。
私も面識があるやつらだ。だが、10日以上行方不明になった者が生存した話などほとんど聞かない。
初心者用の森とはいえ、仲間が出かけているとなると心配になる。
今回は探索任務だから私は出てないが、単純な戦闘力で言えば彼らは私よりも弱い。
何故か嫌な予感がする。あんな森であいつらがどうにかなるとは思えんが……。
コンコン
扉をノックする音、この家を訪ねてくる人間は少ない。
あいつらが帰ってきたのだろうか。
私は期待しつつも扉を開けると、そこに何かを抱えているアップルがいた。
そう、アップルだけだった。
「あんただけかい?」
別にアップルだけだったことが不満なのではない。
仕事終わりに尋ねてくるなら、他の3人もいるのが自然だ。
3人に何かあったのだろうか?
「はい、ドドリさんとギニュさんはギルドに行ってます。ホブゴブリンを討伐したので、その報告です。ザボンさんは体調が優れないとの事なので、先に帰宅しました」
アップルの話にはザボンの弟達について一切触れていない。そこについては予想はしていた。
ショックではあるが、覚悟はしていた。
とりあえず全員帰ってきている事にホッとするが、ザボンの体調が優れないだと?
「大丈夫なのかい?」
ザボンの体調不良は出会ってから初めてだ。普段体調を崩さないやつの体調不良、それも冒険の帰りに、だ。
精神面から体調を崩した可能性もあるが、何かあるかもしれない。
「本人は大丈夫だと言ってましたが、後で家に訪ねてみようかと思ってます」
「ホブゴブリンに何か毒を盛られたとかないかい? ちょっとした怪我でも毒が塗られてポックリ何て事もあるよ?」
「切り傷一つ負ってないので毒ではないと思います。空気感染なら私たちにも影響があるはずなので、空気感染もないと思います」
「そうかい、ならいいが……」
「それよりも、帰る時にゴブリンを狩りすぎてしまったので、ギルドからのお叱りのほうが心配です」
アップルはそう言って苦笑いする。
ザボンの体調が優れないから真っすぐ森を突っ切ったそうだ。
ゴブリンは魔物だが、ジカの森の生態系において頂点に立っている。その頂点を絶滅させた場合、何が起きるかわからない。あまり狩り過ぎるのも良くないのである。
とりあえず無事だったならそれでいい、それよりもずっと気になってたことがある。
視線をアップルの手元に向ける。
「ところで、さっきから気になっていたんだが……、その猫はなんだい?」
「そうでした、この子の事で話があったんです」
アップルはジカの森で起こった出来事、ホブゴブリンの討伐について話してくれた。
「それでホブゴブリンを狩った後、洞窟の出口にこの子がいたんです。ホブゴブリンがペットとして飼っていたみたいで……、このままだと死んでしまうと思って保護したんですけど、私達には懐いてくれそうになくって……」
「それで私のところに来たってわけかい」
飼い主を殺されたんだ。殺した相手に懐くわけがない。
「はい……、猫はお嫌いですか?」
「そんな人間いるわけないだろう。私も猫は大好きだ」
猫は可愛くて人懐っこいため人気が高い。私も当然猫が好きだ。
だが希少なため、見かける事も少ない。ましてやペットとして飼うなんて貴族くらいのものだ。
「突然で申し訳ありません。本来ならこの子の主を殺した私たちが責任を取るべきですが、この子の事をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、お前たちの頼みだ。それに、私もお前たちと同じパーティじゃないか。お前たちの責任は私の責任でもある。引き受けよう」
頼まれなくても大歓迎だが、アップルの手前少し感情を抑える。
私はパーティでご意見番のような立ち位置だ。あまりかっこ悪いところは見せられない。
大丈夫だろうか? 表情に出てないだろうか?
「私といるとこの子も落ち着かないでしょうから、私はザボンさんのお見舞いに行ってきます。ではこの子の事、よろしくお願いします」
心配ないと言っていたが、やはりザボンの事を心配しているようだ。アップルは急いでザボンの元へ向かった。
アップルが帰った後、猫を見つめる。
先ほどアップルがいた時と違って怒っている様子はない。ただ単に落ち着かない様子だ。
「ふむ、まだ警戒しているようだが、アップルのように嫌われてはいないみたいだな」
やはり猫は可愛い。猫を飼うと独身が長くなると言われているが、それも致しかたない。
これから一緒に暮らすんだ。さて、なんと呼ぼうかね。
もしかしたら既に名前があるかもしれない。
適当に呼んでみるか。
「シロ」
色が白いから安直に白と呼んでみる。どうもしっくり来てない様子。
「チビ、もだめか。じゃあ、ポチ、もダメだな。」
いくつかそれっぽいものを呼んでみるもダメだ。やはりホブゴブリンと人間では感性が違うのかも知れない。そう思っていると――
「タマ」
――と呼んだ瞬間、耳がピクリとする。
「タマ」
もう一度呼ぶとこっちを見た。
やはり名前はタマのようだ。
ホブゴブリンは、意外と人間と感性が近いのかもしれないな。
「そうか、お前はタマっていうのか。」
「ニャ―」
名前を呼んだおかげか、警戒心が薄れたように思う。
かわいい。戸惑いつつも私にうるんだ瞳を見せてくれる。かわいい。すごくかわいい。
「タマ、これからは私がお前の飼い主だ。よろしくな」
こうして私とタマは運命の出会いを果たした。
特にどこにも書いてないですけど、毎週日曜日更新のつもりです。
余力があったら+αで別の日にも投稿したいです。




