修行
今回も残酷な描写が入ります。
進化した次の日、私は違和感を感じた。
城内で血の匂いが漂っていることに気が付いた私は、急いで匂いの元へ行く。
そして匂いの元に辿りつくと、そこには血まみれのゴブ太郎達がいた。
☆☆☆☆☆☆
血まみれのゴブ太郎……。
血まみれのゴブ太郎が……、満面の笑顔だった。
返り血を浴びているだけの様だ。
無事だった……。べ、別に心配なんてしてないんだからね!
わかってたから! 森の帝王は無敵だってわかってたから!!
負けるわけないからね! むしろ敵に同情しちゃうよ!
地面に落ちてる丸い物を見ると、どうも昼間に見かけた冒険者達が夜襲を仕掛けてきたみたいだ。
3人分の頭がある。
さすがはゴブ太郎達だ。正面から戦い、返り討ちにしたのだろう。
よく見るとゴブ太郎達は傷一つ負っていない。
圧倒的な戦いだったことが想像できる。
同じ最強の道を歩むものとして、その戦いを見てみたかった気もする。
今は人間を解体してるみたいだね。
朝食用、夕食用と分けて、残りは燻製にするのだろう。
私は血が凝固する前におすそ分けをいただくことにする。
血が凝固してしまうと血を啜れなくなってしまう。
経験値も惜しいからね。
私は急いで血を啜る。
この人間達の血はかなりうまい上に経験値も多い。
なるべく多く摂取せねば!
私は血を啜りながら、今後の事について考えていた。
実は、進化した後にタマちゃんの血を啜ったときにわかったのだけど、もうタマちゃんからは経験値を得られそうにないのだ。
ゴブ太郎達ですら微々たるものである。
ゴブ太郎達の強さが足りないとかではなく、同じ相手から1ヵ月以上も血を啜り続けけたからだと思う。
私のここでの成長は、ほとんど限界に達している
私はそろそろ外に出るべきなのだろう。
とはいえ、今の自分では空の王者にやられてしまうと思う。これは客観的に自分を見た事実だ。受け入れるしかない。
何せ進化をしたせいで敏捷が下がっている。逃げるにしても難しい。
このままだと恰好の的だ。しかし、レベルを上げようにもここでは限界。八方ふさがりだ。
ということで、私はしばらくトレーニングに明け暮れる事にする。
下がってしまった敏捷をプレイヤースキルで乗り切るのだ。
この先生き残るには技術を身に着けないといけない!
さて、トレーニングに向かおうかな。
まずは進化して変わってしまった自分の体を確かめないといけない。
特に敏捷! 下がってしまった敏捷については念入りに確認しないといけない。
っとその前に、タマちゃんにおはようのキスをしてこないとね。
一旦自分の寝室に戻ってからタマちゃんを探すことにする。
タマちゃんはすぐに見つけることができた。ゴブ太郎と一緒だ。
一方的な戦いだったとはいえ、ゴブ太郎も戦った後はタマちゃんに甘えたくなるのだろう。
いつにもましてタマちゃんとLOVELOVE空間を作っているように見える。
しばらく抱き合っていたタマちゃんとゴブ太郎だが、一旦ゴブ太郎が朝食の準備のために離れた様だ。
心なしかタマちゃんもいつもより寂しそうだ。
さて私のほうもタマちゃんにキスをしてこよう。
しばらくトレーニングに明け暮れるため、タマちゃんとお散歩にでかけられない。
ごめんねタマちゃん。チュッ
タマちゃんと愛を確かめ合った私は、トレーニングを開始する。
まずは飛行テストだ。下がってしまった敏捷の影響を確かめないとね。
もちろん昨日から何度も飛翔している。
だが、いつもと同じ空間で同じように飛ぶことで自分の体の変異をしっかりと確認しないといけない。
そのための飛行テストだ。
そうして色々な飛翔方法を試していると、今回の進化の性質に気が付いた。
敏捷は下がったけど、単純に飛翔能力が下がったわけではない、ということだ。
もちろん単純な移動速度は下がっている。
しかし、旋回性能は段違いに上がっていた。もちろんそれだけではない。
滑空したり、急降下する分には、むしろ速度が上がっている。
そして何よりうれしいのは風に対する耐性が上がったことだ。
当然強い風が吹けば吹き飛ばされる。でも、以前ほどじゃない。今なら多少の風ならそのまま飛べそうだ。
今の私ならトレーニング次第でかなりの技術力が身に付きそうだ。以前と比べて自分のイメージにはっきりと体が付いてきてくれている。
やはり今後はトレーニングが重要になりそうだ。
今まではトレーニングと言ってもただ漠然と飛んでいただけだったけど、これからは目標を据えたトレーニングにしていこう。
こうして私は一日中トレーニングに明け暮れた。
やっぱり技術力は大事だ。最後に物を言うのはプレイヤースキル!
この城は安全だ。だけど、いつまでもここにいられない。
この城でトレーニングを積んで、飛翔性能に自信が付いたら出ていこうと思う。
きっと皆には止められるんだろうな……。
短いようだけど、皆とは絆を深められたと思う。ゴブ太郎とは強いシンパシーも感じている。
でも、私はここではこれ以上強くなれない。いつまでたってもゴブ太郎達と肩を並べることはできない。
いつかゴブ太郎達のように強くなったとき、ここに戻ってこようと思う。
きっとゴブ太郎達も喜んでくれるだろう……。
その後、帰ってきたタマちゃん達と一緒に夕食を食べて、私は眠りについた。
次の日も、そしてその次の日も、トレーニングをして過ごした。
そして、トレーニングを開始して10日目、私は決心する。
次回で一旦の区切りです。
その後は少し雰囲気が変わる予定です。
評価等頂けるとすごくうれしいです。