手伝いをしていたら、なぜか異世界に転移させられていた
整備された道路がなく、鹿や大鹿が通って出来た迷路の様な小道しかない鬱蒼たる森林地帯を
人影が走っていた。
その人影―――男性の服装は、この場所ではあきらかに違和感があった。
頭に麦わら帽子を被り、頸からは手拭らしき白いものを巻いていた。
また、服装も外での農作業などが出来る服装で、両手には白い軍手、農業ブーツを履いている。
男性は、片手ハンドル式刈払機を右手に持ったまま、必死の表情を浮かべていた。
また、左手には、水の入ったペットボトルを持っている。
その男性を追いかける様に、『妙な生物』が走っていた
『生物』は黒に近い緑色の肌で中肉中背に近い体系をしていた。
その口からは、何かが擦れるような不快な鳴き声を発している。
それも、一匹、二匹という数ではなく、数十匹以上の集団となって。
「・・!」
男性は一瞬だけ後ろを振り返り、悲鳴をあげそうになった。
この様な状況になったのも、少し時間を遡る。
男性は、良く手伝いとして畑の草刈りを手伝わせられる事があった。
特に暑い時期は。
男性は、いつも通り朝から父親と二人で式刈払機を使い、伸びてきた雑草を刈っていた。
気温が上がる昼までには、いつも通り終わるはずだった。
そう、『終わる』はずだった。
畑の雑草を半分ほど刈り取った所で、彼は一端式刈払機のエンジンを止め、ペットボトルの水を
飲んだ。
飲み終えて、父親の方に視線を向けようとした時、周囲の風景が変わっていた。
畑だった風景が、どいうわけか鬱蒼とたる森林へと変わっていた。
その光景を目の当たりにして、男性が最初に出した言葉が・・・。
「お父さん、そこにいてる?」
という、何とも言えない言葉だったが・・・・。
男性は、驚き戸惑いながら父親を呼んだが返事もなく、ただ、鬱蒼とした鬱蒼とたる森林が
広がっているだけだった。
「えー・・・・ナニコレ・・・」
頸からかけていた白い手拭で、汗を拭きながら男性は困惑した声を出す。
携帯を取り出そうとしても、自宅に置いてきているため何処にも連絡はできない。
「草刈りの手伝いしていただけなんだけど・・・これどういう事・・・・?」
男性は付近を見渡しながら、もう一度父親を呼んだが、返事は返ってはこなかった。
もう一度予防とした時、後ろの方から枝を踏み折る音が聞こえた。
「あ、お父さん?、呼んでいるんだから返事ぐらい・・・・」
そう言いながら振り返ると、そこには父親の姿はなかった。
代わりに見た事もない、『妙な生物』の集団が立っていた。
「・・・・・・・・・エー・・・・」
その『妙な生物』の集団を見て、男性はそう呟いた。
『妙な生物』の姿には、男性にはなんとなくわかった。
良くネット小説やライトノベル、またはテレビアニメやゲームなどでも登場する『妙な生物』だ。
特に、序盤辺りで主人公に退治されたりしている。
「あー・・・・うん、『ゴブリン』か」
男性は、その『妙な生物』を見て呟くと、ゆっくりと後ずさりしながら脱兎の如く走った。
これが、現在までの状況だ。
「無理無理無理無理!! 何が何だかわからないがもないのにあんな『生物』と戦えるかっ!?
その前にココは何処だっ―――――――――!!」
男性はそう叫ぶように呟く。
農業ブーツのため、結構走りにくいが、それでも走る。
「刈払機で何とかなるかもしれないけど、エンジンかけている間に喰われる!!」
さらに、そう叫ぶ。
男性は必死になりながら、地面をえぐる小川を飛び越え、ツタがからまる木の根を乗り超えて進んだ。
しばらく進んでいると、 焼けた鉄と生々しい血が混じった臭い、そして悲鳴と怒声が響いてきた。
「うわぁ・・・嫌な予感しかしない・・・」
男性は、滴り落ちる汗を手拭で拭きながら呻くように呟く。
しかし、今更戻ろうとしても『妙な生物』が後ろから迫っている。
「行くしかないか・・・うわぁ・・・本当に勘弁してくれぇ・・・」
男性は、そうぶつぶつ言いながら悲鳴と怒声が聞こえてくる方角へと向かう。
木々の間から抜けると、男性の目に飛び込んできた光景は、ライトノベルやアニメなとで描かれている
様な中世系の建物が建ち並んだ集落だった。
だが、その集落は無数の魔物の群れに襲われていた。
群れの数は、十倍から数百倍。
男性を追いかけていた『ゴブリン』の他に、ライトノベルやRPGゲームに登場する数多の魔物が
犇めきあっていた。
絞るような恐怖が男性をとらえた。
男性は周囲の建物に視線を向けた。
どの建物も無茶苦茶に破壊されていた。
地面には、魔物に喰い殺された村人らしき死体も転がっている。
まさしく地獄だった。
「―――――――異世界コワイ」
背筋を冷たいものが流れ落ちた。
いったいどういう状況の異世界に転移したのか、それがわからないため余計に戦慄を覚えた。
男性は後ずさりしながら後ろを振り返ると、そこには男性を追いかけていた『ゴブリン』がいた。
さらに数も増えており、『ゴブリン』の他にもライトノベルやRPGゲームに登場する数多の魔物の
姿が存在した。
「・・・・増えてる」
その光景を見て、何とも場違いな発言をした。
その魔物の群れは、にじり寄る様に近づいてくる。
「(うわ・・・なんでこんな状況なのに、昔懐かしい缶コーヒーのCMを思い出すんだ・・・俺は)」
男性はそんな事を思いながら、ペットボトルの蓋を開けて中身を飲み干す。
残り半分だったため、すぐに空になった。
男性が思い出したのは、随分昔の缶コーヒーCMだ。
今は、宇宙人が調査を行っているCMだが・・・その前のシリーズCMだ。
格闘家と対戦する事になったり、当時の米国の大統領と会談することになったり、当時の横綱と対戦、
有名バンドグループとの対話、さらに、当時の全世界と戦う事になったり・・・。
男性は半端自棄気味に、そのCMに流れていた音楽を口笛で吹きながらペットボトルを投げ捨てる。
片手ハンドル式刈払機のエンジンをかける。
「気が付いたら、病院のベットの上であることを切に願う いや、割と本当に」
そう願いながら、飛び掛かってくる魔物の群れに式刈払機を向けた。
はい、こちらも暑い中草刈りをしている時に、その暑さを忘れるために思いついた内容です。
まぁ、思いついて、書けたことはかけましたが、この先の事はさすがに無理っす・・・。
執筆して何ですが、こんな状況の異世界には行きたくないです・・・。
草刈りしていて気が付いたら異世界・・・やだなぁ・・・。
ちなみにこの缶コーヒーCMは、今ならネットでググったら見れるはずですよ(W