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魔法世界にようこそ!  作者: 冷鳥ルイ
第一章 ランカーネ襲撃編
9/22

1‐8 霧


見れば、気付かぬ内に視界が狭まっていた。

降ってわいたかのように霧が立ち込めている。

先程まで何メートル先だろうと見渡せていたのに。


「と、いうよりどうやらもう逃げ場はないみたい。」


小春は先の発言に付け足した。

彼女の状況判断はこうだ。

この霧は遠くから少しずつ近づいてきた訳ではない。

もしもそうだとすれば、もっと前から気づいている。

では、この霧はどこから発生したのか。

それは自分たちにある程度近く、さらに死角。

十中八九、周りの建物の中だろう。

つまり、この霧は自然に発生したのではなく、人為的に作られたもの。

となると…


「敵は魔獣だけではないってこと…」


霧を発生させることのできる魔獣は確認されていない。

よって、必然的に人間が関わっていることになる。

このサフィア王国に敵意を向けてくる集団…それは魔王軍に違いない。

数年前までは、反国家の勢力もはびこっていたのだが、今は落ち着いている。

他に考えられる節もない。


「これは、骨が折れそうね…」


魔王軍が攻めてきた場合、必ずただでは済まない。

前回の襲撃では、王国騎士の十、十一番隊がほぼ壊滅してしまった。

出撃隊は二十五までしかないので、かなりの痛手である。

今回もそのような事になっているとすれば、既に一、二、小春以外の三番隊は窮地に立たされていることになる。

一刻も早く、合流したい。


「っと。とりあえず、目の前の状況をなんとかしなくちゃね。」


小春は辺りの様子を伺う。

既に、陽向たちは霧で完全に囲まれており東西南北がどちらなのかさえわからない。

敵が周りにいるのかわからないが、物音はほとんどしない。

動物の鳴き声も、息の音も。


「陽向、とりあえず馬から降りて。」


「え?なんで?というかそんな大声出していいの?」


平然と言う小春に陽向は動揺する。

というのも、今まで陽向が口を閉ざしていたのは、何だか周りに気配を感じ警戒していたからだ。

だが、少女は馬から降りろ、と言う。

全く意図がつかめない。


「どうやら、この状況かなり危険なの。悪いけど、ここであなたには帰ってもらうわ。」


「え、危険ならなおさら静かにしなきゃ…というか、この状態で帰れるわけなくない?」


小春の言っていることが理解できず、少年はさらに動揺する。

なにか策があるのだろうか。


「はぁ、あなたやっぱり常識、いや判断力ないのね。」


今度は大分はっきり言われた。

流石にこれには陽向は「は?」と声を漏らしてしまう。

すると、小春は陽向の方を向き「じゃあ、聞いてて。」と人差し指を立てる。


「敵は私達を完璧に孤立させたわけ。じゃあ次に何をするか。私だったら大量の魔獣で袋叩きにするわね。」


聞いて、陽向はゾッとした。

つまりは、今自分たちは魔物に包囲されているということである。

しかもたった二人で。

陽向はようやくこの状況を理解した。


「え、もしや俺たち大ピンチ?知らない内に戦いに参戦してたってわけ?」


少し興奮気味に言う陽向。

まあ、それもそのはず。

絶体絶命のような物なのだから。


「…そんなところね。」


どこまでも冷静な小春。

陽向は彼女に対し、尊敬に似た感情を抱いていた。

一歳しか年が変わらないのに自分より遥かにしっかりしている。

きっと、元の世界よりもこちらの世界は厳しい環境なのだろう、と陽向は痛感する。


「えっと、じゃあなんで攻めてこないんだ?」


相手は完全に有利。

ここで一斉攻撃をかければ三番隊隊長の命を取ることができる。

けれど、襲ってくる気配がない。


「私の読みだと敵も私達の居場所を特定できていないんじゃないかしら。」


またもや小春の言っていることが理解できない陽向。

相手は自分たち目がけて霧を出したのだから、位置も把握しているはずじゃないか。


「…つまり、今、敵には人間と魔獣がいるでしょう?人間の方は私達の位置を把握していても、魔獣の方は恐らく霧が広がりすぎて、私達の居場所が掴めないってこと。」


疑問符を浮かべる陽向に小春は丁寧に説明した。

だが、まだ陽向は小春が言いたいことがわからない。


「要するに、攻めたくても攻めらないのか?それはおまぬけさんだな!」


「だけど、この状況で私達の居場所を掴める魔獣を私は知っているの。」


少女はきっぱり言った。

陽向の頭はもうパンクしそうだ。

魔法世界もそう簡単にマスターできそうにない。


「それは、視力にも聴力にも頼らない存在よ。」


なぞなぞの様な問題に陽向は首をひねる。

視力も聴力も必要しない、ということは目や耳がないのだろうか。

果たしてそんな魔獣が存在するのだろうか。


「なら、なにに頼って動いてんだよ。」


人間の九割か八割の情報源は視力。

それがないとなると、その魔獣はどうやって生活しているのだろうか。


「魔力。」


少女はたった一単語で返す。

魔力、それは第何感なのだろう。

第六感は直感や霊的な力と言われているが、そこには該当しないと思われる。


「相手は私達の魔力に反応して襲ってくるわ。」


もはや断言に近い。

自信満々で言うからには頼って大丈夫なのだろうか。


「じゃあどうするか、ここからはあなたを逃がす作戦を説明するから。」





次回はちょっとバトル展開ですかね。

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