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魔法世界にようこそ!  作者: 冷鳥ルイ
第一章 ランカーネ襲撃編
8/22

1‐7 乗馬体験


「あ、あの!凄い揺れるんですけど!」


少年は馬に初めて乗っていた。

思ったより振動が大きく、風当たりも強い。

気を抜いているとすぐに振り落とされてしまうだろう。

そんなレベルだった。


「スピードをだすって言わなかったかしら。とりあえずできるだけ強くしがみついて。」


少女はお構いなしに言うと、すぐに手綱を持ち直し、前を向いた。

こんなスピード慣れている、というのが仕草から分かる。

16歳と言っていたが、乗馬経験はかなり豊富なのだろうか。

とにかく、しっかりしがみついてないとまずい。

陽向は両足で踏ん張る。

少しきついが、都合上こうするしかない。

前にいる小春に捕まるわけにもいかない。


「そんなことしたら俺が捕まるっての…」


うまいことを言ったつもりなのだろうか。

陽向は呟いた。

小春には聞こえないようにしたので、独り言だ。


「陽向、ランカーネが見えてきたわよ。あと少しの辛抱だけど、油断は禁物ね。敵襲があるかもだから。」


少女の呼び掛けに陽向は「ああ。」とだけ返した。

言われなくても油断などしない。

あまり話している余裕すらないのだ。

手綱持ちの小春は余裕そうだが。


「んあ?」


陽向は小春からの呼び掛けで、ランカーネに近づいてきたと知らされたので、様子を見てみることにした。

すると、さっきまでは畑や牧場などといったものが広がっていた風景が、建物ばかりの都会のようになっていた。

なんだか、とても違和感がある。

陽向は気になったので、小春に訊いてみた。


「なんか、賑やかな街じゃね?」


「不謹慎だし、当たり前のことを言っているようだけど、特別目をつむってあげる。」


指摘されて、陽向ははっとした。

ランカーネが賑やかなことくらい、もしや一般常識だったのだろうか。

元の世界で言うと、日本在住のくせに、東京に来て「賑やかな街ですね。」と言うような行為だったのだろうか。

それは違和感が生じる。

異世界から来たことはバレないにせよ、変な人だと思われてしまうかもしれない。

陽向は焦った。

だが、その心配をよそに、小春は白い変な格好をしている時点で陽向を変人扱いしていた。

そもそも、パーカーがこちらにはないのだ。


「この街、ランカーネは世界樹の街ネムノに近いことで有名でしょう?その影響らしいわよ。」


世界樹だの説明されても理解できない陽向。

なにかの観光地だろうか。

仕方なく、「そうなんですね。」と返す。

この世界の人々と何でもない話を出来るようになるのは、いつになるのだろうか。


「それにしても、陽向がルカさんに用ってどんなことなの?」


陽向は困惑する。

実際、陽向自身も「会え」と指示されただけで、会ったら何が起こるのか把握しているわけではない。

ルカ、という人物は異世界のことを知っているのだろうか。


「えーっと、伝言を預かってまして…」


「あら、どんな?」


詮索されないようにうまく嘘をつこうと努力したのだが、無理だった。

仕方なく、陽向は自然に対応しようとする。


「内容はちょっと外部の人には言えないんですが…」


外部の人には言えない、というのは本当である。

試しに門番にばらしてみたが、頭がおかしい子扱いを受けた。

全く失礼なことである。

わざわざ異世界から来てやったのに。


「じゃあ、もしかして陽向はルカさんのお知り合い?」


小春は手綱を引きながら問いかけてくる。

陽向は何となく気になったことを訊いてみた。


「いや、よくは知りません。どんな人なんですか?」


小春は「そうね…」と少し考えてから答える。


「一言で言えば、ボーイッシュな人ね。髪もベリーショートだし。」


ベリーショート、つまり男子と変わらないくらい髪が短い。

男子にも個人で髪型は色々あるが。


「言動も女の子らしくないわね。」


少女は捕捉した。

ボーイッシュな女の子、と言われても陽向の身の回にはそんな人はいなかったので、見当がつかない。


「へぇ…面白いですね。」


いい表現が浮かばなかったため、陽向は何故か面白いと返してしまう。

自分で言っておきながら謎だった。

やはり語彙が少ないのである。


「フィー。」


陽向は変なため息をし、何気なく指を触る。

特に理由はない。

無意識というやつだ。

授業中にペン回しを何故かしてしまう、何てよくあることではないか。

無意識は怖いものである。


「ん?なんだ?」


そう、無意識は怖い。

彼に大切なことを思い出させた。


「指輪…か?」


少年は小さく呟く。

左の人差し指に違和感がある。

まるで、透明な何かが、指を覆っているようだ。

「あと、これをつけていってください。」というセリフを陽向は思い出す。

それは、銀髪少女が最後に少年に渡した指輪だった。


「ん、どうしたんだ?」


何の前振りもなく、小春は馬を止めた。

陽向は反射的に理由を問う。

だが、すぐに愚問だということに気づく。


「ごめんなさい、陽向。やっぱりあなたを連れていくわけにはいかないみたい。」


少女は目の当たりにした光景から、今の状況を判断したらしい。





今回は結構少なめです…

すいません…

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