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そうだ病院に行こう!

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


僕は飛び起きて叫んだ。とんでない夢を見てしまった。怖い怖い怖い怖い。こんなに怖い夢は初めてだ。しかもあれは正夢になる。僕は確信出来る。あの日記帳の最後のページがトドメだ。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


呼吸が上手く出来ない。脳が肺に空気を送れと信号を出してくれない。頭も痛い。体も痛い。僕は60歳の僕のページを見てしまったのだ。


「うぁぁ・・・あぁぁ」


涙が出てくる。悲しくて悔しくてどうしようもない。日記の60歳のページは白紙だった。


つまりあの夢の中の僕は60歳だったのだ。皺だらけの手や足はコンビニ飯ばかり食べてた影響だろう。そもそも早死もコンビニ飯ばかりの食事の偏りがいけないのかもしれない。45歳で僕の両親が亡くなったか入院などした為テーブルにご飯が無くなっていたのだ。僕は料理が作れない。だから自然とコンビニ飯になってしまったのだろう。我ながら馬鹿だ。上司の言う通りじゃないか。


「うぐ・・・うぁぁ」


涙が止まらない。別に早死にするのは嫌ではない。正直人生に疲れ切っている所はある。自殺も考えた事がない訳ではない。それでも今日まで生きてきたのは何かあると思ったからだ。言葉では頭では諦めていたけれど、僕でも何かイベントがあると漠然と信じていた。ある日美少女が落ちてくるかも。宇宙人が攻めてきて戦う僕。異世界に転生されて生きる僕。そんな馬鹿な事は無いと知っていながらも、今まで僕は漠然と夢を見ていたのだ。無意識的に。いや意識的に。


人間の自己防衛能力といった所だろう。もしそんな考えが無かったら僕はとうの昔に自殺していたかもしれない。実際僕は今死ぬことを考えている。このまま何も無いのなら。いっそ・・・


しかし、どうにも府に落ちない事がある。なぜそれに気づいてしまったか謎なのだ。実際僕はファンタジーな事を頭では馬鹿な事と思いながら無意識的に盲信していた。しかし、今夢によって気づき絶望している。そこが分からない。問題は何故今回は人間の自己防衛能力が働かなかったのか府に落ちない。


「~~~♪」


携帯電話が鳴っている。先ほどから鳴っていたようだが今更気づいてしまった。急いで出る。画面を確認し忘れた為誰からか分からない。


「もしもし」


「お前なにしてんだ!!?ああ!!?」


上司からだ。時間を見る。お昼前だ。完全に遅刻だ。


「体調が悪くて寝込んでました。電話しようと思ってたのですが起きられず申し訳ございません」


ビバ謝罪スキルと言い訳スキルの応用。真実も混ぜてるトリプルスキルセットだ。


「だったら早く病院でも行ってから会社こい!!わかったか!!」


「はい。申し訳ございませんでした」


トリプルスキルでも駄目だった。というより病院に行く事になってしまった。行って診断書貰っておかないと寝坊だと思われて更に怒られてしまう。今まで寝坊なんて殆どした事ないから体調云々は信じてもらえたのだろう。


「けどなぁ・・・」


緊急事態で涙は収まったが体は重い。あまりにも夢見が悪すぎる。もそもそとパジャマから私服に着替える。今日は病院で時間が掛かった事にして仕事は休んでしまおう。次の日相当怒られるがそこは頑張れ明日の僕。君の好きなイベントだぞ。


さてはて、病院と言っても色々ある。内科に外科に精神科。だいぶ心が参ってるようだから精神科でもいいかも知れないが、近所の人に目撃されたら変な噂をされそうだ。僕の両親はそこらを一番気にするタイプの人種だ。後でぐちぐち小言を言われたくはない。


「っつ・・・いてて・・・」


そういえば最近たまに体の節々が痛む事がある。すぐに収まるので気にしていなかったが、ついでに見てもらおう。そうと決まれば外科で決まりだ。ネットで検索し家の近くに最近出来た外科に予約を入れる。病院といえば爺婆が沢山いて混んでいるかと思いきや空いているようで今すぐ診察可能だそうだ。葉を磨き髪を整え家を出る。


「行ってきまーす」


僕は1人だろうと必ず行ってきますとただいまを言う。癖になっているのだ。親の教育の賜物だろう。言わなければ少し家から出るのを躊躇うレベルだ。ここまで仕込む僕の両親も少しおかしい。それは後々分かるだろう。


病院は家から徒歩で10分程度。中々良い所に病院が出来たもんだ。カランコロンとドアを開けて中に入る


「・・・・・あっ!?」


思わず声が出た。夢で見たあの妙齢のお医者さんの若いバージョンがそこに立っていたのだ。とっても美人。白衣を着て肌も白いのでとても神々しい。


「どうか致しましたか?」


思わず声をあげた僕に妙齢ではないお医者さんが声を掛けてくれる。


「あ、いえ。財布持ってきたかなと不安になってしまい声がでちゃいました」


咄嗟に嘘をつく。手慣れたものだ。社会人の必須スキルでもあるが僕は元々嘘つきだ。両親の目を色々と誤魔化す為に嘘が上手くなってしまった。


「ふふふ。そうですか。もしお金が足らなくてもカルテに記帳しておきますので次回でも大丈夫ですよ。」


夢の中と同じく優しいお医者さんだ。思わず夢では僕の最後を看取ってくれてありがとうございます!!と言いそうになったがそんな事をしたらせっかく外科に来たのに精神科に送られてしまうのでグッと我慢した。いま思えばあの夢の中で僕を看取ってくれたのはこの人だけだと考えると、僕は友達も居なかったのだなと悲しくなってきた。すんすん


「大丈夫です。財布はちゃんとありました」


「ふふ。よかったですね」


財布を見せるとニッコリと微笑んでくれた。これはお金を見て微笑んだのではないかと少し勘ぐってしまった僕を殴りたい。


「こちらにどうぞ~」


呼ばれてお医者さんは奥の部屋へと消えていく。診察スタートだ。美人のお医者さんと二人っきりで診察プレイだと考えたら少しドキドキする。僕もお医者さんの後を追い奥の部屋へと入っていったのだった。

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