酒場での出来事
「なあ、お前東北にある、森の魔女について知ってるか?」
ガヤガヤと響く酒場の中。
1人の中年男性が、飲み相手であろう男性に話しかける。飲み相手は目をぱちくりさせ、一時してどっと笑った。
「魔女って、オメェいつの時代の
おとぎ話だよ。ったく真面目な顔して話ているから聞いてやったけど、おもしれぇよ。」
「でも、ほ、ホントらしぜ・・・」
青ざめて話をする、中年男性に対して飲み相手は
今度は腹抱えて、また笑った。
「ほんとオマエは、怖がりだな。」
男達は、この魔女の話に余程、夢中になっていたのを気づかなかったのか、ガヤガヤ響く酒場の中、
それなりにデカイ声で話をしていた。
そして、その話は酒場の客である1人の少年の耳に入った。
少年は、目を輝かせ二人のところに近づき声をかけた。
「おい、おっさん達。その話本当なのか。」
急に話かけらてビックリした2人は、ピッタと動きを止めて、その少年を凝視した。
見た目は、10代だろうか。
青い髪で整った顔した、頭にゴーグルを着けた少年は輝く瞳で、動き止めている二人を見ている。
「おい、小僧。魔女に興味があんのかぁ。若いのに偉いねぇ。ガハハハハ。」
中年男性の飲み相手が小馬鹿にするように、笑いながら話す。
どうせ、ガキの好奇心だ。
そう思いながら、飲んでいる間、少年をニヤニヤしながら見ていた。
「魔女は、東北にいるんだとよ。興味があんなら行ってみな。」
軽く言ったつもりだろう。
しかし、少年は場所を聞いて真面目な顔になり
「東北か・・・。よしわかった!行ってくる。」
と酒場の出口の方にいく。
バタバタ走っていく少年。
飲み相手は焦り、
「お、おい」
呼び止めたが、もう遅い。
少年の姿はもう無くっていた。
呆気に取られる飲み相手に対して中年男性は
「俺、知ーらない。」
と、冷めた目で一言。
「まさか、ホントに行くとは思わなっかたぜ…。」
頭をボリボリ掻きむしり、飲み相手はうなだれた。
「ま、まあ、ドンマイ!ほら、ビール追加するから。
すみませんー。マスター追加1つ」
大きな声で奥にいるマスターを呼ぶ中年男性。
すると、奥からなんだか慌ただしいマスターが見え
た。
「?マスターどうしたんだ?」
飲み相手も疑問に思ったのだろう、マスターは、
キョロキョロ店内を見渡していたのだ。
そして男達に近づき、
「あ、ああ。お客さん追加ですね。ところでさっきここに青い髪の少年いませんでしたか?
おかしいなあ、さっき注文したパスタ食べたのに・・・。」
と低い声で言ってきたのだ。
「え、青い髪の少年ですか....。」
中年男性が問かける。
「さっき、店出ってけど・・・」
飲み相手が青ざめる。
「え?出ていった?」
マスターは目丸くし、やがてプルプル震えだ し、
「く、食い逃げだぁぁぁ!!」
と大きな声を出して、賑やかだった酒場はマスターの声により静まり返った。
マスターの声は外まで響き 、猛ダッシュで逃げる少年レイア、のところまで届く範囲だった。
「やべ、もうバレたか」
東北へと逃げるレイアは、ありえないスピードで走る、鬼の顔をした酒場のマスターと鬼ごっこをすることなった。