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魔導人形物語〜左手の薬指にはあなたの指輪を〜  作者: 一花カナウ
 第四章 魔導人形理論
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魔導人形協会本部

 魔導人形協会本部――そこは全国に散らばっている支部をまとめる中枢機関であり、魔導人形に関したさまざまな取り決めを行っている場所である。さらに支部でまとめられた情報をすべてここで一括管理している。人形職人や傀儡師がまとめた論文の最終提出先もこの本部だ。


 きらびやかな装飾が施された壁がある開かれた正面玄関。その中央には魔導人形を生み出した親としてあがめられている人物の像が建っている。床に使用されている乳白色の陶磁器の板は遠い地方から運ばれたもので、このほかにも地方から集められた贅沢品はいくらでもある。このようなことができるのはこの団体が国の重要な機関としての地位と権限を持っているからだ。


 プリムは緊張する身体を何とか動かして中をまわる。その豪華絢爛ぶりは支部とは大違いだ。ある意味では感心し、ある意味ではあきれながら目的の場所にたどり着く。


「ようこそ、魔導人形協会本部へ。ご用件はなんでしょうか?」


 よく磨かれて光を反射させる仕切り台。そこには二十代半ばくらいの女性がいる。諸手続き受付だ。


「首都フェオウルの短期滞在許可を。申請内容は研究でお願いします」


「短期滞在許可ですね。こちらの必要事項を記入してください」


 受付台の下から所定の用紙を取り出し、それと筆記具をプリムに差し出す。


「はい」


 受け取った筆記具で名前や目的などを書き入れる。いっそのこと長期で申請してしまいたかったが、そのためには試験と審査があるのでしたくても容易にはできない。姉のスピリアほどの功績があればその辺の手続きをいくらか省略できるが、プリムはまだ傀儡師になったばかりの初心者だ。申請したとしても通る見込みはないだろう。


「どうぞ」


 面倒くさいなと思いつつ書き上げた書類を筆記具とともに返す。受付の女性は一通りその内容に目を通す。


「許可証の提示をお願いします」


 言われてプリムは荷物の中から金属で作られた飾り板を取り出し、仕切り台に置く。それは二つの輪が鎖のように繋がった意匠であり、その縁に許可証番号と名前が刻まれている。魔導人形協会で許可証と言われれば、たいていこの証明書を兼ねる飾り板をさすのだ。


「ご提示、ありがとうございます。プリム=ローズ様ですね。少々お待ちください」


 営業用の作られた微笑みを浮かべると、受付の脇にある配管に向かって放送をかける。


「プリム=ローズ様がいらしております」


 その館内放送にプリムは戸惑いを覚える。何か様子がおかしい。プリムは身構える。そんな様子にはお構いなしに受付の女性はにこにことプリムを見つめている。


(一体なんなの?)


 プリムは嫌な予感が的中するような気がした。

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