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魔導人形物語〜左手の薬指にはあなたの指輪を〜  作者: 一花カナウ
 第三章 愛ある人形は主人に尽す
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魂の追跡

 夕方、昨晩泊まった宿屋の同じ部屋。プリムは昼食後から寝台で横になっている。その脇でディルが小さく丸まっている。


「ん……」


 ようやく目が覚めて、プリムは上半身をゆっくり起こす。


「起きたようだな。もう大丈夫か?」


 読んでいた本を枕元に置いて、リーフは自分の寝台に座り直す。プリムに対して心配そうな表情を向けていた。


「うん。平気。寝すぎて眠いくらいよ。今晩は眠れないかも。やだなぁ」


 小さくあくびをすると、毛布を畳んで起きる準備をする。


「そうだ、あの本、読み終わったぞ。興味深いことが書いてあった」


 つい先ほど読み終わった『アストラルボディフェイズ』の内容を思い出しながら言う。


「ちょうどいいわ。今晩からそれを読むことにする」


 プリムは身支度を簡単に整えると寝台に腰を下ろす。


「あと、今日の件についてだが」


 リーフが急に話題を変える。人形屋を出てからは魂のかけら関係の話を全くしていなかった。聞かれたら気まずいということはもちろんあったが、なによりプリムが疲れきっていたので後回しにしたのだ。


「なに?」


 リーフを見つめて小首をかしげる。


「嵐の日のことといい、今日のことといい、やっぱりディルは何かに反応しているように思えないか?」


 プリムは思い出しながら小さくうなる。


「うーん……追跡はできるみたいだけど」


「それと、また勝手にどこかに行きかねないだろう。それらをふまえて提案がある」


 リーフが改まった表情で言うので、プリムは身構える。


「なにかしら?」


「ディルには少々かわいそうだが、糸で繋いで拘束してみてはどうだろう?」


 プリムはディルをちらりと見てため息をつく。


「本当は鳥かごに入れておきたいんだけどね……。前にやったときは簡単に逃げられちゃって何の意味もなかったのよ。気休めにもならない」


 肩をすくめてやれやれの表情。


「一時的に魔術で拘束して、解くときにも魔術を使用するといった形式にしようと思うんだ。一度人形の再生成を行うと簡単に分解はできないんだが、そこには物理的な仕切りを設けて、魔導人形としての部分とそうでない付属としての部分にすることは可能だと思うんだ。成功するとは限らないが、やってみないか?」


「うーんと、魔導人形の詳しい作り方や組成はわからないんだけど……」


 リーフの噛み砕いた魔導人形の説明を聞いて、顔を引きつらせながらプリムは続ける。


「そうね、しばらくっていう期間限定ならあたしは賛成よ」


「そうと決まれば、早速準備を始めるか。まだ店も開いているだろうし」


 窓の外の様子を窺いながらリーフは立ち上がる。


「えぇ。そうしましょうか」


 丸まっていたディルをつつくと、ふわりと飛んでプリムの肩に乗る。


「ディル。お買い物に行きましょう」


「みぃ」


 短くはっきりと答える。彼は自分の身に起こることを何も考えていない。というよりも先のことは何も考えていないらしかった。


「さ、出発」


 財布を持つと、リーフが率先して扉を開けた。

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