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魔導人形物語〜左手の薬指にはあなたの指輪を〜  作者: 一花カナウ
 第二章 当てのない旅へ
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当てのない旅の目的地

 太陽の光に白さが満ちる。差し込む陽の光は窓の近くを照らしている。紗幕が開けられており、活気づく町の様子が窺えた。


「しまった!」


 プリムは目を開けるなり勢いよく起き上がる。すぐに寝台から下りて髪を結い直しながら、身だしなみを整える。


「ぐっすり寝すぎたわっ! すっかり寝坊よっ!」


「心配するほど時間は経ってねぇよ」


 本を置いてプリムをちらりと見る。


「確かに朝食の時間とは言えないかもしれないが」


「のんびりしていられないわよ! そろそろ出ないと次の町に着かないわ」


 鏡を見ながら服装を確認する。着替えずに眠ってしまったことを後悔していたが、過ぎてしまったことは仕方がない。明日からはそんなことがないようにしなくてはとプリムは心の中で誓う。


「そこまで急がなくても大丈夫だろう? 当てのある旅でもないんだし」


 のほほんとした様子でリーフが言う。


「それもそうなんだけどね」


 鏡の前から離れると、荷物の中身を確認し始める。今すぐにでも出発しようという様子である。


「だったらさ……」


「国立図書館で特別閲覧に指定されている書物が一般に公開されているの。今週いっぱいなんですって。それまでには行きたいのよ」


 言いかけたリーフの台詞を遮ってプリムは説明する。リーフはプリムの台詞に興味を示す。


 特別閲覧に指定されている書物といったら、それは魔導人形が発明された頃の、それもかなり初期の頃の書物以外にはあり得ない。人形職人は誰しもその書物に興味がある。魔導人形を操作する傀儡師にとっても同じことだ。また、この状況を解決する糸口になる可能性は大いにある。興味があって当然だ。


「なんていう題名なんだ?」


「魔導人形理論」


 荷物をまとめるとリーフに視線を定める。


「魔導人形を発明した人物が記した書物よ。あなたも興味があるでしょう?」


「それは重要だ。確かに時間がないな」


 リーフは国立図書館の所在地を思い出しながら答える。首都フェオウルは少なく見積もっても馬車で三日かかる位置にある。今週いっぱいとなればぎりぎりの計算だ。


「だから、馬車借りてきてくれない? 隣町までのを。その間に食事に行ってくるから」


「了解。慌てすぎてむせるなよ」


 笑いながら言うとリーフは自分も荷物をまとめることにする。


「そっちこそ、寄り道しないで戻ってきなさいよね」


 対抗するような様子で注意すると取っ手に手を掛けて出てゆく。その彼女の後ろをディルがすばやく追いかけて行った。

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