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イーサン

ギルバート家リビング。イーサンとシンディは久しぶりにふたりだけで過ごしていた。


「子供たちがいないとこんなに静かなのね。でもちょっと落ち着かない」


というシンディにイーサンも


「今頃エヴァンたち、振り回されているだろうな。あいつらのパワーに」


と笑った。この2日間で初めて見た夫の笑顔だった。


「今朝どんな話してたんだい? 彼、いやラルフと」


「うふふ、内緒の女同士の話よ。ガールズトークっていうやつね」


「どこがガールだよ。でもなんかさ、家族で僕だけが仲間はずれだな。父さんは謎だけど、みんなラルフと仲良くなるんだな」


「あなたは嫌い?」


「嫌いとかそんなんじゃない。ただ怖いんだ」


「怖い?」


「これまでの自分の常識が根底から覆されるのが怖かったんだ。世間の目も怖い。会社のスタッフの目も怖い。キミの父さん母さんの反応も」


「そうね、父さん母さんびっくりよね」


「今朝、チビたちがラルフを『熊さん』って呼んでたろ?」


「あはは、部屋の空気がいっきに冷えたわね。あの子達ギルバート家の禁句を連呼するんだもん。まだ子供だわね」


「排除してたんだな僕は……」


「ん?」


「自分にとって心地よくないものを。テディベアも。ゲイの弟もその黒人の恋人も」


イーサンはひとりごとのように言い続けた。


「エヴァンも自分と同じだと思っていた。当然のようにキミにも同じ価値観を求めていた、そして子供たちにも。でも子供たちはテディベアもラルフも大好きなんだよな、おそらくキミだって」


「イーサン……」


「自分の価値観を押しつけようとしてたんだ。そしてその枠からはみ出たものは排除しようとしてた。エヴァンにとってのラルフは、僕にとってのキミで、子供たちなんだよな。恥を知るべきなのは、キミの夫のほうだった」


シンディはイーサンを抱きしめた。


「久しぶりにデートしようか、奥様! さあメイク直して、出かけるよ!」



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