主従の契約
自由人のサブタイトルは毎回悩むのに悪人の方はすぐ思い付きます…。
あと、一応…じゃなくても受験生なので投稿ペースが下がります…。
「おい、まだ着かないのか。サップ?もう大分歩いた筈なんだが…。」
「本来、馬車で行き来するし~♪しかもここ獣道だから見つかるリスクはないとしても、手間はかかるね♪」
「そうか。だがそろそろ休まないか?さっきから戦闘ばかりだからな。」
あの小川から、出立して以来…ゴブリンやら角ウサギなどと戦闘を重ねた。勿論素材は剥ぎ取ったがな。
「そうだな。休むか…だけど♪その前にあれどうする?片付けちゃう?」
少し向こうのほうに5匹、狼がいた。そのうちの一匹は他よりも体格が大きい…おそらくボスだろう。
「当たり前だ。そして先手を打つ。
火よ奴等を焼き払え
『レッド・ウェーブ』」
これは、本に書いてあった中級の魔術だが…案の条、長い詠唱がズラズラ書いてあったので、俺なりに省略した。あんなのを言ったら隙もでかいし…何より何を放つか相手に教えてるもんだからな…。
「おお!?デカイの以外はみんなくたばってるぜ?後、すごい勢いで向かってきてるぞ?」
「光よ翔んで奴を射殺せ。
『ライト・アロー』」
俺は直ぐには、放たずギリギリまで引き付けた。そして、奴の脳天に…ほぼ零距離でぶちかました。狼は即死だったようで勢いのまま死体が俺を下敷きにした…重いな。
「サップ。お前ちょっとこれに入ってみろ。人間でダメなら動物だ。」
「お、おう…。」
俺は~内心ドギマギしながら狼の体に憑依した…すると体に馴染むような感覚に包まれ、気分はまさに狼!
「ガウ♪ガウウ?(やった♪俺凄くねスカム?)」
「なに言ってるのか、さっぱり分からん。」
「ガウ!ガーウウ♪(そうだ!良いこと思い出した♪)」
ガウガウ吠えて、いきなりまた出てきやがった…今度はなんだ?
「騎士は、自分の主人に剣を捧げ主従を誓うんだよ♪つまり!俺とお前でやれば意志疎通も可能になるはずだ!つーことで今から始めるからな?」
騎士の誓いね…。既に騎士とは思えない行動をしてると思うんだが…。
「我、サップ・ライアーは偉大なる主であるスカム・チュッニーに剣を捧げ、その剣であらゆる者からも護り抜きましょう…。」
誓いを終えると、俺の右手の甲に剣を模した紋章が出現した。同じようにサップの左手の甲にも出現した。
「じゃあ、もう一回狼に憑依するぞ?」
そして、狼に憑依すると左前足に紋章が浮かび上がった。
「どうだ?俺の声聞こえてる?」
「ああ、ちゃんと聞こえてる。ただお前の口を見る限り…吠えてるだけに見えるな。」
「そりゃそうだ。契約したからお前には声が聞こえてるが、他の奴には普通に吠えてるだけに聞こえてるからな。これなら町に俺も入れるな♪」
「そのくらいの体格なら俺のこと乗せられないか?」
そうすりゃ町に早く着くしそればかりか今後の予定やらも相談出来るだろうし。
「…ちゃんと掴まれよ?念のため聞くが、あと数時間かけて歩くのと、危険いっぱい数十分のどっちがいい。」
「後者で。時間は有限だ。早く行けるのなら早く行くべきだ。」
こいつは…会ったときから思ってたが、なんというか大物だな…。こいつとならミントの野郎をぶち殺すのも夢じゃないな♪
「しっかり掴まれよ?それじゃ行くぜ!」
俺は、力強く全力疾走した。そして…崖を下った。所謂、近道というやつだ♪そのまま、ただ真っ直ぐ町へと突っ走った。
スカムは、気絶していたが手は、しっかり俺の背中を掴んでいる…。崖は下ったし、あとは森中を走るだけなんだが…こいつも疲れてるだろうから…今は寝させといてやるか♪
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…う、うん?なんだか…あいつが崖に行った辺りから記憶が曖昧だ…。それに大分寝てたみたいだな…。だいぶ疲れがとれている…。
「お?起きたのか!どうする?もう町のなかに入るか?」
…!?…どこから声がするとおもったら頭からだった。どうやらこいつの胴体を枕にしてたみたいだな…。
「それより、ここは何処だ?なんだかやけに湿っぽいが…?」
「ここはポロローズの地下道だからな。ここの町は用水路が完備されてるから、上手くいけば、ここからでも町中へ入れる。問題は山積みだがな?」
「普通に入ると…多分だが止められるだろう。流石に先に帰還したあいつらが報告してると思うしな。」
「かといって、ここからは無理だと思うぞ?魔物がわんさかいるからな。といっても区画さえ抜ければ、魔物もほぼ居ないけどな。」
「じゃあ、何が駄目なんだ?見張りでもいるのか?それとも道が複雑なのか?」
俺が問いかけると、「どちらも正解だ」と返答してきやがった。その程度なら、大体対策は可能だ。
「まず、警備の奴等をここら辺に誘き寄せ仕留める。その間に俺等は脱出する。簡単な事だ…俺に任せておけ。」
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キシャャャャャ!
ギシュュュュュ!
ギャャャャース!
随分、てんこ盛りだな。俺の予想通り、水路の魔物は視覚がほとんどないみたいだな。こんな暗い環境での進化といった所か…。獲物を音で判断し、狙った獲物は逃がさないといった感じだろうか。それなら俺は、こうするまでだ。
「炎よ怒れ、怒り狂え。そして魔のもの達を導け。
『フレア・ナビ』」
静かに音もたてずに、炎の大玉が出来上がり…そのまま道に沿って、時に音をたてながら漂って、反応した魔物が飛び込んで焼かれている。
「ゆっくり歩け…。あいつらはあの玉に集中してるから俺達には気づいてないはずだ。」
分かったのか、サップは右足を上げた。どうやら声を出さないようにしてくれたらしい。気が利くな…。
「俺の予想じゃ、そろそろ見張りの奴等が来る筈だが…?」
タッタッタ!
「来たな…、おいサップ隠れるぞ?」
見張りが走ってくるのとは逆方向へ俺たちは隠れた。さて…これから面白いものが見れるぞ…。
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「うお!?なんだこれ!どうなってんだ?」
「お、俺らじゃどうすればいいか分からねえよ!」
見張りとして配属された二人は異変を感じ、来たものの…目の前の謎の玉に衝撃を受けていた。
「い、い急いで隊長に連絡しないと!?通信石は?」
「ああ…えっと、どこやったかな?」
「…死にな…。」
「えっ!?誰だ?」
その瞬間、玉が警備兵の一人に突っ込んだ。激しい音をたてながら警備兵は黒焦げとなった。
「うわぁぁぁぁ!って…ぎゃっ!?」
隣で仲間の無残な最期を見てしまったもう一人が叫び声を挙げると、水中に潜んでいた魔物が一斉に襲いかかった。
呆気なく二人の兵士の死体が出来上がった。一人は黒焦げ焼死体、もう一人は現在も捕食されている。
「よし…計画通りだ。あとは簡単。こいつらの足跡を辿るだけだ。光で照らしながら進むが、お前は周辺警戒をしてくれ。」
ふむ、やはり魔物が出る水路ということは誰も掃除しないってことだ。居たとしても、間隔が長い筈だ…。案の条…埃やらカビがたまって綺麗に足跡があるな♪これを辿れば出口に行けるだろう…多分。
音をたてないように少しずつ、かつ慎重に進んでいった…。
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「お?扉があるな…。」
俺たちはあれから歩き続けて、やっと出口らしき扉へと辿り着いた。どうやらあの二人はサボっていたらしく、休憩していた後が何ヵ所もあった。
……とりあえず入るか。
「出口だといいんだがな……」
扉を開けると、どうやら警備兵の詰所のようだ。ふたつ持ち物がある。多分、あの二人の物だろう。ありがたく貰うことにする。
「スカム!見ろよ♪なんか梯子あるぞ?ちょっとボロいけど。…何々♪非常口だってよ?」
「なら、そこから出るぞ。早くこの湿っぽい場所を抜け出したい。てかお前…その姿で登れんのか?梯子。」
忘れていたが、こいつは狼に憑依している。それなのに、果たして登れんのかよ?
「登れんのかって…。手を使えりゃ登れんぜ?なんなら先、行くぜ?」
そう言うと、ヤツは…器用に梯子を掴み登り始めた。しつこいようだが、ヤツは狼だ。…こいつは本当に常識を越えるやつだよ…。
「俺もさっさと登っちまおう。ついでに部屋の中の物を少し拝借しよう。」
なんだかんだ色々あったが無事、町に入ることが俺たちはできた。梯子の出口は裏路地のゴミ捨て場だった…今日はよく汚物まみれになる日だな……。
この小説は、あらすじは重いですが、割りと流れはコミカルです。
どちらにしてもスカム君は“人間”に対しては残酷ですけど…