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悪人達の日常  作者: 安雄
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クリーフ村②

クリーフ村に潜入したナゴさん視点の話。

戦闘する回でもないんで、あくまで情報収集するだけの話のつもりです。

クリーフ村についた頃を見計らって、騎士の腰元から飛び出して、近くにあった草むらへと隠れる。物音で気づかれたと思いきや、僕が飛び込んですぐにウサギが草むらから飛び出したからそちらの事だと思ってくれたみたいだ。さてさて久しぶりにクリーフ村まで来たわけなんだが、だいぶ雰囲気が変わってるみたいだなぁ…。


以前サップ君が祠に巣食っていた針虫を片付けるために水源を決壊させて洪水を引き起こして、村の家屋などをなし崩し的に壊していったわけだけど…。

村に滞在している騎士達によって家屋は修復・改良されて十分に生活できる拠点が完成していた。

村の中に針虫はいなくなってたが、その代わりにこの近辺では見ない魔物が規律正しく座っていた。

狼の魔物からタカのような魔物、植物系まで並んで待機していて騎士たちによってペットのように飼われていた。


「もしかして…前に見た人のやつかな…?」


元村長宅を改築したと思われる大きめの小屋へと行き、窓から気づかれないように中を覗くと、以前フォズくんに偵察してもらった時に確認した人物…

第5師団長であるマタロー・アラウィがいた。


窓にはめられてあるガラスは特殊なものなのか、中の音が全く聞こえることが無い。椅子に座ってなにかの資料を読んでいるようだが全く確認することが出来ない。

だが確かなことは、第1師団の駐屯地にいたのはこの場所を調査する為にいたんだろうな。


第5師団による何らかの調査ってことは分かったし、サップ君たちのところに戻ってもいいんだけど…。

せっかくならもう少し調べてみようかな。具体的な何かを知れば、意外と僕らの役に立つことがあるかもしれないし。


窓から離れて、とりあえず祠の方へと向かうことにする。村の随所を見れば分かることなんだけど、この村の水源は(あそこ)だし、調査をするにしたってまずはそこからしそうなものだ。

人目を避けながら村の井戸のうちの1つを通って、祠の中の水源へ侵入する。


「これは…?何をしてるんだ?水をくみ上げてるのも変だが、何か塞いでるな…?」


汲み上げポンプのような魔道具を活用させて、水をどこかに汲み上げていた。その他にもどこかの地下水源に繋がっているであろう横穴に栓をしている。

本来であれば、その横穴に入るであろう水を汲み上げることによって、祠の中の水量を一定にしているんだろう。この祠の水は雨水などが山全体でろ過されたものが染み出したものが主体だから、僕もかつてここに住んでいた頃、溢れさせないようにするのが大変だったなー。


近くに第5師団と思われる騎士が2名おり、会話をしていたので聞き耳をたてる。


「団長は第1との関係を強化する為とは言っていたが、こんなことをしたら関係ない町民にまで被害が出るのでは…。」


「そこは大丈夫みたいだぜ?あの町の水源はこの村が主体ではないらしいからな。ただ他にも環境保護の名目で地下湖やらを抑えてるのはうちの師団だから、水を抑えられるのも時間の問題かもな。」


「ポロローズの警備隊を追い込む為とはいえ…。水の供給が断たれてところを数日おいてから第1師団が水の供給を復活させるという筋書ということだが…。あの町の警備隊の信頼は厚いと聞く。そんな安い芝居で何とかなるものなのか?」


「おいおい…。誰が聞いてるか分からないんだから下手なことを言うのはよせ。まぁ、祠の入口も常に人がいるし、そう誰かが来るもんでもないがな。あと水源を断つことに関してはあそこの領主も承知してるらしい。

戦争で活躍して領主になったが、警備隊という私設部隊より国の騎士たちに任せたいのが本音らしい。」


これは…なんとも…。人間はやっぱり醜いものだな。

でもあの警備隊を追い出そうとしている動きは、なかなか良いな。警備隊が解散させられて、第1師団があの町を警備するようになれば、僕らも少しは動きやすくなるし。目的次第では破壊工作をしようと思ったけど、これは何もしないでこのまま帰った方が僕らとしては都合がいいねー。


まぁでも帰る前に、せっかくここに戻ってきたからアレを拾って帰ろうかな。

僕は水の底に潜ると、目当てのものを発見する。

四角い木の箱だが、水中で長年放置されたことにより傷んでいる。木の箱自体はいらないので、その中身のものを取る。


「うーん、昔作ったものだけど…。500年も経てばやっぱりそれなりのものになるねー。」


昔、とある目的で作った手作りの指輪ふたつ。当時から希少だったあらゆる属性に耐性があるレジスト鉱石。

それを削って作り出した逸品だ。

全部に耐性はあるとはいったけど、僕が長年懐に置いていたせいか水属性に強いものとなってる。

これを持ち帰ってスカムくんにあげれば、万が一の場面での生存率は上がると思う。


「さて指輪を持ち帰るとなると、ここに来た時に使った手段は使えないなぁ。使えなくはないけど引っかかるリスクが少しあるからなぁ…。どうしたもんか。」


とりあえず祠から出て、近場にあった小屋の屋根に登る。調査だとしてもなかなかに人数が多く、騎士だけじゃなく、荷物運びなどで冒険者もちらほら見える。僕が登ってきた時は騎士の小物入れの中に隠れてきたわけなんだが、下にいる騎士との見張りの交代も頻度が多いものではないらしく、下に行く様子はしばらく無さそうだ。


しばらく眺めていたら、小屋の近くで伏せをしていた狼数匹が遠吠えをしだした。騎士たちも何事かと様子を見ていた。そして狼が一通り吠え終えると、


「敵襲だー!!うちの団員が殺られたらしい!」


今の遠吠えのリズムは団員の死亡を示すものか。空気中の血の匂いを察してすぐに遠吠えに加えて一定のリズムで吠えるとはよく躾がなっていることだ。

狼もそうだけど騎士の全員が全員狼の遠吠えのリズムによって指示が分かっているのは練度が高い証拠だなぁ。


サップ君とオットー君…殺っちゃったかぁ。サップ君は隠密ってことは分かりきってるから、襲撃の判断は出さないだろう。となると騎士たちにバレて攻撃されたから殺したと判断するべきだろうね。

騎士たちもすぐに駆けつける訳でもなく、下にいる仲間に魔道具で指示を飛ばしているようだ。

さらに騎士たちがタカの魔物の鎖を外そうとしていたので、すぐに近くに行く。

そうしてタカの魔物が飛び出した瞬間、背中に飛び乗る。

魔物はすぐに気づいて旋回するが、そんなもんじゃ離れない。タカの急速旋回については騎士たちはあまり気にしてないようで、そのまま見送っていた。


「くぅぅぅ…!速いなぁ。」


風を切りながら、僕を振り落とそうとタカが動きまくる。僕も何とか応戦するためにタカの体に電流を流す。

落ちたとしてもタカの身体がクッションになることは予測済だ。スライムの身体だからといって衝撃を全く喰らわない訳では無い。スライムだって圧力は感じる。


僕の予測に反してタカは急に電流を食らったことに対して、さしたるダメージは受けず、依然として僕を振り落とそうとしてくる。クリーフ村からはある程度離れたからそろそろ奥の手を出してもいいだろう。


「《湖龍変化(クエレブレ)》!!!

さてさて、背中で支えきれるかな?」


タカの背中で水蒸気を噴き出して龍の姿へと変える。

重さは大きさに比例するのですぐに木々を下敷きに墜落する。昔と違って常に変身出来るわけでもなく、魔力の蓄えもないので、ほんの一瞬だけ変化した。

それでも効果は絶大で足元で血だらけになっているタカの姿があった。これでも死んでないのは驚きだな。

タカには悪いが、万が一にも居場所が特定されることは避けたい。ここまで運んでくれたことには感謝して一思いに殺してあげよう。触手の先端を尖らせてタカの脳天を貫いて楽にする。

その後、頭上に気配がしたので視線を上に向けた。


「ん?この子はサップ君のコウモリか。ちょうど良かった。」


僕はその後、コウモリに触手で掴まりサップ君らが待機している場所へと案内してもらった。

案内してもらうこと数十分。森の中にある棘熊(ニードルベア)の巣穴に2人は待機していた。

念には念を入れてだいぶ後退してたねぇ。ワンチャン何らかの合図をして撤退する支援をしてもらうとも考えたけど、騒ぎの後にすぐに撤退行動していなければ時間的に考えてここまで来れないだろう。

合図を送らなくて正解だったな。


「悪ぃな。殺っちまった。」


「いや大丈夫だよー。おかげで撤退が出来たからね。クリーフ村は随分厳重に守られてたから。」


「そこら辺の詳しい話は拠点に帰ったら聞くか。」


拠点に帰る道中、ポロローズに行われようとしている計略についてサップ君の耳に入れる。


「あー…。戦功を挙げて、あそこを治めているとはいえ、自分が元々騎士団に属していたからそのこともあって騎士に町の治安維持を働きかけてるとは聞いたな。だが町の住民からしたら、冒険者や警備隊に町を守ってもらっていたから、どうにも騎士は心の底から受け入れられにくいらしい。」


「彼らの計画が成功して町の警備が騎士になったら、だいぶやりやすくなるかな?」


「んー。どうだろうな…。警備隊が解散になるだけでいなくなる訳でもないだろうし。それに騎士だって雑魚ばかりじゃないことはお前も分かってんだろ?」


それはそうだね…。手練もなかなかに多い。サップ君とオットー君の話を聞いた限りでは、隠密に特化しているスキル持ちだったようだし、まぁ彼らの場合は相性が悪かったわけだが…。

先日ゴブリンに憑依していたサップ君を首チョンパにした騎士もいるし…。何回も騒ぎを起こせば、自ずと場数を踏んでいる者が招集されるだろう。


「クリーフ村は第5師団の駐屯地になってたわけか。もしかしたら俺が来るのが遅れてたら、お前と接敵してた可能性もあるわけなんだな。」


「まぁ、そうなるかな。でも多分だけど、確実に脅威が無くなったということを確認してから来ていると思うし、来ようと思えばもっと早い段階で計画できたはずだろうに。多分なんらかの理由があるんだろう。」


「まぁそれが分かれば苦労ないな。」


「難しい話は後にして、早くスカム様の所に帰りましょ?」


まぁそれもそうか。サップ君のご実家の元領地の情報とか騎士2人から鹵獲したものもあるし、少なからずスカム君にはいい報告ができるだろう


前回の話でサップが聖なる短剣を見て、嫌そうな顔をしたのには理由があります。

サップは一応中途半端に霊体ですが、物理攻撃は効きません。またスキルによって復活できるので、最悪短剣を突き刺されても大丈夫なのですが…。

復活する場所は自分では指定できない上、ある程度離れていたりしており、そうしたことを瞬時に考えて嫌な顔をしてる感じです。

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