水精霊と魔力③
またまたナゴさんの話。まぁ戦闘を終えた後の話。
5~7話ごとにこのタイトルでナゴさんの話を作る感じもいいかも。
次回の話はスカムとかオットー視点で話進めたいかなー。
僕はポロローズ警備隊長ことローとの一戦のあと、命からがら逃げてきたわけだけど…正直舐めてた部分はあった。
以前1人で偵察に行った時は、今の自分では勝てそうにないくらいのことは確かにあの時は思ったが、それでもラベルちゃんだけじゃなくてほかの捕虜からも集めた魔力による魔石の恩恵により今の状態であれば勝てなくはないくらいに思っていた。だけど結果は完敗だった。
サップ君が時間を稼いでくれなければ、確実に殺られていただろう…。
だがそのお陰で情報は手に入れられた。
雷属性持ちということに加えて、高い魔力検知スキル、恐らくだが剣撃による魔力消費を大きくさせるスキル…。
サップ君やオットー君が戦った時の毒や瘴気を無効にしたスキルのことも付け加えるならスキルは3つ持ってるということだろう。
なかなか強敵だな…。しかもそのどれもが強力なスキルだ。
僕自身、拠点に帰ったあとも余裕がなくてこうしてゴブリンに運んできてもらったわけだけど…スカム君やオットー君には心配させちゃったなー。
でも実際…かなりやばい。聖水を投げられた挙句、圧縮されたせいで身体中に聖属性の魔術を喰らい続けているもんだ。
魔力を還元しつつ、聖属性を受け取れる器でもあればいいんだけど……?
「ということでね、ラベルちゃん。今日はいつもに比べれば楽だと思うよ。ちょっと聖水ぶん投げられちゃってさ。君の体内で僕の身体の聖属性を魔力ごと放出するから、君は聖属性だけ受け取ってくれればいい。」
これが他の属性ならば、自分の魔力ごと空気中に発散すればいいんだけど、聖属性や雷属性などの特殊属性は空気中に散開することはなく、身体にすぐに戻ってくる性質がある。
つまり1度身体に入れられるとずっと吸着してるわけだ。
だけど聖属性を受け取る器があれば、そちらに聖属性を受け取ってもらい、身体の中から毒素を抜けるというわけだ。
「はい…。これが終わったら彼に…会わせて下さい。」
「ん?まぁいいよー。そろそろ、ね?」
ラベルちゃんはもう何週間も魔力を吸引され続けた結果、手足だけではなく身体もガリガリになり、目にも隈ができていた。…あと目にも光がないね。
そうして体内にはいって魔力放出を始める。するとラベルちゃんは聖属性を放出しているうちに、身体にできた傷や傷んだ臓器などの修復が進んでいくのが感じ取れた。
僕らには毒そのものだけど、人間…ひいては聖属性を持つ修道女にとっては万能の秘薬なんだろう。しかも特注とか言ってたしね。
ある程度8割くらい放出し終えると、僕はラベルちゃんの口から出ていく。
「あとは僕の研究用として取っておこう。分身が消滅しない程度に分散して聖属性を移しておかないと。」
さっきまでは身体中全部が聖属性まみれだったからこんな芸当は出来なかったが、今は大部分が彼女に移せたから余裕を持ってられる…はずだと思ったけど、やっぱり辛い…。マジでダメージデカいよー。不覚だったよー。
「ん……。これはレム様の魔力…?」
「…レム様?確か聖女特製とか言ってた気がするけど、その聖女様とやらかな?」
ラベルちゃんに話を聞くと、教会…ズンホース教の総本山には3人の聖女がおり、癒し・祈り・破壊に分かれておりそれぞれの分野で活躍しているとの事。
ラベルちゃんは祈りの聖女に仕えていたみたい。
なるほど…教会ねぇ。スカム君とサップ君が行ったことあるんだっけな。そこら辺よく聞いてみようかな。
話を聞いたあとスライム形態から人間の姿へ戻った僕はラベルちゃんに見つめられているのに気付く。
「あ、タムニエル君に会わせる約束だったね。いいよー、ならちょっと部屋から連れてくるから、少し待っててね。」
執務室に戻って、飾ってあった彼の頭部の剥製を持ち出してラベルちゃんが待ってるであろう部屋へと行く。
そして彼女の前にタムニエル君の頭部を置く。
「この前君に言われて無事を確認しに行ったら、ゴブリンの住処でこうなってたんだよねー。まぁ畑の肥やしになっていないからそういう意味では無事だったよ?」
「あ…あ……いやぁぁぁぁ!?」
ラベルちゃんは泣き叫ぶと、もう枯れたと思っていた涙が次々と溢れださせていた。その後も彼の頭部を抱きしめたまま涙は止まってしまったようだが、声をおさえて泣いているようだった。
しばらくその様子を眺めていたが、一向に動こうとしないので執務室で作業をしに行くことにする。
「まぁ君には随分と世話になったね。これからも魔力は搾り取らせてもらうが…生きる希望を失った君は多分もう痛みに耐えられないだろうね。まぁ、僕がほんとに瀕死になるくらいにはなったし、一応助けてもらったことにはなるから最期に僕が叶えられる範囲で願い事を叶えてあげるよ?」
そう言って執務室へと向かう。一応、ここから執務室まで捕虜を入れている牢を何個か通過するが、部屋のドアにプレートまでつけて立派なものにしているから、何となくわかるものだと思っている。
瓶の中に分身を入れて、万が一分身が息絶えても聖属性の魔力が飛散しないようにしておく。いずれは教会とやらに所属している修道士と戦闘にもなりそうだ。ヴォルタ村ではそういう修道士は見ることが出来なかったが、ポロローズでは修道女や修道士と思われる男女がちらほら見えた。
僕がまだ現役だった頃は聖属性は確かにあったけど、人間にだけ発現するもので、魔王様も確かもってたな…。
まぁ、今はこうして水精霊と名乗ってはいるが…人間では無くなったせいもあって聖水がとても痛いし辛い。
コンコンコンッ
「はぁい。入っていいよー?」
「失礼します…ラベルです。」
「あー、ラベルちゃん。お願い事は決まった?まぁさっきもいったけど希望を失うともう魔力吸引は耐えられないと思うし…もうね、次で君は…」
「死ぬということでしょうか。な、なんとかなりませんか…?」
「んん?死にたくないってこと?」
そうしてラベルちゃんは事情を話し始める。
ラベルちゃんが暮らしていたのは王国西部の農村で育ち
父母の手伝いをしながら農作業を手伝っていたという。そんなある日、父親に連れられてきたタムニエル君に出会い、一目惚れをされたようで以降は彼の家に奉公に出されることになったという。
彼はラベルちゃんをいじめるメイドなどはすぐにクビにしたり、痛い目にあわせたりと…まぁ王子様だったそう。
ラベルちゃんが聖属性を発現すると、すぐに教会へと報告し、既にその時には王国騎士だったタムニエル君は専属騎士に立候補したそう。父親の口添えもあって専属になり以降もラベルちゃんを守ってきたようだ。
「わたしタムニエルが今まで護ってくれたから、辛いこととかなかったんですけど…。でも彼がいないとこういうことになるし…。でもあなたなら凄く強いですよね?私思ったんです。あのままいても教会で大成もしないだろうし、あなたに殺されても、今までに比べると魔力も還元できないし。
だからタムニエルに恩返しが出来なかった分かわりにあなたに恩返しさせて下さい!」
そうしてラベルちゃんは地面に頭を擦り付けて、まぁ…土下座をする。ラベルちゃんの格好は魔力吸引の効率に影響は無いので全裸にさせていたのもあり、なかなか淫靡なことになってる。別に僕にそういう趣味はないけどね…。
でもそれにしてもラベルちゃんどこかおかしくなっちゃったかな?理屈がおかしいんだけど…。僕が間接的に殺したようなもんなのに僕に恩返しがしたいなんて…。
「ラベルちゃん?一旦顔上げてくれる?」
「はい!」
ラベルちゃんの顔を見つめると、僕をキラキラとした目で見つめている。数十分前の光を失った目とは大違いだ。
「えっと、まぁ僕に恩返しがしたいのはわかった。
でもせっかく彼が辛い目に合わないように護ってくれてたんだ。わざわざ大変な道に行くことはないんじゃない?」
「いえ!彼がわたしを護ってくれている時に本来であれば経験するはずだったことを、あなたから受けているんです、普通の人であればこれくらいの苦境はあって然るべき筈。なのにわたしはずっと彼に甘えていました…。」
普通の人はこんな目にも合わないし、ラベルちゃん程の苦境にも合わないと思うんだよなぁ…。元からこういう子なのかな?あんまりタムニエル君にも意見しなかったんだろうなー。世間知らずというか…。
「わかったよ。君の願いは聞き入れよう。これからの魔力吸引は生命力まではやめとくよ。君本来の魔力量だけ吸うから。」
「はい!わかりました!ご主人様!」
「ご主人様はくすぐったいから、ナゴでいいよ。」
「ナゴ様!」
そうしてラベルちゃんから早速魔力を吸引する。
まぁ今後は控えて60~80%くらいにしようかな。とりあえず間をとって70%を吸収すると2100も取れた。
「んん?魔力量が増えてる…?ラベルちゃん何かした?こう…自分の経験になりそうなこと」
「はい!まず手始めに彼への未練を無くすために彼の亡骸を破壊してゴブリンさんにあげてきました!それでレベルが上がりました!」
「なるほどねー。まぁいいと思うよー。」
まぁ酷い目にあったけどその分こういう幸運が訪れてよかった。ラベルちゃんも魔力吸引してだるそうとはいえ、元気そうなので書類整理を頼んだ。整理っていってもページの端に番号を書いておいてるから、それを順番通りに並べるだけだ。なんというか…いい拾い物したなぁ。
その後、さすがにいつまでも全裸は可哀想なのでマリー管理下の他の捕虜みたいに簡素な服を着ることを勧めたのだが…。
「いえ!わたしはこうしてあなたに生かされている身です!それにこの中は暑いとか寒いとかもないし、今まで裸で何とかなってたので布の無駄です!以前ナゴ様も言ってたはずです!効率にはなんの影響もないと。ならば私は何もいりません。」
その後、捕虜の管理などもそのうち任せたいことや外に出る機会もあることを伝えて、なんとか腰巻は着てもらうこととなった。
女の子なので胸を隠した方がいいんではないかとナゴが伝えても、捕虜の管理をするのなら胸をさらけ出していた方が男の捕虜は気力を取り戻すだろうということを言われたので確かに現実的に考えるとそうだと思ったので、ラベルちゃんがそれでいいならとそれ以上は何も言わないこととした。
ただ着たくなった時用に一応、簡素な服は用意するのであった。
ラベルちゃんが正式に仲間になりました。
でもスカム達とは多分話さない。ナゴが会話の最中に名前を出したり小間使いをさせるくらいで、
メインはこの〖水精霊と魔力〗の話で登場させるくらいにしようかな。
まぁそのうち気分が変わって、方針も変わるから必ずしも確かなことは言えませんが…。
ラベルちゃんは正式に参加させるにあたって、ぶっ飛んだキャラにしたかったというか、元はホントにモブキャラの予定だったんだけど、書いているうちに動かすのが楽しくなってきたので、正式採用しました。
女の子らしい女の子だけど、どこか…いやだいぶおかしい感じの子を表現していけたらいいと思います。




