仮想敵への偵察
サップがみんなにハブられる話。
一応サップはNo.2のポジションなんだけども…。
戦闘とか探索とかでは役立つけど、日常パートではあまり目立たない感じに…。
ヴォルタ村襲撃より2週間が経過した頃、スカムは未だにヴォルタ村から奪ってきた物品の整理を延々と続けていた。スカムは元の世界でまだ穏やかに過ごしていた頃から物の整理にはこだわっており、他にもやり込むとそれに熱中する癖があるので周りからは自己中心的な男という認識であった。
今やそんなことは過去のことであり、理解のある部下が出来ているので、安心して整理をしていた。
人的資源の方はマリーとナゴに一任していたが、2人の捕虜の取り扱い方は、割と容赦ないスカムから見ても、少し引くレベルの扱いが見えたので、マリーやナゴのお眼鏡に叶わなかった資源もとい捕虜は一般牢へと収監されていた。
紙は荒いが、未使用の帳簿が複数あったので、それらに奪ってきた物品を記入し、それらをどこに持ち込む予定かだとかどこに持ち込んでいるのかを細かく管理していた。奪った物品は自分のモノであり、それらをぞんざいにどこかに行ってしまうというのはスカムの中では腹立たしい現象だった。
ちなみにスカムは物品や捕虜の所在は気にするが、用途は気にしないのでナゴが非人道的かつ人権無視な事をやっていたり、マリーが捕虜を壊してしまったことやゴブリンにあげた事なども報告さえしとけばOKというどこか基準がよく分からないものであった。
オットーは畑仕事に精を出しており、最近はサップの狩りの成果が芳しくなくとも野菜だけで食を賄えるくらいには成功してきていた。
サップはヴォルタ村襲撃あたりから、冒険者や騎士団の姿が増加して、前みたいに大量に狩った後にゴブリンに運ばせるという行為も出来なくなっていた。なので咥えることのできる生物を都度拠点に持ち帰るという地道な作業となっていた。
スカムに指示を仰いでも、相手にされず。
オットーに何か手伝うかを聞いたが、現状手は足りていると言われる。
ナゴやマリーは1人で管理しているようなのでオットーと同じ反応となった。
1人で何もしてないのも相当暇なので、偵察もかねて出かけることにした。
その際にデカい狼の身体は拠点に置いとくことにして、以前に迷宮内で事故が起きた際にゴブリンに死者が出たので、肥料用として埋める前にゴブリンを再利用することに。
拠点からポロローズの町までは、さほど遠くはなく普段の狼であれば数十分もあれば到着できる距離だ。日にちが浅いとはいえ死んだゴブリンは、左腕が潰れており、左の目玉も飛び出た上にそこから腐り始めていた。
両足が無事なのが不幸中の幸いだが、ゴブリンの足では目的地までは半日とはいかないまでも、それなりの時間はかかる。
町までの距離が半分となってきた頃になると、付近を哨戒任務中であろう騎士を3人発見する。まだ距離は遠いが、ゴブリンの身体では勝ち目がないことは明白なので茂みに隠れながら騎士たちを通り過ぎる事にするサップ。
騎士達の気配を読みながら、こっそり進んでいたが、ついうっかり小枝を踏んでしまった。
…パキッ
「今の音は?」
「俺が見に行ってくる。」
「お願いします。敵は不意をつくのが上手いらしいので、周囲は警戒しておきます。」
騎士の1人が枝を踏んだ直後、仲間との意思疎通もそこそこに素早くサップがいる地点を確認に来る。
サップはすかさず地面に伏せて死んだフリを行う。
「…ゴブリンの死体か。ふむ…」
すぐに立ち去るかと思いきや、しばらくその場に留まっていた。サップはうつ伏せになっているので、気配を読んだ限りではまだすぐ近くにいることくらいしか分からなかった。
そうして死んだフリを続けていると、首元に浮遊感がした。
「ほんとに死んでいるのであれば、こんな所見はおかしい。音も気のせいでは無いはずだ。だとすればアンデッドである可能性が高い。術者を探さなければな…。町を襲った者と同一犯の筈だ。」
(ちっ!ついてなかったな…。第1師団の中堅騎士か…。教会総本山のお膝元であるポロローズの町の襲撃だからな…当然っちゃ当然だ。)
宙を舞うゴブリンの首から騎士を見下ろして、そんなことを考えるサップ。
ゴブリンの胴体の方も念の為なのか騎士が詠唱した炎魔法によって焼却されていた。
「ゴブリンのアンデッドと思しき死体を発見した。先のポロローズ襲撃の犯人と推測される術者が周囲に潜んでいる可能性も考えうる。」
「…1度ヴォルタ村に戻りますか?」
「出来ればポロローズへ戻りたいものだが…。警備隊と折り合いが悪いみたいだからな。ヴォルタ村の壊滅報告で元々嫌われていた村とはいえ、騎士団の威厳が落ちたのも真実だ。あちらの町の問題は警備隊で解決する方向で良いとは思うが…付近の哨戒任務の為に物資確保の観点でポロローズの方が便利なこともあるからな。」
「ヴォルタ村は壊滅的被害。村は解体されて今後は第1師団の駐屯地となるそうですね。」
ふむふむ…。これはいい事を聞いたな。危うく騎士がいなくなった頃合を見つけて、取り残した物資を取りに行こうとしてたぜ。
駐屯地になるのであれば、小隊だけではなく本隊が来てもおかしくは無い。
さすがにヴォルタ村の広さでは足りないから、この機に周囲を開拓するかもしれないな。
「レイモンド。お前は1度ヴォルタ村に戻って、現状の報告を頼む。俺とジェイはこちらに待機しておく。」
「ということで…レイモンドよろしく頼んだ。」
「はい!わかりました。」
アイツらの関係性を見る限りでは、2人が敬語を使っている奴はおそらく分隊長だろうな。小隊から更に別れたのが分隊だが、さっきの洞察力といい中々の実力みたいだ。
分隊となると最低人数が確か10人の筈だから、後7人いておかしくはないが…。あんまり考えてばかりも仕方がないし、この騎士たちからこれ以上情報も聞けそうにないか…。
本当だったらポロローズに偵察に行きたかったが、今の情報をスカムに伝えなきゃなー。
俺は来た道を霊体のまま戻ることにする。はっきりいってゴブリンの姿で動くよりかは楽だ。透明なはずなのに何故か木やらを通過は出来ないが、走ったことにより息切れは早々起きない。
起きないのだが、その代わりにあまりにも長時間かつ激しく動くと身体全体がむっちゃだるくなる。なので、程よく休憩して拠点に戻ろう。
拠点に戻ると、既に日が傾き始めていて夕日がもう少しで出そうになっていた。俺が館の前が見える距離まで来ると、夕飯の前でもないのにスカム含め一同勢揃いだった。
「どした?」
「どした?じゃねぇ。どこいってた?」
「んー。偵察?」
事実を伝えるとスカムは不機嫌な顔になる。だって事実だから仕方ない。
「まあまあ…。スカムくんも露骨に不機嫌にならないで。さてサップくん、偵察というのだから収穫はあったんだよね?ゴブリン姿じゃなくて霊体で戻ってくるぐらいだ。交戦したことは明白だ。」
「んー、交戦ってかなぁ…。ほぼ一方的だったが…。」
さっきまであったことをありのまま話していく。ヴォルタ村が第1師団の駐屯地になりつつあることや切れ者の分隊長がポロローズに行くまでの道を哨戒していること。まぁ、これはその日毎に別の場所にいる可能性がある上、必ずしもそいつがいるとは限らないし不確定要素であることを付け加える。
「余計なことをしやがって…と言いたいところではあるが、持ち帰ってきた情報もなかなかだ。途中で帰ってきたのも好感が持てる。危うくゴブリン共をマリーと一緒に送り出すところだった。
この間使ったアジトもとい洞窟も今現在占拠されてるか調べられてるかもしれん。余計な被害を抑えられたから単独行動は大目に見とこう。」
「次に出かける時はオットーにでも言って、出かけることにするな。ほんとに悪かったとおもってる。」
「どう見ても思ってない顔だね〜。まぁ、スカムくんが言った通り被害が抑えられて良かった。にしてもいよいよ騎士団も本腰を入れてきたのかもね…。僕の予想ではまだまだ戦力は投入されるとは思うよ。」
いつの間にかサップの説教は後回しな流れとなって、スカムとナゴでこれからのことについて話し合っていた。
オットーも話になんとか話について行こうとしたが、一応スカムとナゴは同郷なので、地球で使われている専門用語なども言われるとオットーは話が全く分からず、諦めて夕食の準備に取り掛かることにした。
マリーはまだオットーに比べると理解できる方ではあったが…せいぜい魔王様も似たようなことを言ってたなー。意味は分からないけど位の認識だったのでオットーの手伝いをしに席を外していた。
サップは2人の話を黙って聞くことに徹していた。
並の騎士よりかは幾分頭が回る方だったので、横文字を使われても何となく意味を察して聞いていた。
その後夕食が出るまでスカムとナゴは話をしていたのであった。
サップは王国の並の騎士の中では普通に強い部類でした。(並の騎士基準)
まぁ、本人の出自が一族がほぼ処刑されたりお家取り潰しになったりして…冷遇されてた感じ。
並の騎士よりかは普通に強い感じ。
戦闘技術は中の上(上の下まではいかない。)
まぁ、立ち回りが上手い感じかなー。冷遇はされてるけどそこまで嫌われないようにしていた感じ。




