町への偵察
ナゴさんは便利です。困ったことがあれば、大体ナゴさんが解決…?まぁ知恵袋みたいなもんです。
ナゴの祠が完成してから暫く経ったある日、サップが気になる報告をしてきた。どうやら使い魔の蝙蝠…フレーダーに町周辺の偵察を継続的にやらせていたらしいが、何やら動きがあったらしい。
「視覚を共有して魔力が続く限り観察してたんだが、そこで仮設ながらも正門が完成していた。それと各方面から物資が運ばれてきている。大小問わず商人連中もな。…警備は街道に集中している。森の中にいる分には安全だろ。」
かなり派手にぶっ壊した筈だが…間に合わせの素材で固めてるだけか?
「このまま潜伏するか、強盗するか、迷うところだな。警備の度合いにもよるがこの間の比じゃないだろ?」
「街道に集中していると言ったが、何も道の側に綺麗に並んでるわけじゃない。奥に行かない程度だが森の中も巡回している。」
ここは認識はされず人も立ち入ることが出来ないが森の奥地であることは確かだ。だから警らの人間はまず来ないだろう。そうなると…冒険者の動向が気になるな。
警備隊や騎士団が森の中にまで派遣できないとなると、冒険者ギルドの方に森のパトロールくらいは依頼していてもおかしくない。この間、ナゴが捕まえてきた冒険者のこともあるしそこら辺は知りたいもんだ。
「…一度町に行ってみてはどうかな?町に入る手続きは厳しくはなってると思うけど、一度行けば次に行くときは楽になると思う。」
「何でだ?」
「人の行き交いが増えてるのに、審査に毎回時間をかけたら渋滞を起こすだろう?だから一度訪れた人間に対しての入り口と初見さんの入り口とで分けてると思うよ?」
ナゴの言い分ももっともだな。だが行くメンバーはどうする?俺はまた変装すればいいが、サップとオットーは警備隊長に顔が割れてる。そうなるとマリーかナゴかになるが…。
「マリー、その格好なんとかしろ。」
「ムーちゃん。乙女にそんなこというの?」
お前のどこが乙女だ。だがこいつの外見は服装を抜きにしても怪しいからな。審査で確実に止められそうだ。そうするとナゴか…。
「ん?僕ならいいよ。顔の形は変えられないが髪の色くらいなら変えられる。」
ナゴはスライムから元の姿に戻ると、顔こそ変わっていないが髪色は茶色になっている。それと何だか背丈が前に人型になったときよりかは、少し小さくなっている。
「君と従兄弟の設定で行けば、バレる危険性も薄まるだろう?兄弟だと顔のつくりはともかく顔自体は似てないからね~。従兄弟なら多少は誤魔化せる。」
俺も再び髪を茶色に染めて、ナゴと並んでみる。
「確かに従兄弟だと通じるな。」
「バッチリッスね!でも名前はどうするすか?何か偽名を考えないと。」
町に入るときに名前も聞かれるだろうが、何処から来たのか、町に入る目的とか色々聞いてくるかもしれんな。迷宮に浮かれて片っ端から冒険者を捕獲したから少なくともあの町の冒険者ギルドは厳戒体制だろう。
「サップ。町に徒歩で行けそうな距離の村を教えてくれ。そこから来たことにする。」
「お前…いくつあると思ってる。数十はあるぞ。だが一番信用性が高いのは、ヴォルタ村だろう。
…貴族出身騎士の落し胤がたくさんいる村だ。」
村ぐるみで性産業か。なら俺とナゴは血の繋がらない兄弟でもいけるんじゃないか?
サップから大体のあらましを聞いて、ナゴと共に拠点を出発した。案の定、冒険者が多数うろついていたが何とか避けつつ拠点から数キロ離れた街道付近まで到着した。
そんで、改めてナゴを見てみると冒険者が身に付けていた皮鎧を装備しており、それと背中に弓まで引っ提げている。
俺はマリーお手製の毛糸の服だ。機能性も充分だが何故か防御力もある。マリーが言うには弓矢三本くらいなら、痛いで済むらしい。
「お前はどんな設定だ。従兄弟じゃなかったのか。」
「村からの出稼ぎ冒険者ってとこかな。名前はドム。名字は…」
「クォーツだな。それで俺の名前はフィンだ。サップ曰く、あの村じゃクォーツ姓は複数いるらしいからな。」
「万一、調べられても平気だね。おや?そろそろ街道に出るけど…見張りが一人いるな。このまま森から出てきたら怪しまれるけどどうする?」
こんな遠くにまで派遣してるとはガチで警戒しまくってるな。だが、周りに他の見張りは見当たらない。人通りも今、馬車が1台通ったのみだ。
「殺れるか?」
「死体の処理も面倒だし、何より今後の警戒強めることになるだけさ。」
「なら注意をひくか。火炎よ、出現せよ。
『フレイム』」
見張りの後方に炎が出現する。場所を幾つか変えながら炎を出し続ける。最初の炎のときに見張りは対処に動いており、街道から目を離した。
その隙に街道へと入り、さも今来たかのように見せかける。少し強引だが、いけるか…?
「おい!そこの二人止まれ!」
まずいな…。事を急ぎすぎたか。
「先程までいなかっただろう。あの炎は貴様らの仕業だろう!」
「え?知りませんよ。」
否定したが、奴は腰の剣に手をつけている。これは問答無用で殺る気らしい。よく見てみると騎士団の紋章をつけている。後ろからじゃ気付かなかったが、騎士とはな。
「覚悟し…ぐぁ!」
騎士が剣を抜いた瞬間、空中から飛んできた白い塊が騎士の頭部を直撃する。頭から出血しながらも俺らをお構いなしに剣を振り回し始める。
「あれは…フレーダーか?」
「援護してくれたようだね。それと援軍も来たようだ。」
草の陰に隠れてゴブリンが10体ほどいる。剣を振り回している騎士に対して襲うタイミングを待っているようだ。
「あら?心臓狙ったのに…。」
ナゴが矢を放つも、剣の風圧により軌道がずれ腹部に命中する。鉄製の鎧ならともかく軽装だったため腹部から血が滲んでくる。ナゴに視線を向けたそのとき、騎士の左腕は胴体から切り離された。次いで頭には短剣が深く刺さった。
「これならゴブリンに襲われたことに出来るね。アリバイ工作のためにゴブリンには出血してもらおうか。」
ナゴの言葉を理解したのかどうか知らんが、ゴブリン二匹が肩車をして、上の一匹が騎士の剣を持つと騎士の頭から短剣を抜こうとしていた仲間を切り裂く。鼻から上を両断されたゴブリンは仰向けに倒れた。
「仲間をも切り裂くとは…。」
「仲間一匹よりスカム君への忠誠を優先させたんだろう。一族を繁栄させるきっかけを与えたからね。スカム君はさ。」
どういうことだ?そんなもんは与えた覚えはねえが。あると言えばゴブリン共に女捕虜を繁殖目的で与えただけだが…。そんなポンポン増えるわけでもねえだろうが。
「スカム君、ゴブリンの成長速度は速いよ?種類によるけど、働き手…所謂普通のゴブリンは生まれてから最低3日で歩行可能だ。一週間もあれば狩りも出来るね。
一ヶ月もあれば人間一人に対して40匹は増えると思うよ?500年前もゴブリンはなかなか抑えがきかなくてね~。」
「とりあえず街道を進むぞ。他の通行人が来る前にな。この時間は人通りが少ないとはいえ、来る可能性だってある。」
陽が傾いてきているし、早く町に着かなきゃ閉め出されるだろう。何とか日没までには着いておこう。
「スカム君、どうやら凄い混んでるみたいだ。大行列さ。」
陽がほぼ沈み、辺りが暗くなった頃何とかたどり着いた。だが正門前は大行列。先程見た馬車が前に並んでいる。
「おーい、そこの少年たち!馬車用の列に並ばないでこっちに来てくれ!」
声のした方向に視線を傾けると、町の警備兵がこちらに向かい手を振っていた。
「どうやらあっちみたいだね。」
「あっちの列はそれほど並んでないな。これなら町中にすぐ入れそうだ。」
個人用の入り口も前に並んでいるのは、冒険者や出稼ぎと思われる村人といった奴等だった。対して待たずに俺らの番が来た。
「ではまず、名前と出身、町に入る目的、それと所持品を確認させてもらう。」
「ドム・クォーツです。こっちは従弟のフィン。出身はヴォルタ村で、俺は冒険者になるため…というより出稼ぎかな?フィンは村に植えるための種を買い付けに来たんだ。俺らの村は特殊なもんでね。」
よくこうも口が回るもんだ。所持品検査は…金を大量に持ってきたことを追求されない限りおおむね大丈夫だろう。
「娼村か…。ならこの持ち物も普通かな。あそこは異質だからね…。農業もやったところで上手くいくかどうか分からないよ?」
「それでもやらないよりはましです。」
あー、死にてぇ。こんなバカガキのフリはいつやっても疲れる。
町に入ると、思った以上に復興が進んでいた。大通りは粗方修復されており、今やっているのは修復というよりかは強化といった方が適切だろう。夜になるというのに作業をしていた。
「ご苦労なこった。また近い未来に壊されるってのに。」
「町中でそういうことを言うもんじゃないさ。じゃあ、僕は冒険者ギルドとやらに登録してくるよ。」
ナゴはギルドの方へ気楽に歩いていった。ちゃっかり金も登録料分、懐から消えている。
俺も俺で前回町に来たときに騙されてくれた商人に会いに行くとしよう。どうやら予想以上にヴォルタとかいう村は憐れみの目を引くらしいから、次も活用させてもらおう。
ナゴさんの戦闘無双はしないつもりですが、冒険者相手なら基本的に負けません。
Bランクとかになってくるとさすがに勝てませんが逃げ切ることは可能です。
知人からの疑問解決をここに書かせて頂きます。
「スカムたちの強さの順はともかく、身長的にはどういう順番?正確な身長とか決まってるの?」と。
決まってます。ただそこら辺は明記するかどうか迷ってました。せっかくなので登場人物紹介にナゴさんを加えるのと同時に、そこら辺も書いておきます。




