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竹があった。
竹は輪切りにするだけで、コップや水筒、難なら食材を入れて蒸したり煮たりもできるという万能素材だ。
……でも、切るものがない。
ナイフも包丁ものこぎりも斧も刀も剣も……。
ドワーフが作る金属全否定なエルフの村だから。
……不便じゃないかって?
私にはどうしようもないけど、風魔法が使えるエルフがウインドカッターですぱすぱ切るから問題ないんだよ。
……なんせ、寿命が1000年もあるエルフだから、魔法は年々上達していく。年を積み重ねると、300年もたつと自由自在みたいだ。
300年……。人間なら死んで生まれ変わってまた死んで生まれ変わって4週目に突入するころだ。
人間の場合は魔法の達人になる前に、さっさと包丁使った方が早い。
……私はどっちが早いかでなく魔法が使えないんだから選択肢は一つ。
刃物はいる。
竹を見上げる。それからはぁーとため息一つ。
石器を作るしかないんだろうか。
動画で、石斧を作ったり石包丁を作ったりしているのを見た記憶もある。
2,3日頑張ればできないこともないのかもしれない。
「今は竹は諦めよう。たけのこの季節を楽しみにしておこう」
さっさと昨日の場所に移動。
そっと石のくぼみを見ると、ちゃんと片栗粉が下に沈んでいる。
上の水を持ってきた木の器ですくって捨てる。
何度か繰り返して水が少なくなったところで、笹の葉で作ったスプーンもどきで、水をできるだけ取り除く。
「あとは天日で乾燥させれば片栗粉の出来上がりだ!」
白く沈殿しているドロドロのものを、大きな葉っぱの上に薄く広げて乾かす。
昨日のカタクリの群生地に行き、 昨日と同じように作業。
今日はあらかじめ絞るためのハンカチを下に敷いた。
ハンカチって呼んでるけど、ただのぼろ布の切れ端。
昨日より太い、バッドのような棒で、石の上で 鱗茎を叩きつぶしてからくぼみにいれすりつぶす。水は器を持ってきたので昨日より少しだけ運びやすくなった。
「はぁー、ちょっと休憩」
今日は昨日より短時間で作業が終わった。沈殿するのを待つ間に、次のカタクリを持ってこようかと思ったけど喉が渇いた。
「……生で飲んでも大丈夫かな?」
目の前には池。水はある。
いや、やっぱり水分の多い木の実を探した方が安全?
いや、大丈夫。きっと、大丈夫……。
だって、1000年生きるってことは、寿命が長いだけでなく、死ににくいってことだよね?病気やケガに強くなければ、無菌室なら1000年生きられますが、野生では300年位生きられればいい方ですみたいなことになるはずだし。
というご都合主義理論を発揮しつつも。
「この水、飲んでも大丈夫かな、精霊様……」
小首をかしげて尋ねてみる。
額を撫でるように風が抜ける。
うん、問題ないいただきました。
ごくごく。
手ですくって飲むなんて上品なことはしない。頭を池に突っ込むようにして飲む。
ストローが欲しい。
ふと、見上げると目の前に……。
「ぎゃーっ!ハチの巣っ!」
慌てて立ち上がろうとしてしりもちついて四つん這いで逃げる。
はぁ、はぁ。びっくりした。
距離を取って様子をうかがっても、蜂は飛んでいない。
あれ?
恐る恐る近づいてみると、ハチの巣に見えたものは……。
「ハスの実だ!ハスの実!初めて本物見た!本当にハチの巣みたいで気持ち悪いっ!」
あれだよ。ハチの巣、ハチス、ハスって名前の由来っていうくらいだから似ていて当たり前というか。
「ハスの実って食べられたよね?」
手を伸ばしてハスの実を取る。
ハチの”巣”の部分じゃなくて、ハチの幼虫の部分、丸っこいところを抜き出して割って中の実を食べる。
「んーっ、んーっ!」
おいしい!
めちゃくちゃ味のうっすいリンゴというか、生で食べるトウモロコシというか……。
じゅわりと出てくるほんのり甘い汁に、シャクシャクした食感。
めちゃくちゃ味が薄くても、硬くて味気ないパンばかり生活だった私の口には特別おいしく感じる。
もちろん他のエルフは甘い木の実とかも食べてるだろうけど、私には当然もらえないからね。
しかも、ハスの実って、乾燥させるとナッツみたいになるって聞いたことがある。
保存食になるってことだよね。
よし。収穫しよう!
そうしよう!




