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ヒュンッと風魔法に乗せて勢いのついた石が耳を掠る。
「痛っ」
とっさに耳に手を持っていくと、ぬるりと棚暖かい感触がした。
切ったんだ。
「うわー、エルフの大事な耳に怪我しちゃったのか?大丈夫かぁ?」
ニタニタ笑いながら、10歳になる子供のエルフが私の横に立つ。
「ごめんごめん、エルフが立ってるの、見えなかった~」
石を投げた12歳の子供も来た。
「だめじゃない、気を付けないとさ、大丈夫、耳を見せて」
そして、異母妹が私の耳を見る。
「まぁ、大変、耳が半分ないじゃない!」
「ほんとだ、なんだこの短い耳は、まるで人間みたいだ」
「こいつ、本当にエルフなのか?こんな短い耳のエルフがいるわけない」
「気持ち悪い、あっち行けよっ!」
いつもの茶番だ。
次々に投げつけられる石。
風の精霊の加護を受け、風魔法の特異な異母妹が石に風魔法で勢いをつける。
子供の力で投げた石も、まるで「弾丸」のようなスピードで私に向かってくる。
手足を貫かれる痛みを想像して体が硬直する。
「やめなさいっ」
子供を叱咤する声と、横から飛んできた風魔法。
私へ向かってきた「弾丸」のような石が弾かれて飛んでいった。
助かった……。
私を助けてくれたのは、義母だ。
平均寿命が1000歳のエルフではまだ若い300歳。耳はまだ上向きでピンとしている。
母が亡くなり、村長の嫁の座に就いた。母が出来損ないの私を産んでから父と関係を持っていた義母。
「何度言ったら分かるの?村で血を流せば、獣が寄ってくるでしょう?」
義母が私の腹を蹴った。
「やるなら村の外でやりなさい」
地面に倒れこんだ私の腹をぐりぐりと義母が踏む。
「汚らしい。短い耳。あんたの母は人間とでもこっそり関係を持ったんじゃない?」
義母がしゃがんで私の顔を上から見下ろした。
ゆがんだ表情。いくら、美形ぞろいのエルフの中でも、村一番美しいと言われる義母でも、不愉快にゆがんだ表情は醜いのだなと考えていたら、耳を掴まれ引っ張られた。
「こんな短い耳のエルフ、吐き気がする!精霊にも見放され魔法もろくに使えない出来損ない!村をうろつくなって言ったでしょう!」
ばしっと、頬を打たれた。
「あの、拾ってきた薪を届けに……」
と、言い訳をしたものの、毛虫を見るような目を義母は向けてきた。
薪を拾ってきてありがとうなんて言葉が聞けるとは思ってはいない。
理由があって村の中を歩いていたから許してほしいと思って口にしただけだ。
「見るのも汚らわしいと言っているでしょう?姿が見えないように皆が寝てから運びなさい、分かったわね」
「も、申し訳ありませ……」
義母は私の謝罪など目に求めずに、異母妹に声をかけた。
「よく村をうろついているのを止めたわね、いい子よ」
「ふふ、そうでしょママ」
「でも血はダメ。あんな穢れた血が村で流れたら、森の精霊たちが怒るに違いないわ。今度は水でもぶっかけてやりなさい」
「分かったわママ。うんと素敵な水を用意しておく。あんたたち頼んだわ」
異母妹が取り巻きの男の子2人に声をかけた。
村はずれの人目につかない場所に私の住む掘立小屋がある。
小屋の中に入って、ポケットから、固くなったパンを一つ取り出しかじりつく。
唾液でゆっくりふやかしながら固いパンを食べる。
「どうしよう……」
森で薪を集めて届けることで、食べる物をもらっていた。
寝てから、置きに行くことになれば、食べ物はもらえなくなるかもしれない……。
明日からどうしよう……。
半分だけ食べたパンをポケットにしまい、薪を拾うため、森の中に入っていった。




