甘やかされ令嬢は、嫁ぎ先の公爵家で愛される
朝から嫌なことばかり。侍女がいれたお茶はぬるいし、朝食は嫌いな物が出ていた。ちょっと怒っただけで侍女頭に注意されるし。
アリスはドリス公爵家の娘でピンクブロンドにピンク色の目。兄が2人いて少し年が離れているため可愛らしい容姿も相まって蝶よ花よと育てられた。
好きな物を出さない侍女と調理番が悪いのにと思いながら部屋でだらだらと休んでいた。お父様が呼んでいると侍女が声をかけてきたので向かう。
「お父様アリスです。」
お父様の執務室へ行くと、ルッツ公爵家の嫡男に嫁入りが決まったと告げられる。
ルッツ公爵家の嫡男といえば、騎士団に在籍する少し長めの銀髪を1つに束ね青い瞳にスラッとした姿甘いマスクで『微笑みの貴公子』と有名な方だ。
騎士団を退団し公爵家を継ぐ準備に入る事になったのだと。そして家格や年齢を考え私に白羽の矢が立ったらしい。
「嫌です。お断りします。」
朗らかで優しそうに見えるリオ様は他者に厳しく甘えを許さないと聞く。遠くから見たことはあるがドス黒さが透けて見えていた。絶対窮屈な生活になる。あんな人と一生添い遂げるなんて嫌だ。
お父様は決まった事だと聞いてくれない。いつも嫌だっていうと聞いてくれるのに!お兄様にも頼んだが優しく頭をなでるだけで味方になってくれない。お父様もお兄様も大っ嫌い!
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「ルッツ公爵家へようこそ。リオ=ルッツです。これからよろしくね。」
あれから何度も抵抗したが準備段階として共に暮らすようにと、早急に送り出されてしまった。リオ様はにこやかな顔で部屋まで案内をしてくれるが、やはり背後からドス黒い空気が出ている。よろしくされたくない。生まれ育った家に今すぐ帰りたい。
リオ様はあと少ししたら夕食を一緒に食べましょう。それまでゆっくり過ごして下さいと部屋を出ていった。
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「どうしました?」
出された物を見つめていた。私は嫌いな物が出ていたため食べたく無い事を伝える。どうせ怒るんでしょと思いながらリオ様を見ると、思案顔だ。
自分達の為に一生懸命作られた物であること、出された物は我儘言わずに食べる事、意外と美味しいよと話してくれた。
「リオ様美味しいです!」
嫌々ながら食べてみると、思っていたより美味しくてぱくぱく食べてしまった。
ふと目線を感じ見るとリオ様が優しく微笑んでいて、ドキッとしてしまう。さすが『微笑みの貴公子』恐ろしい。魅了されないよう気をつけようと密かに決意する。
それからも何かあるたびに、話をしてくれ分かるように説明してくれる。その度に優しく微笑んでくれる。もうドス黒さは感じない。リオ様が他者に厳しいのは優しさなのだと気づいた。
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「夜会ですか?」
ある日王家主催の夜会に伴うように言われる。リオ様が退団し公爵家を継ぐ事の御言葉があるらしく、婚約者である私も行かなくてはダメなのだ。
「ドレスとかはこちらで用意するので、当日楽しみにしててくださいね。」
ニコッと微笑みながら言われる。久しぶりにドス黒さを感じたが気の所為だろう。好きなデザインのドレスを用意できないので少し不満だったが、初めて一緒に行く夜会に胸を躍らせる。
「嘘でしょ」
当日ドレスを見て私は呆然とする。
え?これ?青色に銀の刺繍、青色のアクセサリー…こんなに相手の色尽くし恥ずかしいやつじゃない?
チラッとリオ様を見ると気にしてない様子だったので、公爵家の方々が張り切ったのかな?と思うようにした。
「アリス嬢綺麗だよ。」
「ありがとうございます。リオ様もとても素敵です。」
リオ様が眩しい。白の騎士服。絵本から飛び出してきた王子様のよう。よく見ると私の色であるピンクがあしらわれている。お互いラブラブのようで気まずい。
「行きましょう。」
優しい笑みでそっと手を取り歩き出す。
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「お兄様!」
夜会でお兄様に出会った。
ある程度夜会が進み、知り合いに話しかけられたリオ様と別れたところだった。邪魔になるのであちらにいますと離れようとしたら、何故か側にいるよう言われたが大丈夫ですと言い離れた。
久しぶりに会うお兄様は可愛いと褒めてくれて、大事にされてる様で良かったと安心していた。なるほどこの衣装にはそういう狙いもあるのかと腑に落ちた。
「嫌なら連れ帰ろうかと思っていたんだよ。」
お兄様と話をしていたら、急に後ろから抱きしめられる。リオ様のシダーウッドの匂いがふわっとした。
「帰しませんよ。アリスは私のです。」
リオ様がお兄様と対峙している。
お兄様が笑いながら、愛されてるな。仲良くするんだよ。と私の頭を撫でながら去っていった。そっと抱きしめられていた腕が離される。
「リオ様?私ドリス家には帰りませんよ?」
リオ様の方を見ながら伝える。リオ様は真っ赤だ。
「アリス嬢帰りたいのかと思って…私は面白みもないし口やかましいし…好きで大事にしたいのに上手くできないし…」
「え?私の事が好きなんですか?」
「好きだよ。私の色尽くしにして、牽制して…本人は全然気にしないし…私ばっかり焦って。」
赤くなった顔を両手で隠し、私だけに聞こえる声で言われる。
なるほどリオ様の希望でこの衣装になったようだ。愛おしさが溢れギュッとリオ様に抱きつく。
「先程みたいにアリスと呼んでください。一緒にお家に帰りましょ。」
「アリス大好きだよ。」
ギューと抱きしめられた。可愛いリオ様。最初は嫌だったけど、リオ様となら一生添い遂げるのも悪くないと思った。
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