【短編完結】幸せに結婚を迎えた二人の真実の愛の物語
満月の夜。
二人の門出を祝うため、国中の人々が祝宴の席へと集まっていた。
神々に祝福されたかのような星空が、地上を白く、清らかに照らしている。
「新郎、あなたはここにいる新婦を。病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も。妻として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦、あなたもまた……夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「では、お互いに誓いの――」
神父の言葉が途切れた。
天頂に達した満月の光が、ステンドグラスを抜けて新郎を直射する。
「あなた、どうしたの? えっ!? 体から、毛が……」
「ワオーーーーーーーーーーーーーーン!!!!」
愛の誓いを立てたその口から漏れたのは、獣の咆哮だった。
タキシードを突き破り、牙を剥く狼男。場内は一瞬で恐怖のどん底に叩き落とされる。
「あぁーーーー!!!! 狼男よーーー!! 誰か、殺して! こいつを殺してーーー!!!!」
さっきまでの「慈しむ」という誓いはどこへ行ったのか。
新婦の悲鳴のような殺害依頼に応え、警備していた衛兵たちの槍が一斉に新郎を貫いた。
「グサッ!」
永遠の愛を誓ったはずの祭壇は、一瞬にして新郎の鮮血で赤く染まった。
これぞ、二人の「真実の愛」の物語である。
(完)
幻の続話。リライト特別超過ep。2019→2026。
惨劇から一夜明け、血の匂いがわずかに残る城の裏手。
昨晩の衛兵が、丸められた「毛の塊」を新婦の前に放り出した。
「ほらよ。あんたの旦那だった『狼』の毛皮だ。一応、形見だろうと思ってな」
「え?」
新婦は、昨日まで愛を誓い、口づけを交わした男の一部を、ゴミを見るような目で見つめた。
「だから、狼だよ。綺麗に剥いでおいてやったぜ」
「……あぁ、いらない」
「マジかよ。最高級の毛並みだぜ?」
衛兵の驚きを余所に、新婦は冷たく言い放つ。
「狼と寝てただなんて、さっさと忘れたいの。そんな汚らわしいもの、視界に入れないで」
「……。ふん、そんなもんか」
「そんなもんよ」
彼女は一度も振り返ることなく、新しい「人間」の婚約者を探すために歩き出した。
〜 END 〜




