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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第1部6章『悲しみに、さようなら』???-失技の衛星
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#7

 G15に聞くとアルカンシェルとG15の情報は同等のものらしくて、惑星情報自体は沢山登録されているらしい。でも、行きたい場所の座標が判らない。どうしよう……一度アルカンシェルに登録されている星へ行って、そこで最新のデータを入手する?

 普通なら大変な恒星間航行だけど、アルカンシェルならすぐにたどり着く事ができるはず。でも、初めての航行は……アイリスのために旅をしたい。頭の中で思いつく可能性を検討する。そうか、あれなら……


「アルカンシェルはC3のデータを読める?」

『肯定』

「なら、外の墜落船から航路情報を取ってくる」

『状況不明』


 そういえば最初に話したときから思ってたんだけど、G15は墜落の事を知らない様子だ。どうしてだろう?

 疑問に思った私はG15に話を聞いてみたけど、アルカンシェルや私について回答していた時と違ってどうも歯切れが悪く「状況不明」を連呼する。何かを隠しているというよりも、本当に外部の情報から遮断されているようにも思える。

 ……まぁ、外の荒廃した様子を考えれば、まともなセンサーやカメラが残っているとも思えないけど。それでも得られた断片的に得られた答えを組み合わせると……トラクタービームというとんでもないモノが存在している事が判った。


「トラクタービームって、引っ張るビーム?」

『肯定』


 もう驚くのを通り越して、呆れるしかなかった。古代の人達は何でも持ってるんだなぁ……。トラクタービームというのはホロムービーで時々見かける「物体を引き寄せる光線」の事だ。そんな冗談みたいなものフィクションの中にしか存在しないと思っていたけど、まさか実在していたとは。

 いや、重力を操って船を飛ばす技術があるぐらいだ。原理は判らないけど、遠くの物体を引き寄せる事ぐらいは容易にやってのけるんだろう。

 もしかして古代の人達って、ホロムービーで見た事のあるギャグシーンの「トラクタービームを使った反物質爆弾の押しつけ合い」とかをやってたのかもしれないね。もちろん、遊びではなく戦争で。


 さらにG15に話を聞くと、航宙船の修理ドックも兼ねていたこの施設は自律航行不能な船を誘導するために3段階のトラクタービームを切り替えて遠距離から船を誘導着陸させる設備を持っていることがわかった。

 長距離ビーム、中距離ビーム、至近距離ビーム。ただ長距離と言っても惑星間の距離ではなく、あくまでもこの星にある程度近づかないと作動しないらしいけど。


 ともあれ、航宙船の消失事故はトラクタービームによるものらしいと言うことは間違いないだろう。航行中の船がトラクタービームにつかまり、ここに墜落したんだ。

 でも私が出発したステーションを発着する全ての航宙船が遭難している様子はなかったし、特定航路だけが遭難するということはトラクタービームの効果範囲はある程度限定的だったんだろう。G15が言うには「この星に向かっている航宙船のみを捕捉」していたらしいし。ただ、問題はその3種のうちで着陸を司る至近距離ビームが――。


『システム接続エラー:TB01が発見できません』

「動いてるかどうか、判る?」

『否定』


 動作状況が不明。たぶん動いていないんじゃなくて、制御を外れて暴走しているような状態だと考えれば……状況が理解できる。つまり中・長距離ビームでこの星に引き寄せられた航宙船は、最終的な着陸を担うトラクタービームの暴走で地面に叩き付けられるんだ。そう考えないと、あの無数の残骸に説明が付かない。


「どうして引き寄せてるの?」

『セレスティエルを招待するためです』

「手当たり次第に?」

『船舶の識別が不能、可能性がある船舶を全て誘導』


 おそらくだけど、G15達のシステムと今の船のシステムが違うから飛んでいる船の識別や通信が出来ないんじゃないかと思った。何せ私達の船はC3通信だけど、この施設にあるC3はアルカンシェルのものだけなんだから。

 ……ということは、私が偶然ここに墜落しなければ今後もこの星に船が落ち続けたってこと?私を呼ぶためだけに、多くの人を犠牲にしたって事だよね……。起きたことはどうしようもないけど、せめて今後の犠牲は防がないと。


「G15、もう誘導は不要?」

『肯定。本施設は残存任務を完遂』

「じゃあトラクタービームは切って」

『了解。TB02およびTB03停止、TB01接続不能』


 少し誇らしげにG15は任務完遂を告げた。いや、でもあなた無数の船を墜落させて多くの犠牲者出してるんだからね?なんで誇らしげなのよ!って文句を言いたかったけど、言っても「質問内容が不明」とか返されるだけなのは判っていたので、心の中だけにした。

 中長距離のトラクタービームが止まれば、よほどのことが無い限り今後墜落事故は発生しないだろうし。


 航宙船墓場のようになっている地表の状況が私のせい――いや、私に責任はないけど、でも私を呼ぶためだと聞いて、そこへ航路情報を探しに行くことが少し憂鬱になった。それでも最新の航路情報は必要だけど。



 私は重い足取りで施設の外へ向かう。既に「夜」は終わり、外界は薄明かりに包まれていた。地表には無数の残骸。目をこらし、比較的新しそうな船、そして航路情報があるブリッジ部分が潰れず残っていそうな船を探す。


 船内に足を踏み入れ、乗員や乗客の遺体を見つける度に心の中で謝る。ごめんなさい、私のせいじゃないけど、ごめんなさい。謝って許してもらえる類いの事ではないけど謝ることしかできなかった。


 いくつかの船を回り、ブリッジで破損していないC3を探す。大抵は砕けたりひび割れたりしていたけど、いくつか無傷のC3が回収できた。正直なところどれが航路情報なのかは、私には判別が出来ない。アルカンシェルに読み込ませて一つずつ確認するしかないだろう。

 どれか一つぐらいは当たりが入っていて欲しいんだけど……。まさか全部が娯楽用ホロムービーって事はないよね?でも、可能性はありうる。だから当選確率を高くするためにも、もう少しC3を回収しよう。


 いくつ目かの船に近づき、そのシルエットが判別できた瞬間、私の心臓が激しく跳ねた。これ……キャメル型!私が初めて乗った航宙船キャメル067と同じ型の航宙船だ!オットー船長やボースンさん、アドバーグさん。あと新人の……えっと……そう、ジョウ。4人の顔が脳裏に浮かぶ。

 確か船尾の方に船の番号が書かれているはず……。キャメル067はペレジスと私の故郷を往復する定期貨物船だから、こんな所にいるはずがない。……いや、でも私は今、自分がどこにいるのかも判らない。もしかしたらここはペレジス近郊の宙域の可能性も……そんな不安で頭がいっぱいになる。


「違うよね……067じゃないよね……」


 はやる気持ちをおさえ、船首から船尾へと回る。あった!キャメル……06……!最初の二文字が私の恐れている数字と一致したことで、冷や汗が流れる。最後の文字は――瓦礫に埋もれて見えない。お願い、7は……7だけはやめて……!そう思って必死に瓦礫をどける。表れた数字は――。


 「0」だった。キャメル060。オットー船長の船じゃなかった。安堵のため息と共に、私はその場にへたり込んだ。


 そういえば副長のアドバーグさんが言っていたっけ。キャメルトレーダー所属の船も何隻か航行中に消息を絶っているって。全てがこの星に墜ちている訳ではないと思うけど、私達が遭遇したような突然の亜光航行機関の故障みたいな事態もありえない訳じゃない。そう考えると、航宙船の船員さん達はいつも命がけなんだって。そんな当たり前のことを再認識した。



 他の船の残骸には何も考えずに入ることが出来たけど、キャメル060の中に入るには少し勇気がいった。だって、この型の船は2ヶ月間を過ごした、私の家ともいえる場所と同じ構造に違いないから。

 そして……この中で亡くなったであろう船員さん達は、きっとオットー船長達の同僚だ。私がここを無事に離れられるかどうかはまだ判らないけど、もし脱出できたら……060の乗員の最後について、キャメルトレーダーの人に報告しないといけない。いや、私が報告したいと思った。だから、私に二つ目の目的地が出来た。


 見慣れたエアロックを抜け、クルーレストを通る。2ヶ月の航行中に寝泊まりした私の「個室」。ブースのシールドは割れているけど中に人影は無い。無人のラウンジを通過し、ブリッジへ。見慣れた光景にあの2ヶ月の船旅が脳裏をよぎる。退屈だけど、平和で楽しかった船旅。


 ……でもおかしい。どこにも人影が無い……?コンソールは半壊していたけど、いくつかのC3は無事だった。アドバーグさんが教えてくれた航法用のC3は確か……あった、これだ。

 私の記憶が正しければ、たぶんこれが「当たり」で航路情報が記憶されたC3の筈だ。060で回収したいくつかのC3は他のC3とは別のポケットにしまっておく。いつかこれをキャメルトレーダーの人に返せる日が来ることを信じて。


 結局、船倉も含めて船内をくまなく探したけど誰の遺体も見つからなかった。キャメル060は比較的損傷が少なかったから、上手く着陸して皆脱出できたのかもしれない。そして……私が見つけた脱出ポッドで上手く逃げられたのかもしれない。

 うん、そうだ。そう信じよう。だって、私にはそう信じること以外に出来ることはなかったから。


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