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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第1部3章『罪無き者の贖罪』ペレジス-虚栄の惑星
51/55

#23

>>Towa


 アリサの案内で私達は地下保管庫へ続く搬入口までやってきた。幸運なことにもここには警備員の姿は見当たらず、監視カメラも設置されていないようだ。安全に進めるのはありがたいよね。イグナイトの予備はあるけど、なるべく温存したいところだし。

 搬入口から内部を覗くと通路が緩やかに地下へと続いているのが見えた。車両が直接保管庫にアクセスできるよう設計されてるのか、スロープはかなりなだらかに、でも延々と先まで伸びている。薄暗い中、C3による柔らかな光が間隔を置いて無機質な壁と床をぼんやりと照らしている。何かを隠すための場所にしては妙に整備が行き届いているような気がするけど、気のせい……?


「誰か来るかもしれないし、急ごうか」


 通路を覗きこんでいた私に声をかけ、アイリスが入り口を示した。


「アイリス。ブラスター、出しとく?」

「ううん、持ってない方が相手の油断を誘えると思うよ。向こうも、こっちが武器を持ってなければ撃ちにくいはずだし」

「豪胆ですね、管理官殿は」

「女の子に対して豪胆って評するのって、褒め言葉じゃないと思うけど?」


 軽口を交わしながら、私達はそっと通路に足を踏み入れた。ひんやりとした空気が肌を刺し、地下の冷たさが体に伝わってくる。保管庫へ通じるこの通路には時折機械音が響いてくるだけで人の気配はないように思えた。


「アリサ、この通路、どれくらいの長さ?」

「そうですね……入り口の位置からして、500メートルはあると思います」

「けっこう遠い。途中で倒れそう」

「トワ、運動得意だったよね?最近軟弱になってない?」

「宇宙は体力が落ちる」

「はいはい」


 いや、疲れるというか単調な光景を見ながら歩くのに飽きたんだけどね。

 そんなやり取りをしながら、私達は足音だけが響く通路を進んでいった。周囲の静けさが逆に不安をかきたてる。もし突然どちらかから輸送車両がやってきたら、隠れる場所なんてない。壁や天井は一面冷たい金属とコンクリートで覆われていて、逃げ場も遮蔽物も存在しない。せめてもの救いは、車両の音でこちらが先に気づけるという事ぐらいかな。

 そういえばアイリスが気にしていたゲートが開かれたままだった理由については私も気になってたんだ。警戒を強めているはずなのに、どうして開けっぱなしだったんだろう。単なる怠慢なのかな?まぁ今は悩んでも仕方ないし、少しでも早く保管庫にたどり着くことが先決だよね。


 数分ほど歩いただろうか。通路の先に小さな搬入場が見えた。車が1、2台ようやく駐められるぐらいのスペースを無機質なコンクリートの壁が囲んでいるけど、天井も低めで圧迫感がある。通路と同じ薄暗いC3照明が空間を照らしているけど、どこかしら陰気な雰囲気を感じるし。

 壁際には「押収」された品が収納されていたとおぼしき梱包材やトランク、コンテナの残骸が乱雑に放置されてる。……もしかして、私達の荷物も開封されてる!?破壊されたコンテナが転がっているのをみて一瞬ドキッとしたけど、幸いにも別のコンテナみたいだった。

 ここにも監視カメラは設置されていないようだけど、位置的にすでにギルド伯の私邸の真下だからいつ巡回の警備員が現れるとも限らない。私達は壁沿いに身を潜め、奥にある扉へ慎重に歩を進める。


 と、その時。アリサが何かにつまずき、よろめいて近くに積まれていたコンテナの残骸を崩してしまった。金属が床にぶつかる甲高い音が静かな地下に響き渡る。


「……!!」


 金属が床に当たる音が静寂に包まれていた地下に、驚くほど大きく響き渡った。アリサは口を押さえ、こぼれそうになる悲鳴を必死に抑えている。私はアイリスの指示を忘れ、咄嗟にブラスターを構えてアリサを背後にかばった。アイリスとウォルターさんも動きを止め、周囲を警戒する態勢に入った。



 ……しばらくしても何の反応もない。

 だけど、通路の向こうで微かな空気が揺れたようにも感じる。ただの気のせい?でも、神経が研ぎ澄まされているせいか、一瞬それが誰かの気配のように思えた。緊張がピークに達し、耳の奥がじんじんしてきた。


 しかし、数秒、数十秒と時間が過ぎても、周囲は相変わらずの静寂に包まれている。大丈夫そうだ。ようやく私達はほっと息をついた。


「ごめんなさい……私……!」


 アリサが蒼白な顔で頭を下げたけぉ、彼女の手は震えていた。私は彼女の手を握り、声を掛ける。


「何もなかった。大丈夫」

「こちらこそごめんね、アリサ。あなたのことを気遣えなかった私達の責任だよ。怪我、してない?」


 アイリスもアリサに優しく声をかける。ウォルターさんも軽く頷いて続ける。


「保管庫の中なら身を隠す場所もあるでしょう。私達が周りを調べている間、少し休んでいてください」

「ありがとう……ございます……」


 誰もアリサを責める様子はない。もちろん、何もなかったからじゃない。皆が心の底からアリサを気遣っているからだ。彼女に私達のその想いがちゃんと伝わっていればいいんだけど。


今回は短めなのでもう一話追加で更新します

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