表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部5章『真実は影と共に眠る』オラクルXVIII-謀略の要塞
220/224

#7

>>Alyssa


 トワ様がメラニーからオンブルを貰いたいと言い出したときはどうなる事かと思いましたが、アイリスさんと二人がかりで説得してなんとか断念してもらいました。


 子犬や子猫を拾ってきた子供に「飼えないからダメ」と諭す母親的な気持ちになりましたが……。こんな物を貰ってもろくな事になりません。

 しかもこれ、当てつけのように黒くて、私には使えませんし。


 ともあれ、メラニーがアルカンシェルについて掴んでいる情報に関連して、オンブルというギルド秘を開示した事は報酬として妥当だと判断しました。

 メラニーにこれで十分だと告げて元の会議室に戻りましたが……そういえば、まだもう一つ要件がありました。


「ところでメラニー、これを見てください!」

「おや……どうしたのですか?」

「もう壊れましたよ、これ!ちょっと脆すぎじゃないですか?初期不良交換を求めます!」


 そう言って私が差し出したのはレゾナンスブレード。カレンの振るう地剣ツクヨミと打ち合って破壊されたものです。

 初期不良と言い切るには少々手荒な使い方だった気もしますが、そこはそれ。交渉術というやつです。


「技術的な事は私にはわからないから、あとで担当部署に伝達しておくわ。でも、どうしてこんな壊れ方を……?」

「私が聞きたいですよ!タカマガハラにあった『神剣』とやらと打ち合ったらこうなりました。最終的に神剣も砕けましたけど……危うく負けるところだったんですからね?大体なんですか、あの神剣って!」


私の狙いはブレードの無料修理に加え、この件にかこつけて神剣の事を聞こうという両取り作戦です

 。メラニーのことですから、おそらく神剣の存在は知っているはず。そして騒動のさなか、私達が神剣に気づかなかったように振る舞う方が不自然ですから、私の手元にツクヨミがあることを伏せておく形で情報隠蔽を計りつつ、メラニーから知識を引き出そうという作戦です。

 とはいえメラニーに頭を下げて聞くのではなく、向こうから話さないといけない状態に持ち込みます。


「神剣ですか?それはどういうものでしたか?」

「私に聞かないでください!……神官達に聞いた話だと、オリジンスターからもたらされたとか、そんな与太話をしていましたけど。知っていた神官も皆死にましたから、ホント訳がわからないです」

「オリジンスターの?はて……」

「オリジンスターについて何か知ってるのですか?」


 私の言葉にメラニーはオリジンスターに関する情報は神話や伝説のような形で残されていると答えましたが、それは私達が知っている情報とそう大差ないものです。

 ただ、オリジンスターにまつわる知識や遺物の喪失についてメラニーが語ったあと、何気なく付け加えた一言が気になりました。


「……まさか遺物が残っていたとは、思ってもみませんでしたけれど」


 今メラニーは今「残っていた」と言いましたか?「残されていた」ではなく。その微妙なニュアンスの違いには何か意味があるような気が……。

 そう、メラニーがこれまで伝聞で語ったオリジンスターの失伝が、まるで彼女自身が能動的に関わっていたかのように、私には聞こえたのです。


 これは、もしかしたらオリジンスターの失伝はメラニー自身の手によるものである可能性を示唆している?

 実際にメラニーはオンブルの件でロストテクノロジーに関する知識を独占している事を告白したところです。なら、オリジンスターについても……?


「今、残っていた、と言いましたか?」

「……何の事ですか?」

「いえ、今確かに……」

「おや、もうこんな時間。アリサ、申し訳ないですが、会議がありますのでそろそろ失礼するわ。それじゃあまた会えることを楽しみにしていますね」


 そう言うとメラニーは会議室から出て行きました。ゆっくりと遠ざかるその後ろ姿が、まるで逃げ出しているように見えたのは気のせいだったのでしょうか。


「ねぇアリサ?」

「なんですか、アイリスさん」

「……私の、報酬の話は?」

「あ……」


 やらかしました。私がメラニーを追い詰めたせいで彼女は逃げ、アイリスさんが受け取るミッション報酬の話ができませんでした。今から追いかけても多忙を理由に面会を断られそうですし。


「まぁ、いいか。じゃあ私もトワと同じで報酬はギルドに預けておくことにするよ。今欲しいものは……多分ギルドにはないだろうから」

「アイリス、欲しいものあるの?私がプレゼントしたい」

「ありがとう、トワ。でもここだと……ね?」


 アイリスさんはそう言ってウインクをします。まぁ、確かにここはメラニーのお膝元です。

 盗聴や監視の目が無いと思う方がどうかしていますからね。



 その後、私達は再び現れた係官の案内で会計局へ出向きました。アルカンシェルで運んできたC3の査定結果を聞くためです。


「――思ったより高かったね、査定結果」

「Sランク、混じってたから」


 アイリスさんとトワ様が言われるように、タカマガハラから持ち出したC3の査定額は思ったよりも高額でした。

 アキラの話では今回アルカンシェルで運んだ量が現時点での年間産出量にあたるとの事でしたが……金額的に見れば買い取り手数料収入でギルド支部の年間運営費用を十二分にペイできるレベルです。


「手掘りでこれなら、掘削機械が入ると立派な産業になりそうですね」

「うん、質的にも良好だし……ひょっとして、CM41F3C(うち)より優秀じゃない?タカマガハラって」

「アイリス、CM41F3Cも潮汐ロックさせよう」

「いや、自転止めるなんて無理だからね?あと産出量と自転は関係無いからね?……無いよね?」


 いえ、私に聞かれても返事のしようがありません。なにせ長年ギルドが研究してもなお、どの様な環境や条件でC3が生成されるのかは明らかになっていないのですから。



 その後、アイリスさんは精算したC3の代金をタカマガハラへ物資を届ける航宙船に使うことを決めたようです。

 あの星の軌道ステーションは壊滅状態でしたから、第一陣の航宙船は簡易ステーションとして利用できる移民船仕様になることは決まっていました。


 惑星の状況がアレですから、比較的こぢんまりした航宙船が派遣される予定だったそうですが、アイリスさんはC3の代金で船をグレードアップして積載物資量や設置されるステーションの機能を向上させるつもりなのでしょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ