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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部5章『真実は影と共に眠る』オラクルXVIII-謀略の要塞
216/224

#3

>>Towa


 アルカンシェルはオラクルに戻ってきた。相変わらずオラクルは巨大な八面ダイスに見える。前も思ったけど、どうしてあんな形にしたんだろうね。

 前回はアルカンシェルをオラクルに入港させずにブリーズで訪問したけど、アイリスがアルカンシェルのことは既にバレてるから今回はもうそのままでいいと言い、私達はアルカンシェルでオラクルに直接乗り付けることになった。


 ポートコントロールに案内されたのは前回の小型艇発着デッキではなく、航宙船用の大型ドックだった。

 オラクル下部にある開口部がそのままドックになっていて、アルカンシェルが後ろ向きでその中へと格納されていく。もちろん、私達にそんな操船はできないから、アルカンシェルに任せてるけど。


 ドック内は重力制御が行われていないから当然無重力だったけど、アルカンシェルは自然な様子で「着床」し、ドックのスタッフを驚かせた。

 まぁそうだよね。航宙船には普通付いてないからね、ランディングギア。


「あのね、トワ。あれはランディングギアに驚いてるんじゃなくて、船体が重力制御してる事に驚いてるんだからね?」

「着地に驚いてるなら、同じ事」

「そうかなぁ?違うと思うけどなぁ」


 アイリスとそんな事を言っているうちにもアルカンシェルは後部ハッチを開放し、タカマガハラから積んできたC3の搬出が始まった。

 小型船であるアルカンシェルの荷室はそんなに大きくないけど、搬出されたC3の量はかなりのものだった。これでもあのクレーターに打ち捨てられたC3のほんの一掬いなんだから、驚くよね。


 納入したC3の査定は会計局の人に任せて、私達は超おばあちゃん……えっと、確かメラニーだったかな?その人へ報告へ向かう。タカマガハラから回収した恒星間通信用のC3を持って。



 案内されたのは前回と同じ会議室だった。

 私は同じかどうか判らなかったんだけど、アリサが「またこの部屋ですか」と何故か嫌そうな顔をしていたので、たぶん同じ部屋なんだろう。中には椅子に腰掛けたメラニーが待っていた。

 あれ?なんとなく前より体調悪そうだけど、大丈夫かな?


「お帰りなさい、アイリス、アリサ。そしてトワ様」

「おばちゃん、大丈夫?具合悪い?」

「え、ええ……大丈夫です。ご心配ありがとうございます、トワ様。それにしてもアイリス、随分と遅い帰還でしたね」

「申し訳ありません、スゥ局長。色々と手配に手間取りました」

「手配……ですか?」

「はい。ではそれも含め、報告しても?」

「……わかりました。では報告を聞かせて頂きます」


 メラニーはそう言うとアイリスの報告を黙って聞いていた。

 アイリスが話したのは、ロストプラネットであるタカマガハラを発見したこと。そしてC3強奪犯を発見し、彼女を「討伐」したこと。

 討伐と聞いて、隣に立っていたアリサが一瞬悲しげな表情を浮かべたけど、アリサは何も言わなかった。


 アイリスの報告ではカレンはあくまでも強奪犯で、奪還時の戦闘で死亡したという形になっている。それは事実だけど、真実じゃない。

 でもそのことをわざわざギルドに知らせる必要は無いとお姉ちゃんは言っていたから、私もあえてなにも口を出さなかった。


「そして、こちらがミッション目標として提示されていた、恒星間通信用C3です」


 そしてアイリスがC3のケースを示し、奪還を達成したと報告したとき……これまで無表情な微笑みを浮かべていたメラニーが、少しだけ失望の表情を浮かべたように思えた。

 頼まれた物を取り返してきたのに、失望するのはどういう理由なんだろうか。理不尽さを感じたけど、報告中は口出ししないようアイリスに言われていたので、黙っておくことにした。


「……判りました。では中を確認してもよろしいですか?」

「どうぞ。こちらです」


 そう言ってアイリスはC3のケースを開き、中身をメラニーに提示する。ケースの中身を確認したメラニーがいぶかしげに目を細めたのが判った。


「……アイリス。これはどういうことですか?」

「ご覧の通りです」

「では聞き方を改めます。強奪されたC3は二本一組の未調律の品でした。なのに、どうして……ここには調律済みのC3が1本しか……収められていないのですか?」


 そう。ケースの中には私が調律したペアの片割れだけが入っている。ペアのもう片方は既にタカマガハラに設置してきたからね。


「二等管理官の権限を行使し、惑星タカマガハラを期限付きのギルド直轄地として編入させました。また、直轄地の運営に不可欠なC3については、管理官権限に基づき徴発を行い現地への設置を完了しています。何か問題があるようでしたら、お聞かせいただければ幸いです」


 真っ直ぐにメラニーを見つめ、アイリスはそう言い切った。自信たっぷりな様子に見えるけど、この決断はギルドにとっては極めてイレギュラーなものである事は私にでも判る。

 メラニーが「問題」をいくつも指摘してくるんじゃないかと、内心ドキドキしながら彼女の言葉を待つ。


「……それが、あなたの……出した、答え……ですか?」

「はい。これが私なりの、管理官の果たすべき責務です」


 メラニーの問いかけにアイリスは自信を持ってもってそう答えた。メラニーはC3に視線を向けたまま何も話そうとしないが、心なしかその視線が揺らいでいるように思えた。


「すでに行われた決定は……覆せませんから、この事実は、記録して……おきます」


 メラニーはそう言うと手元の端末にアイリスの報告内容を記録した。

 あれ?でもやっぱりおかしい。アイリスに気圧されているのかと思ったけど、メラニーの息が荒くなっているような……。


「では……裁定を、伝えます。あなたの行いはギルドの……管理官としては……相応しくありません……。あきらかに……越権、行為……です」

「……!」

「トワ」


 私はメラニーの言葉に一歩前に出て反論しようとした。でも、それはアイリスに止められた。

 どうして?アイリスはタカマガハラの人達にとって一番良い未来を……!


「ですが……私が……あなたに求めて……いるのは……ただの管理官、では……ありません……。あなたは……私の……期待以上に……」


 苦しそうな息でメラニーは続ける。これ、危ない状態じゃないの?

 アイリスはメラニーから視線を外さないままだけど、アリサは戸惑いの表情を浮かべている。


「私、は……あなたの……行いを……支持、します」


 メラニーはそう言うと、震える指で端末を操作した。おそらく今のでアイリスの行いが正式にギルドに認められた事になるんだろう。

 でも、それよりメラニーの様子が明らかに異常だ。


「では……ギルドの……規則……アイリスに……報酬を……何か……」

『バイタルサイン危険域。緊急搬送開始。緊急プロトコル7-C発動』


 メラニーが報酬について口にしかけた時だった。突然扉が開き……機族(マシナリィ)が入ってきた。

 そして妙に機械的な音声でメラニーが危険であると告げると、彼女を抱き上げ、走る様にその場を去って行く。


「なんですか、今のは……」

「おばあちゃん、かなり危なそうだった」

「さすがにちょっと心配だよね。それにさっきの機族(マシナリィ)、あれもしかして第一世代じゃない?」

「先日も見かけましたが、やはり第一世代ですよね。ギルドに機族がいる事も不思議ですけど、どうして既に存在しないはずの第一世代が……」


 アイリスが言うには、私達が会ったことのあるモルガン達は第二世代と呼ばれるモデルらしくて、それより前の第一世代は第空白以前に存在していたタイプで現存していないというのが通説なんだそうだ。

 でも今、実際にいたよね、その第一世代。


 私達は突然の出来事に戸惑うことしか出来なかった。この場を離れて良いのか、待っているべきなのか。

 そんなことを話し合いながら待機していると、今度は人間の係官がやってきた。


「管理官殿、スゥ局長は体調不良のため。明日また改めてお話ししたいとの事です。宿舎を用意いたしますので……」


 係官の言葉に私達は目を見合わせる、そして、アイリスが代表して答えた。


「いえ、私達は船内に私室がありますので、宿舎は結構です。ドックまで案内願えますか?」

「……さようでございますか。承知しました、ブースタリア二等管理官」



 アルカンシェルへ戻った私達は、通信機類を全てオフにした上でさっきのことを話し合った。

 どうみてもメラニーは危ない感じだったのに、係官は明日再度面会すると言う。そんな事が可能なんだろうか?


「不謹慎ですが、正直なところ明日メラニーの葬儀だと言われた方が納得できます」

「うん、それは私も否定しない。でも係官、平然としてたよね?」

「正確な連絡が行ってないのではないですか?ただ、体調不良で倒れたとか」

「その割には宿舎とか、手回しいいよね……」


 考えても答えは出ない。明日になって、どうなるかを確認するしかなかった。その夜はアイリスの職位復帰祝いをしようかと言う話も出たけど、アイリスがさすがに今はそういう気になれないと言うのでまた改めてお祝いをすることにした。


 その夜はみんな早々に私室へ戻り……そして翌朝。


「ブースタリア二等管理官、スゥ局長がお呼びです」


 係官が普通に呼びに来た。


「どこへ呼ばれるの?集中治療室?それとも、れい……ううん、何でもない」

「は……?いえ、昨日と同じ七番会議室ですが……」


 アイリス、多分霊安室って言おうとしたよね?

 でも、会議室に呼ばれるということは、メラニーは元気になったということなんだろうか?


 係官に案内されながら、そんなことを考えた。でも考えても仕方ないか。会議室に行けばメラニーが元気かどうかはすぐ判るんだから。


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