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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部4章『現理の円舞曲』タカマガハラ-憎愛の惑星
203/220

#21

>>Towa


 翌朝……といっても、この星には昼も夜も無いから、とにかく私達が一眠りした後。私はコスモスーツからいつもの格好に着替え、軽くのびをしてから私室の扉を開いた。

 キャビンの方でアイリスとアリサが深刻そうな声で何事かを話しているのが聞こえる。


「――で、アキラは無事なの?」

『はい、ボクはいまのところ……あと『清き信仰の守り手たち』の皆さんも』

「まぁ、犯人が黒巫女なら仲間は襲わないでしょうからね」

『……姫巫女さまは、どうされてしまったんでしょうか』

「判らないけど……とにかく私達も準備でき次第そっちに向かうから。アキラ、気を付けてね」

『ありがとうございます、御遣い様』


 アキラから通信?黒巫女が襲う……ってどういうことだろう。


「アイリス、おはよう。何かあった?」

「おはよう、トワ。……えっと、落ち着いて聞いてね?」

「なに?」

「リナが、殺された」

「……え?」


 リナってあの、リナ?ちょっとぽわぽわしてて頭は良くなさそうだったけど、でも悪い人じゃなかった。どうして?誰が?


「昨日、私達が神殿の前を通ったときに騒ぎになってたでしょ?あれ、リナが殺されたっていう報告が来てたんだって」

「うそ……」

「晩餐会に欠席していたのも、すでに殺害されていたせいだったようで……確認を怠ってしまったのは、迂闊でした」

「本当にリナ?」

「ええ。ビークルごと一刀両断にされたって。運転手が生き残ってて、神殿に報告しにきたらしいんだけど……犯人は黒い刀を持った、黒い巫女姿の女だったって」

「……黒巫女」


 黒巫女が?どうして?

 リナは確かに八柱って言う地位だったけど、民には優しい人だって……。わからない、わからないよ。


「トワ様、お辛いならこれ以上は聞かない方が。後は私達でなんとかしますから、アルカンシェルで――」

「だめ。私も、行く」


 リナのことは確かに悲しいし、怖いけど、でもそんなところに二人を行かせて、私だけがここで待ってるなんて絶対に嫌だ。

 だけど、アイリスは頭を振って私の言葉を受け入れてくれない。


「まだ、続きがあるの。もっと酷い話。それでも、聞く?」

「……聞く」

「わかった。リナが殺されたことで、八柱の緊急会議が招集されたの。そこへ、黒巫女が乱入した」

「……!」

「アイリスさん、それ以上は……」

「聞く。そう決めた」

「わかった。結論だけ言うね。会議に出席した人間は全員殺された。八柱はもちろん、三人いた巫女も、神官長候補も。抵抗どころか、誰一人逃げることも出来なかったって」

「……どうして……?」


 名前も知らない人。顔も知らない人。それなのに、沢山の人が殺されたと聞いて、涙が止まらなかった。

 黒巫女はどうしてそんな酷いことをするの?


「黒巫女の目的はこの星の宗教統治の根絶。統治の象徴である八柱や巫女達は彼女にとって粛清の対象だったんだろうね。たとえそれがリナのような、無害な人間であっても」

「この星に街は一つだけですし、彼らは星を出る術を持ちません。もし生きたまま権力の座から引きずり下ろすと、後々泥沼の権力争いになる……とでも考えたのでしょうか」


 アイリスとアリサはそう言うけど、どうしてそうなるのか、私には判らなかった。どうして命を奪うの?……アキラ!あの子は!?


「アイリス、アキラは!?」

「落ち着いて、トワ。この話を連絡してきたのはアキラだよ。あの子は無事」

「よかった……」


 そうだ、さっきの通信はアキラからだった。私もそれを知っていたはずなのに。


「しかし……昨夜のうちに都市を離れていて正解でしたね。あの場に居たら、巻き込まれていた可能性が高いですし」

「そうだね。でも、私達が居合わせたら……誰かを助けられたかもしれない」


 アイリスが辛そうにそう言った。そうだ、リナ達の事で悲しい思いをしているのは私だけじゃない。アイリスもアリサも、悲しんでいるんだ。


「ダメですよ、アイリスさん。世界にIFは存在しません」

「……わかってるよ、アリサ。でもね、どうして考えちゃうよ」

「なら、こう考えなさい。あなたの決断は私とトワ様を危険から救いました」

「……アリサは、強いよね」

「強いばかりではダメなんですよ。刀と同じです。刀は固い鋼と柔らかい鉄が合わさって、しなやかで強い刃となります。私達全員が固い鋼のように強ければ……切れ味は鋭くなりますが、より強いものに打ち当たれば簡単に折れてしまいます。だから、柔らかい鉄が……一見すると弱く見える、優しい心の持ち主が、私達には必要なんです」

「私は、それでもヒヒイロカネみたいに強くなりたいよ」

「すでに伝説にはなっているじゃないですか、『英雄アイリス』さん?」


 アリサの言葉に、アイリスの顔に笑顔が戻った。こういうとき、自分の思いをちゃんと言葉に出来るアリサが羨ましい。

 だけど私は……いや、私は、私のやり方でお姉ちゃんを助けるんだ。


「これから都市へ行くの?」

「ええ。なんでも、神官長と巫女頭が姿を見せないんだって。会議室に死体が無かったらしいけど、神官の話だと会議には来てなかったみたいだし、どこかに隠れてる可能性があるって」

「黒巫女、まだいる?」

「たぶんね。神官達が神官長を守ろうとして探し回ってるみたいだけど、相手が悪すぎるよ」

「アイリスさん、もし黒巫女と遭遇したらどうしますか?対話を試みるか、見かけ次第攻撃するか」

「アリサなら、どうする?」

「見敵必戦、先手必勝です!」

「……ぶれないね、アリサは」

「で、頼りになるお姉さんの意見はどうですか?」

「私は、話をしてみたい。彼女、見境無く殺して回ってる訳じゃないからね」


 アイリスが言ってることが良くわからなかった。だってリナも、八柱の人も、みんな殺されてるのに?


「アイリス、どういうこと?」

「リナが殺された時に運転手が生き残っていた。八柱襲撃時にも、目撃者が多数いたけど、黒巫女は標的とした支配者層の人間以外は誰も殺していない」

「節度ある殺戮者……ですか?正直、ぞっとしませんけど」

「トワは、どう思う?」


 アイリスにそう聞かれて……私はどう答えたらいいのか、思いつかなかった。いや、思うところはあるけど、私の口は思い通りに動いてくれるだろうか。


「私は……聞きたい。どうして、そうしたか」

「……うん。トワならそう言うと思ったよ」


 アイリスは判ってくれた。

 私は、黒巫女がどうしてそんな事をしたのか知りたかった。C3を奪ったこともそうだし、彼女の行いの一つ一つが、全く理由のわからない事だったから。だけど、アイリスは黒巫女が無差別に暴れ回っている訳じゃないという。

 なら、その理由を知りたかった。もし戦うにしても……理由を聞いてからにするべきだと思った。


「では、二対一で対話に決定ですね」

「いいの?」

「もちろんですとも。このアリサ・シノノメ、トワ様の意見に従うことに何の異論もありません!」

「ありがとう、ちぃ姉ちゃん」

「……ああ……いい……」


 私の意をくんでくれるもう一人の姉に、心からの感謝を伝えたい。でも、私がちぃ姉ちゃんと呼んだ瞬間、アリサはくらくらと倒れてしまった。あれ?どうしたの?


「トワ、出発まで少し時間が掛かりそうだから、イグナイトの準備しておいてくれる?今回は蒼がいいと思う」

「わかった。でも、アリサは?」

「少ししたら復活すると思うから、しばらく幸せに浸らせてあげて?」


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