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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部4章『現理の円舞曲』タカマガハラ-憎愛の惑星
199/214

#17

>>Towa


 アイリスが晩餐会を欠席して街へ行くというので、私も一緒について行くことにした。

 晩餐会で出るご馳走には興味があったけど……でも、アイリスを守らないといけないからね。


 部屋に案内されたときと同じで官舎内には殆ど人がいない。まぁ、まだお勤めの時間だから宿泊施設でうろうろしている人がいないのは当然かもしれないけど。

 そう思っていると、官舎の出口の前で立っていた小柄な人が私達に気付いたのかはっとした表綬を浮かべた。


「髪の色が違うから一目で異邦人ってバレるのかな。これ、街中で聞き込みするの難しいかもしれないね」

「アイリスは美少女だから、大丈夫」

「美少女以前に瞳の色で警戒されそうだけどね」


 小声でそんな事をいいながら、外を出ようとしたら、立っていた人に声を掛けられた。


「あ、あの!御遣い様ですよね?お話が……いえ、そのボクがお話ししたいというか、お話ししたい人がいるので、ついて来てもらえませんか?」


 よく見ると声を掛けてきた人はまだ子供のようだった。綺麗に切りそろえたおかっぱ頭が可愛らしい感じだ。中性的な感じだけど……ボクって言ってるし、着ている服をみた感じだと男の子なのかな?

 まつげが長くて顔立ちも綺麗、声変わりもしていないからまるで女の子にも見えるけど。


「あら、御遣い様をナンパ?少しおませさんじゃないかな?」

「ち、違います!大事な用事で……その、タカマガハラのことで……」

「アイリス、この子困ってる」

「冗談だよ。それで、ここでお話するの?」

「いえ、神殿の方で……来て頂けますか?」


 この子が着ている服は神官達の服に似ているけど、かなり簡素だし、見習い神官とかなんだろうか。それに呼んでいる相手が神殿にいるということは、神殿関係者なのは間違いないよね。

 どうしようかと思ってアイリスの方を見ると、お姉ちゃんは軽く頷いて彼にわかった、と返事をした。


 アキラと名乗った彼に先導されて、官舎から神殿へ向かう。官舎へ案内された時にもちらっと見たけど、神殿は地下空洞の天井いっぱいまでそびえるぐらいの大きな建物で、派手なビークルと同じぐらい飾り立てられた立派な建物だった。

 まぁこの星が宗教国家で、宗教はタカマガハラの全てだと考えればこうなるのは当然なのかもしれないけど、アイリスから聞いた街中の様子を思うと少し微妙な気もした。


 道すがら、アキラは時々私達の方をチラチラと見ているが、声は掛けてこなかった。余計なことを話さないように言われてるんだろうか。でも、雑談ぐらいならいいよね。


「髪、気になる?」

「えっ……はい、とても綺麗だなって」

「ありがとう」

「それに、その……瞳の色も」

「瞳……」

「……ねぇアキラ。私の瞳って怖くない?」


 瞳の色の話が出たのでアイリスに視線を向けると、アイリスはそう切り出した。黒巫女の事を聞くチャンスかな?


「はい。御遣い様の赤い瞳は姫巫女様と同じで……あっ」

「姫……巫女?黒巫女じゃなくて?」

「ごめんなさい、ボク……そのお話は、今はダメだって言われていて」

「……じゃあ、案内した先で聞かせてもらえるのかな!?」

「はい。たぶん……ですけど」


 話すなと言われていた事を口にしてしまったせいか、アキラはそれ以降なにも話さず、私達の方も見ないようになった。

 アキラの言葉にアイリスもそれ以上は追求しないようだけど……でも姫巫女?黒巫女じゃなくて?赤い瞳の巫女は一人だと思ってたけど、もしかしたら二人いるんだろうか?



 その後、結局一言も話さないままアキラが案内してくれたのは神殿の奥、離れの様な所にあるいくつもの部屋が並んだ区画だった。牢屋……とかじゃないよね?


「こちらです」


 そう言ってアキラが示したのは沢山並んだ小部屋の一つ。しめされないとどれがどれだか判らないぐらい、没個性的な扉の一つだった。

 アキラはドアをノックし、お連れしましたと声を掛け、返事も無いまま内側から扉が開かれた。中には……神官の服を身につけた、中年の女性が一人。


「御遣い様、お入りください。誰かに見られる前に」


 どうやらこれは密会のようだ。普段なら面白くなってきたと思うところだけど、今回は色々と面倒そうな事が多いので、正直面倒ごとが増えたようにしか思えない。

 そういえば前にお姉ちゃんが私の事をトラブル誘因体質だって言ってた気がするけど、本当にそうなのかもしれないと思った。


 部屋の中に招き入れられ、椅子を勧められた。三脚の椅子が置かれていたということは、私達だけじゃなくてアリサも招待するつもりだったんだろうか。

 アキラは着席せず、中年女性の後ろに立っている。あれ?こういう時って、使いの子って退出するものなんじゃ……?

 そんなことを思っている間に、アイリスが話を始めていた。


「それで、どういったご用件ですか?」

「突然のお呼び立てして申し訳ありません。私達は『清き信仰の守り手たち』の者です」


 女性のその言葉に、私は面倒ごとが増えたことを確信した。だってこの名乗り、間違いなく「反体制派」ってやつだと直感的に判ったからだ。


「それで、その守り手の方が、私達にどういったご用ですか?」


 繰り返し要件を問うアイリスの声が平坦になっている。うん、もちろん私が気付くことにお姉ちゃんが気付かない訳はない。相手が反体制派で面倒ごとを持ってきたことは気付いたんだろうね。

 でも「守り手」の人はアイリスの様子に気付かないのか、一方的に話を始めた。


 彼女が言うにはタカマガハラの現体制は、腐敗した八柱と無力な神官長夫妻によって支えられており、民衆の生活は困窮の一途をたどっていて、その根本原因は宗教体制そのものなのだそうだ。民衆は掟と預言によって抑圧され、信仰を強制されている状態。

 なので「守り手」、つまり反体制派はこの状況を打破するために、八柱と神官長を排除して新たな秩序を築こうとしているらしい。


「――ですから、現八柱に代わる新しい八柱を選定する必要があり、それは公平な方法で成されるべきです。例えば指導者が選ぶ候補を民による信任を経て――」


 でも彼女の言葉からは宗教支配を終わらせると言う様な決意は感じられないし、どちらかといえば今の体制を塗り替えて、同じ仕組みの上で自らが権力を握ろうとしているだけのようにも聞こえた。

 理想的な改革を掲げてるけど、これって単なる権力闘争なんじゃないかな……?


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