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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部4章『現理の円舞曲』タカマガハラ-憎愛の惑星
196/211

#14

>>Towa


 アイリスと同乗じゃないのは少し不満だったけど、この不思議な車内は見ていて飽きない。それに、同乗しているリナの話も面白い。

 彼女は私より5つ年上の21歳で、1年前に八柱とかいう幹部になったらしい。この星では20歳が成人年齢だと言っていたから、成人してすぐに幹部になったということだ。

 きっとリナもアイリス並に有能なんだろうな。そう思ったんだけど。


「いえ、私は家が代々八柱の家系で、父も母も既に天へと旅立ちましたから、繰り上げで八柱に入れてもらったんですよ」

「いわゆる、縁故?」

「うふふ……トワちゃんったら。でも、確かにそう、縁故ですね」


 八柱には年が近い人がいないらしく、リナは私の事を最初こそ「御遣い様」「ご令妹」と呼んでいたけど、トワと呼んで欲しいと頼むとすぐに「トワちゃん」と呼ぶようになった。アリサもこれぐらい即応してくれるといいんだけど。

 しかし、ギルドの管理官と違って八柱というのはコネでなれるものなのか……なら、私もなれたりするんだろうか?

 いや、なりたいわけじゃないし、ここへはアイリスのミッションで来ただけなんだけど。


「ところでトワちゃんはどうしてタカマガハラへ降りて来られたのですか?私達、タカマガハラの民を救ってくださるため?」

「ううん。私が救うのはアイリス」

「アイリス様を?それは、どういう……?」

「赤い瞳の女を捜してる。知ってる?」

「赤い瞳……私も良くは知らないのですが、アカサカ様が最近そんな事を言っていたような覚えがあります。確か、黒巫女とか……」


 黒。そういえばリナ達はみんな黒髪、黒い瞳だ。なら、どうして赤い瞳の人間が黒巫女なんだろうか。


「リナ、黒いよね?黒御巫なの?」

「え?ああ、瞳のことですね。タカマガハラの民は皆、黒い髪で黒い瞳なんですよ。だからトワちゃんの銀色の髪とか、虹色の瞳とかとても綺麗で羨ましいです」

「じゃあ、どうして赤い瞳なのに黒巫女?」

「……言われてみれば、そうですね。赤巫女ならわかるのですけど」


 リナはそう言って小首をかしげると、髪に付けた豪華なかんざしがシャラリと音を立てた。ぽわぽわした感じのリナからは答えが得られそうにない。アイリスと同じぐらい有能かと思ったけど、そんな事はなかったようだ。


「そういえば……黒巫女の話を聞くようになった頃からだったかしら。神官長様が日々の予言をなさらなくなったのは……」


 予言?アリサの予知と同じものだろうか?……そういえばアリサは街が炎に包まれると言ってたっけ。まさか、タカマガハラでもそんな予言がされてる?


「予言?どんなの?」

「日々の預言といっても、それほど大きなことばかりではないんですよ。たとえば、どなたとどなたが婚姻されるべきかとか、どの信徒が巫女として選ばれるべきかとか……あと、神殿への御供物についてのお導きもありますね」


 リナは誇らしげに預言について説明してくれるけど、何それ。預言ってそんな現実的な事?いちいち預言する必要がないというか、結婚の話なんか完全に余計なお世話だと思うけど。


「それ、預言なの?」

「ええ、神官長様がご神体の前で祈祷を捧げられると、神聖な光がご神体を包み込むのです。そして、その中からお姿を現された神様が、私たちにお告げを授けてくださるんです。私も儀式には参加していますが、とてもありがたい光景で毎回涙してしまいます」

「でも、それが止まってる?」

「……もう何日も……いえ、もう10日以上かしら?神様のお姿を拝見できないのはとても寂しいことですし、信徒の皆さんもさぞ悲しまれていることだと思います……」


 リナの言う預言はアリサの幻視とはやはり違うようだ。アリサの視る未来は曖昧な光景でしかないけど、大きな意味を持つものだ。

 だけど、タカマガハラの預言は……なんだろう、作り物のような、演出されている様な空気を感じる。預言の内容だって誰かが自分に利益のあることを告げているように感じる。

 そしてその誰かはきっと神様じゃない。


「リナ、未来の予言は?例えば滅びの日がくるとか」

「まぁ、トワちゃん、なんて恐ろしい事を!でも大丈夫ですよ、タカマガハラは神様のお導きがありますから、これからも安泰です。神官長様も常々そうおっしゃっていますから。私達神殿の導きがあれば、信徒は皆平穏に過ごせると……」


 やはりアリサの予知とは違う。神官長とやらの預言とアリサの予知なら、私は間違いなくアリサを信じる。

 だってアリサの予知は、私とアリサを引き合わせてくれたし、そして私に大切なお姉ちゃんを取り戻させてくれたから。

 でも、ここの預言は違う。きっと何か裏があるに違いない。ビークルが止まったら、すぐにでもアイリスに報告しないと。



>>Alyssa


 さて、困ったことになりました。「御遣い様」とやらに祭り上げられ、アイリスさん達と打ち合わせも出来ないまま地下都市へ向かうことになってしまいました。まぁ強行突入や潜入よりはましですが……。

 先ほどから祭典官のアカサカだと名乗った男がしきりに私を褒め称えてきていますが、その目に浮かんでいるのは称賛ではなく、打算。

 私を利用できるかどうか値踏みしているような……故郷の政財界では慣れ親しんだ、あの目です。


 おそらくですがアカサカは私の事を本気で「御遣い様」だとは思っていないのでしょう。それでもオーロラを纏って大気圏へ突入してきたアルカンシェルの姿が、彼らの教義にあるアメノトリフネとやらに似ていたことで、本物の御遣いである可能性も考慮しての対応といったところだとは思いますが……。

 まぁ、彼らの思う「本物の御遣い」が何なのかは判りませんが、人外のものを想像しているなら……当たらずとも遠からず、ですが。


「いやはや、御遣い様、その身に纏われたお召し物の何と気高く、美しいことか。我らが粗末な布切れにも等しき衣とは比ぶべくもなく、まさしく天上の洗練と優雅さが凝縮された装いでございますな。天界においては、このような気品ある衣装が常とされておられるのでしょうか?」


 どうやら社交辞令の時間は終わり、探りを入れてきたようです。

 見たところアカサカは60代。人間であれば経験豊富で老獪な人物なのでしょうが……今回ばかりは相手が悪かったですね。


「お褒め頂き光栄です。これは私のために専用に作らせたものですわ。妹達も皆、自らの好みに合わせものを身に纏っております」

「ほほう、これはこれは……御遣い様のためだけに拵えられたお召し物でございますか。それを成し得るほどの御威光をお持ちとは、さすが天上においても高き御座にあらせられるお方とお見受けいたします」


 私が身につけている純白のコスモスーツが専用に作らせたというのは事実ですが、トワ様のコスモスーツは拾いもの、アイリスさんのものも間に合わせです。

 ですが、デザインがそれぞれ違うことで、コスモスーツからはアカサカに「天界」の生活や政治形態等についての情報は伝わらないことでしょう。


 そして彼が再度問うてきたのは私の立場でしょう。私個人の利用価値と同時に、私を通じて「天界」から何かを引き出せるのかを知ろうとしている……というところでしょうか。


「ええ。素晴らしき妹達の姉として、彼女たちを教え導く役割を務めさせて頂いております」

「そうで御座いましたか。……ご令妹と言えば――」


 私があえて質問の意図を外して答えた内容に、アカサカは一瞬鼻白んだような表情を見せましたが、すぐに気を取り直したのか話を続けてきます。

 私にとって、この手のはぐらかしはペレジスの評議会で日常茶飯事のやり取りでしたからね。相手の望む情報は与えず、言質も取らせない。

 政治家の必須スキルであるのらりくらりの言い逃れです。


 この星の統治体系は宗教国家のようですが、「八柱」と言う名称からおそらくアカサカには政敵と呼べるような同格の者はそう多くないであろうと私は推測しました。

 この「歓迎団」の代表がアカサカである事は間違いありませんが、出向いてきた「八柱」は見るからに政治に不向きそうな小娘に追従が得意そうな男。そして無駄に気位の高そうな中年女でした。


 これが主要メンバーなら、八柱の残りの4人もおそらくは良くて同レベルの人材。いえ、重大な御遣い様の歓迎に同行していないという時点で、むしろ歓迎団の4人よりも立場が低い可能性すら考えられます。

 なら、アカサカに政敵がいるとしてもおそらくは1人。日々政争を繰り広げる環境ではないでしょうね。

 ではそろそろ私の方からも仕掛けましょうか。アイリスさんが「黒巫女」とやらについて漏らした運転手をマークしてくれているようですから、私が聞き出すべきなのは――。

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