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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部4章『現理の円舞曲』タカマガハラ-憎愛の惑星
189/211

#7

>>Alyssa


 予知の幻視が視えるのは3年ぶりでしょうか。前回はトワ様の帰還とアイリスさんの再生に関するものでしたが……今のは。


 ――燃える都市と崩壊する建造物。それを冷ややかに見つめる赤い瞳。そして「私達がそれを止められない」と言う、定まった未来の予感。


 こんな強烈な幻視は初めてでした。

 これまでに私が視たことがあるのは「未来の可能性」。あくまでも起こりうる将来の一つで、それは改変可能なはずのものでした。

 実際に私は幻視を頼りに何度も未来を変えてきました。

 ……お父様の一件を除けば。思えばあの時に視た光景も、今と同じ「回避不能な未来」を告げていたのかもしれません。なら、今の幻視が意味するのは――


「アリサ。何が見えたの?」

「燃える都市、崩壊する建物。そして、赤い瞳です」

「赤い瞳?アイリス?」

「いや、私そんな破壊工作しないからね?」

「アイリスさんの瞳は紅玉のような色合いですが、見えたのは……まるで血の様な赤でした。あの光景、おそらく……タカマガハラで起きることなのだと思います」

「じゃあ、その赤い瞳っていうのがC3強奪犯の可能性がありそうだね。目撃情報によるとヘルメットかぶってたから、人相は判らないらしいけど」

「聞き込みの時、お姉ちゃんは離れてて」


 トワ様が何を言っているのか一瞬判りませんでしたが、アイリスさんと顔を見合わせた瞬間、その理由に思い当たりました。


「赤い瞳の女性を知りませんか、と質問したら……」

「隣に居る、と言われる」

「それ、私が犯人みたいじゃない!腑に落ちないよ、それ。アリサ、カラーコンタクト持ってない?」

「いえ、私は見ての通り眼鏡派なので」


 そんな軽口を叩きながらも、内心では「回避不能な未来」が気になって仕方ありませんでした。

 なぜなら、これまで私が視た未来は、全て私に関係のあることばかりでした。なら……あの光景は、私の目の前で起きることで、そして避けることは出来ない。その事をお二人に告げるべきなのでしょうか。


「アリサ、他にも視えた?」


 まるで逡巡している私の心を見透かす様にトワ様がそう声を掛けてこられました。

 話すことで行動の自由が制限されるリスク。

 話さないことで危険に晒されるリスク。

 どちらを採るべきなのでしょうか。悩んだ結果、私が口にしたのは――。


「トワ様、アイリスさん。この未来……変えることが出来ないかもしれません。ですから、くれぐれも無理はしない様にお願いします」

「わかった」

「アリサがそう言うなら、そうなんだろうね。判ったよ。私も気を付けるよ」


 かもしれない、というのは私の希望が含まれた言葉です。ですが、どうしてこの幻視は「変えられない」と思ったのか……それは私にも判りませんでした。



 その後、私が視た幻視が「都市」のものであった事から、まずは軌道ステーションを探索しようということになりました。

 地上に降りなければあの光景に巻き込まれることはありませんから。そう言った私に対して、トワ様は頷いてくれましたが……察しのいいアイリスさんは、それが叶わない希望だと判っていると言いたげな顔をされました。

 私の姉、察しが良すぎではないですか?でも、口に出して指摘しない優しさがあるのはありがたいですが。


 万一のことを考え、アルカンシェルは軌道ステーションの近くに投錨したまま、ブリーズで軌道ステーションへ向かうことにしました。ですが軌道ステーションの構造体は半壊しているので内部に空気が残っている可能性はありません。コスモスーツで向かうしかないでしょう。


 トワ様が着たのは前回も見かけた旧式のだぼっとしたコスモスーツでした。せっかくのスリムでスタイリッシュなトワ様のボディラインが隠れるけしからんデザインです。

 どうしてそんなデザインを選んだのかと非難する私にトワ様はあっけらかんと言われました。


「拾ったやつ」

「船だけで無く、コスモスーツも拾ったやつですか……」


 なんでもアルカンシェルを発見した小惑星に墜落した際、乗っていた貨物船に積まれていたものを着たまま持ち帰ったとのことだそうです。いえ、そんな中古ではなくてボディラインが出る最新のピチっとしたものを買いましょうよ、トワ様。


「アリサ、それ自分の欲望全開だよね?というか、トワはあなたの妹になったんだからね?妹に欲情するとか、お姉ちゃん、ちょっと引いちゃうんだけど」

「アイリスさん酷いです!言いがかりです!濡れ衣です!」

「じゃあ欲情しないと言い切れる?」

「ごめんなさい。無理です」


 無理なものは無理なので仕方ありません。

 私は以前トワ様に動きにくそう、と止められた純白の特注コスモスーツを着用しました。優雅でかわいらしい、ベルトやフリルで飾り立てたドレスのようなシルエットでドレープが素敵な裾が自慢の逸品です。

 得意げにポージングなどしてみましたが、アイリスさんは私をジト目で見ています。


「アリサ?さっきギルド幹部用の特注宇宙食を批判してたよね?特注コスモスーツはいいの?」

「それはそれ、これはこれです!」

「それ、国家予算で何年分?」

「いえ、ほんの0.1ヶ月分です!あ、もちろん私費ですよ?」


 私に理不尽なつっこみを入れてくるアイリスさんはグレーで地味目なコスモスーツを着ています。以前、ダンディライアンで私が着ていたものですね。

 ええ、前回はこれがあったので特注コスモスーツを着る機会が無かったのですが、今回はアイリスさんに地味目なのをお譲りしたので、私は特注デザインのものを着るしかないのです。


「次に寄港したらコスモスーツ新調しましょう。三人お揃いで」

「わかった」

「え?私の特注コスモスーツの出番は……」

「今回が最初で最後かな?」

「そんな……12億4千万クリスタの開発費が……」


 まぁ、開発費の大半は同時に作らせた小型の酸素供給(エア)フィールド発生装置の開発コストですし、そちらはペレジス発の新製品として売り出すものなので元は取れるのですが。


 そんな事を言いながら、私達はブリーズに乗り込みます。アイリスさんは出がけにアルカンシェルに光学探査でタカマガハラ地表の様子を分析するように指示していました。

 光学探査にはある程度時間が掛かりますから、私達が離艦している間に進めておくのは効率的です。さすがアイリスさん、そつがありませんね。


 軌道ステーションにはレゾナンスブレードを持ち込みます。アイリスさんはブラスター。トワ様もブラスターとレゾナンスシールドを持っています。今回は戦闘になる可能性が高いですからね。

 もっとも、私はトワ様にシールドを使わせるつもりはありません。たとえ相手が手練れであっても……私が必ず止めるからです。



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