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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部3章『婚約破棄と「ほしむすび」』カルデクス-耕愛の惑星
164/234

#1

>>Alyssa


「ミリシャ、お前との婚約を破棄する!俺は……この女と結婚する!」


 そう言って男が指差したのは――私の顔でした。は?何寝言かましてやがりますか、この馬の骨は。

 私は身も心も、魂さえもトワ様に捧げているというのに。


 男を睨み付けながら、私はこうなった経緯を思い返していましたーー。



 アイリスさんの希望で私達はカルデクスと言う名の惑星に降り立ちました。

 アイリスさんによると工業が盛んなこの星は先端技術にも優れており、フォトンタブに新しい機能を追加するための改造を行うことができそうな星なのだとか。


 『絆』による暴走の気配をモニタリングするための技術的手段を求め、ギルドの紹介でラボへ出向いたアイリスさん。

 彼女が帰ってくるまで暇を持て余した私とトワ様はドーム内に建設された街を散策しましたが、さして見るものの無い狭い街にすぐ飽き、する事もないのでギルド支部へ戻ってきたところで先ほどのシーンに遭遇したという訳なのですが。



 状況を整理します。確か今日ギルド支部で、ここの支部長の息子と、他の惑星から嫁入りしてくるという女性の婚約発表が行われるという話は最初に支部を訪れた時に伺いました。

 婚約、と聞いて少し胸が痛みましたが……まぁ、人のことは人のこと。それが見知らぬ誰かのことであれ、幸せになるのは良いことだと思いました。


 そして、先ほど無礼にも私を指差した男こそが、馬の骨……いえ、ここの支部長の息子で確かウィルフレッドなんちゃらと言ったと思いますが、まぁそんな感じのボンクラです。

 顔立ちは多少整っているかもしれませんが、見るからに勘違いしてそうな雰囲気を感じる残念ボーイ。正直、お仕事相手としてもお近づきになりたくないタイプです。


 対して、婚約破棄を宣言されたお嬢さん……ミリシャさんと呼ばれていましたが、こちらはトワ様と同じぐらいの年頃でしょうか?

 日に焼けた健康そうな肌が素敵で、普段ならきっと魅力的なお嬢さんなのだと思いますが……婚約発表の場で唐突に馬の骨に婚約破棄を宣言され、訳がわからないという顔で私を見つめています。

 いえ、そんなに見られても、私も訳がわかりません。どういう状況なんですか、これ。


「ともかく、ミリシャ、土臭いお前はもういい。出て行け。そしてお嬢さん、俺と結婚して――」

「あ゛あ゛ん?」


 ――思わずドスの利いた声が出てしまいました。



>>Towa


 何が起きてるんだろうか。ギルド支部の建物に入ったら、正面のホールで大勢の人が集まっていた。

 何かイベントでも始まるのかと思っていたら……予想通り、イベントが始まった。これ、ホロムービーで見たことがある。「婚約破棄モノ」っていうやつだ!


 一瞬、ドラマの撮影でもやっているのかと思って周りを見たけど、撮影している人は見当たらなかった。おかしいなと思っていると、破棄する役の男の人が指さした浮気相手役は……私の隣に立っていたアリサだった。

 どういうこと?知らない間にアリサ、ドラマに出演してたの?それとも……


「アリサ、浮気してたの?」

「な、なんのことですか!?というか、何ですか、その濡れ衣は!?」

「ほう、アリサというのか。名前も美しいな。よし、アリサ。お前を俺の妻にしてやる。丁度婚約発表のためにこの星の主立った人間を集めている。さぁ、こっちへ来い」

「あ゛あ゛ん?」


 アリサが怖い声を出して男の人……いや、変な奴を威嚇してる。たぶん、腹は立ててるけどまだ本気では怒ってないね、アリサ。

 それにしても、どうやらこれはドラマ撮影じゃないみたいだ。なら、この変な奴は何なんだろう。


「……誰?」

「なんだ?お前の様なちんちくりんには興味は無いぞ。だが、聞きたいなら教えてやろう。俺はギルド支部長の息子にして栄えあるモーリオンギルドの管理官補、さらにはCランクのクリスタルシンガーでもある、ウィルフレッド・グレイン様だ!」


 良くわからないけど、アイリスよりも職位が低くて、支部長だったアリサより下っ端、さらに私よりシンガー能力が低い。

 つまり、雑魚ってことか。新しく私の姉になったアリサには全く相応しくないね。アリサ、意外に見る目がないんだね。


「ちょ、トワ様!?もしかして、私のこと何か誤解してませんか!?」

「別に?フレ……なんとかって人。アリサはあげない」

「何っ!?貴様……どういうことだ!ははん……さては貴様、俺に惚れているのか?だが残念だな。お前の様な貧相な体型の女には興味は無い!」


 私、自分の体型が男性好みじゃないことは承知してるし基本的には気にしてないけど、今のはちょっとイラッとした。


「アリサ、不敬罪で0号処分して」

「判りました、直ちに……!」


 そう言ってアリサは腰をまさぐっているけど、確か今日はジュラナイ刀改めレゾナンスブレードは持ってきてなかったはず。

 まぁ、この前軍隊を叩きのめしていたアリサの身体能力なら素手でも余裕で処分できると思うけど。


「何をごちゃごちゃ言っている!さぁ、こっちへ来い!」


 そういって変な奴はアリサの手を掴もうとする。そんな事、させない!

 私は変な奴の手を軽くビンタした。


「ぐあっ!?き、貴様……何をする!さては俺の結婚を邪魔する気だな?」

「させない。アリサは、私の――」

「何っ!貴様、俺の女を横取りする気か!」


 お姉ちゃんになったんだ、と言おうとしたけど、私がそう言う前に変な奴が大声で騒ぎ出した。俺の女って。アリサは私の姉なのに。


「横取りも何も、お前のじゃない」

「戯れ言を!しかも高貴な俺に手を挙げるとは……許さん、決闘だ!」


 そう言うと男は腰に差していたサーベルを抜いて、私に剣先を突きつけてきた。

 どこが好機なんだろう。後期?まぁ、どうでもいいけど。

 それよりこれ、私斬られる感じかな?こんなところでリブートするのはちょっと困るんだけど。あまり危機感は感じないまま、そんなことを考えていると……。


「――トワ様に、刃を向けましたね?死にたいという事ですね?」


 地獄から響くような凍りつく声で、アリサがそう男に声を掛けた。あ、周りに居る女性が何人か倒れた。アリサ、ちょっと殺気出し過ぎだよ。


「わかりました。その決闘受けて差し上げます」

「ほほう……お前自身が決闘に応じるのか?まぁ、構わん。なら、俺が勝ったらお前は俺のモノだ」


 理解が出来ない間に話が進んでいる。アリサと決闘?この男、自殺願望でもあるんだろうか。

 今のアリサ、かなり怒ってるから……自殺したいなら、たぶん自分の剣で胸を突いた方が楽に死ねると思うけど。


「では私が勝てば?」

「ありえん。俺はこの星で最も剣技に優れた男。万が一……いや億が一にも負けることなどあり得ない」

「ほう……自信があるのですね。なら、負けたときの条件を提示しておいても問題は無いのでは?」

「くどい。なら、もしお前が勝てばお前の言うことを何でも聞いてやる。それでいいか?」

「どんな事でも?」

「くどいと言った!」

「ではこの場に居合わせた皆様方、証人になって頂けますね?」


 アリサの言葉に周囲にいた、この星の主立った連中とかいう人達が興味深げな表情で頷いている。あれ、本当に決闘するんだろうか?


「では決闘は明日の正午。ギルド支部の中庭にて行う。花嫁衣装の準備をしておけよ、アリサ!」

「冗談は顔だけにしてください」


 ウィルフレッドとか言う男は勝手に決めるとギルド支部の奥へと去って行った。

 周りに居た人達も、今日はこれ以上の動きは無いと思ったのか波が引く様に去って行く。気絶してた女の人達は、それぞれ連れの人が運んでいったみたいだ。

 そして、残されたのは……私とアリサ。そして、さっき婚約破棄されてた女の人。


「アリサ、殺すの?」

「どうしましょう。相手は死にたくて仕方がないようですけど。それよりも、ミリシャさん、でしたっけ?」

「……はい」


 呆然としたままだったミリシャという人は、アリサに声を掛けられようやく我に返ったようだった。

 ミリシャは柔らかそうな栗色の髪をゆるく編んだ、緑色の瞳がとても綺麗な女の子だった。


 健康的な小麦色の肌が婚約発表用のおめかしした白いドレスに良く映えている。素朴だけど綺麗な雰囲気なひとだけど……その表情は暗い。

ううん、絶望してるように見える。当然だよね、いきなり婚約破棄されたんだから。


「流れで決闘する事になりましたが、私達は何も事情がわからないので……お話、聞かせて頂けますか?何か力になれるかもしれませんし」

「アリサ、浮気相手なのに優しい」

「いや、浮気してませんよ!?私、トワ様一筋ですよ!?」

「あの……」


 あ、ミリシャのことを忘れてついアリサとじゃれてしまった。いけない、ここは彼女の……ミリシャの話を聞くべきだよね。


「じゃあ、お茶する?」

「ミリシャさんがご希望ならお酒でもいいかもしれません。というか私は今、猛烈に、そして浴びる様に飲みたい気分ですが!」

「えっと、ウチお酒はちょっと……」



 その後、ギルドの受付に居た職員に聞いたカフェに場所を変え、お茶をしながらミリシャに改めて話を聞くことにした。


「私はトワ。ギルドのシンガー。こっちは姉のアリサ」

「アリサ・シノノメです。ミリシャさん、おかしな事になってしまって申し訳ないです」

「いえ、こちらこそ……。えっと、アリサ・シノノメさんと、トワ・シノノメさんですか?」

「はいっ!」

「ううん。私はトワ・エンライト」

「え……?」


 アリサは勝手に肯定してたけど、私が否定して名乗るとミリシャは不思議そうな顔をする。まぁそうだよね、姉妹なのに違う家名を名乗ってるんだから。

 ただ、私が説明すると話が伝わりにくいかも知れない。アリサにちらりと視線を送ると、頷いて代わりに説明してくれた。


「私達、義理の姉妹なんです。今は出かけていますが、上にもう一人姉がいます」

「そうなんですね。ウチにもきょうだいおるんです。ウチ、三男四女で7人きょうだいの一番上なんですよ」

「7人きょうだい……すごい」


 少し打ち解けてきたようなので、そろそろ肝心の事を聞いてみようか。あのウィルフレッドとかいう変なやつの事を。


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