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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部2章『白夜の誓い』ミラジェミナβ-虚楽の双星
136/214

#14

>>Towa


 私が昼寝している間にアイリス達が帰ってきてた。そしてアリサが『永遠の女帝(エターナルエンプレス)とかいう影の支配者で閣下だった事も明らかになった。

 まぁ、私にとってアリサはアリサだけど。でも格好いいよね、二つ名。アイリスは「英雄」って呼ばれてたし、私も何か二つ名もらえないかな。あとでレイラに頼んでみよう。


「アリサ」

「はい、トワ様!寝室へ行きますか?まだ日は落ちてませんけど、問題ありません!」

「ちょっとお腹空いた」

「うぐぅ……わ、わかりました。お料理の準備をしますね……」


 私に抱きついたままだったアリサが渋々という様子でキッチンに向かった。ごめんねアリサ。料理、面倒だもんね。私には手伝えないけどがんばって。


「アリサ、私も手伝う!」

「あらレイラは料理ができるのですか?」

「ママが刑務所に居る間、ずっと独り暮らしだったからね。得意だよ!」

「ああ……それはなんというか、おつとめご苦労様です」

「あはは、それはママに言ってあげて?それより私の手料理、アリサに食べて貰いたいな。何か好きなモノある?」

「私よりもトワ様の好みを聞いてあげて下さい」


 そうか、メナは刑務所に入ってたんだっけ。まぁ結構な破壊行為してたから当然と言えば当然だけど。でも今は立派なジャーナリストをしてるらしいから、更生してるんだよね。

 それにしても好みの料理……。私、好き嫌いは無いけどその分こだわりも無いんだよね。どうしよう、アリサ達にお任せしようかな。


「アリサとレイラに任せる」

「判りました!では愛情盛り盛り料理で!」

「じゃあ、私も愛情特盛りで作るね!」


 食材の話が出ないけど、愛情って食べられるんだろうか。そんな事を考えているとアイリスが私の横へやってきた。


「ね、トワ。夕食後に海岸へ出てみない?ルミナリーフの群生地が近くにあるんだって」

「行く。行きたい」

「ルミナリーフ、気に入った?」

「うん。でも、お姉ちゃんと、行きたい」

「ちょっと、なんですか、それ!夜にロマンチックな浜辺でイチャイチャですか!?」


 私達の話を聞いてたのか、アリサがキッチンから声を掛けてくる。魚を捌いていたのか血の付いた包丁持ってるから怖いよ、アリサ。


「いいじゃない、たまには姉妹水入らずでイチャイチャさせてよ。アリサは残ってレイラとイチャイチャしてていいから」

「えっ、いいんですか!?」

「レイラ!どうしてそこで嬉しそうにしてるのですか!?」


 あれ?アイリスの言葉にレイラがすごく嬉しそうな顔をしてる。もしかしてレイラ、本当にアリサとイチャイチャしたかったのかな?

 まぁ、友人同士が仲良くしてくれるのは私も嬉しいから、応援しておこう。


「レイラ、がんばれ」

「ありがとう、トワ!私、頑張るね!」

「だから何をがんばるのですか!?」

「アリサ、包丁振り回すと危ない」

「誰のせいですか!」


 アリサ、本当に料理できるんだろうか。ギルドで剣の練習はしたって言ってたけど、包丁の訓練ってギルドで出来たっけ?



 少し早めの夕食はレイラが作ってくれた魚のソテーと、アリサの……サシミ?これ、魚を斬っただけの生だよね?やっぱりアリサ、剣の訓練しかしてなかったんじゃ……。


「トワ様、刺身はシノノメ家に伝わる伝統的な調理法です!新鮮な魚が手に入ったときにしかできない、地産地消の料理方法ですよ!」

「アリサ、地産地消って意味違うと思うけど?」

「細かいことはいいんです!ささ、美味しいですから召し上がれ!」


 アリサに勧められ、フォークに刺したサシミをショーユと言う調味料に付けてから口に運ぶ。あ、これ……魚肉のコリコリした食感が美味しい!


「アリサ、美味しい」

「でしょう?ほら、アイリスさんもレイラも食べてみて下さい。新鮮なうちに!」

「どれどれ……あっ、確かにこれはいけるね」

「わ、サシミは他の星でも食べたことあるけど、これは格別!アリサ、お料理上手なんですね!」

「ええ、いくらでも褒めて頂いてかまいません。ほら、トワ様ももっと褒めて下さい!」


 アリサはそう言ってるけど、私はサシミを食べるのに忙しい。

 それにレイラが作ってくれたソテーも美味しい。昼間のヤムヤムはスパイシーで刺激的だったけど、レイラの料理は彼女のほんわりした雰囲気と同じで優しい味がする。


「レイラ、ソテー美味しい」

「ほんと?よかった!アリサも食べて?」

「では頂きますね……。あら、これは本当に美味しいですね。レイラ、いいお嫁さんになれますね」

「お嫁さん……貰ってくれるのかな」

「レイラならモテモテじゃないですか?ファンも星の数ほどいるでしょうし」


 アリサはそう言ってレイラを褒めているけど、レイラの表情が少し曇っている。ファンと良い思い出が無いのかな?


「そういえば飲み物!せっかく買ってきたので、飲みましょうよ」

「お、いいね。でもトワはアルコール駄目よ?」

「私、もう成人」

「トワ様、飲んで酔って乱れて下さい!私がいくらでも介抱いたします!」


 そんなことを言いながら、4人の楽しい時間が過ぎてゆく。あ、もちろんスイーツも食べたし、おつまみも食べた。

 アイリス達が買ってきてくれたこの星の果物、ルミナップルというのも食べた。甘みと酸味のバランスが良くて、とても美味しかった。そしてお腹がまた少しぽっこりとした。

 まあもう夜中だし、今から水着に着替えることはないから問題ないだろう



「じゃあ、行ってくるね。アリサ、レイラとよろしく」

「承知しました」

「なにをよろしくするの?」

「イチャイチャだよ」


 アイリスの言葉は出かける際の挨拶にしてはちょっと違和感あったけど、レイラとアリサで仲良くしてねって事か。それなら理解できる。

 レイラ、ちょっと酔ってたのか顔が赤くなってたからね。私はセレスティエルだからかアルコールで酔ったことはないけど、ほんわりしたレイラの表情を見ていると、酔うという体験もしてみたいなって思った。


 でも、今はアイリスとの散歩だ。ルミナリーフも気になるけど、二人きりでゆっくりと過ごせるのが何より楽しみだ。


「ほらトワ、暗くなってきたから足下に注意して……って、思ったより外が明るいね。それにしても、夜なのになんでこんなにはっきりと見えるの?」

「星明かりで、普通に見える」

「セレスティエルの視力、便利すぎでしょ。これなら照明要らないじゃない」


 呆れた様子でそういうアイリスの腕にしがみつく。


「お姉ちゃん、セレスティエルにならない方が良かった?」

「ううん。感謝してるよ?便利さとかじゃなくて、トワと同じになれたんだからね」

「……うん」


 アイリスはそう言ってくれるけど、意図していなかったとは言え人ではない存在としてアイリスを再生してしまったのは私のエゴだ。

 偶然、上手くいっただけで……もしかしたら「お姉ちゃん」はここにいなかったかもしれない。そう考えると心の底に恐怖が蘇ってくる。


「震えてるよ、トワ。上着取ってこようか?」

「ううん、平気」

「大丈夫、私はちゃんとここにいる。どこにも行かないからね」

「うん」


 そう言ってくれるお姉ちゃんの言葉に、震えが止まった。

 ずっと一緒にいてね、アイリス。

 約束だからね。

 もう、独りにしないでね。



 月明かり……いや、空に輝いているのはミラジェミナαだから惑星(ほし)明かり、かな?は思っていたよりもずっと明るくて、夜なのに影がはっきりと見えている。

 アイリスが言ってたように私は元々夜でもそれなりに見えていたけど、ここの夜は他の星の夜よりもずっと明るい。たしか白夜って言ったかな?惑星の極北で起きる昼間の様に明るい夜。

 ホロムービーでみた、白夜の感じに似ている、かな。そんな事を二人で話しながら歩いていると、アイリスが何かに納得したのかぽんと手を打った。


「そっか、この明るさだから夜に見るのがおすすめって言われてるんだね」

「なんのこと?」

「ルミナリーフ。あれ、光に反射して輝くでしょ?夜だと反射する光が無いんじゃないかと思ってたんだけど。これだけ明るいなら……ほら、トワ、あそこ!」


 アイリスが指さす先。海が……虹色に輝いている。あれがルミナリーフの群生?

 綺麗。とっても綺麗。まるで海の中に虹が架かっているみたい。ああ、こんな素敵な光景をアイリスと見られるなんて。私は声も出ないまま、ただその光景を見つめていた。


「ね、トワ。潜ってみない?」

「え……海の中?」

「そう。きっと海中で見た方が綺麗だよ」

「私、泳いだことない」

「私も。でもほら、宇宙なら一緒に泳いだでしょ?」


 アイリスが言う様に、確かにEVAはしたことがある。でも、あれって泳いだことになるのかな?


「大丈夫。ちゃんとアリサに良い物借りてあるから」

「いいもの?何?」

「ほら、これだよ」


 そう言ってアイリスが差し出してきたのは、髪留め?たしかアヴァローンでアリサが付けてたやつだ。


「これ、エアフィールド発生装置になってるんだって。小型だから1つだけだと1時間ぐらいしか保たないらしいけど。2人で1つずつ付けて、潜ってみよ?」


 初めての海はちょっと怖いけど、でもお姉ちゃんがいるなら大丈夫。そう思った私は無言で頷いた。


「私は……三つ編だからこのまま付けられるけど、トワは髪をまとめないとダメだね。おいで、髪整えてあげる」

「うん、ありがとう」


 アイリスが私の髪をポニーテールにまとめてくれた。髪型変えるの、ずいぶん久しぶりだ。たぶん、子供の頃にアイリスが三つ編みにしてくれたとき以来だと思う。いつもと違う自分の姿を想像してみたけど、どうもイメージが湧かない。


「おかしくない?」

「全然。むしろすっごく可愛いよ?」

「うれしい」


 実際に似合ってるとか似合ってないとかはどうでも良かった。アイリスが褒めてくれるなら、それで十分だ。


「じゃ、行こうか!」


 サンダルとワークブーツをその場に残し、波打ち際まで裸足で走ってゆく。足下を洗う冷たい海水が気持ちいい。


「アイリス、服脱がないの?」

「着替えなら沢山用意してあるよ。そのままで行こ!」


 アイリスに手を引かれ、私はそのまま海の中へと身を躍らせた。二人ならどこへだって行ける。

 そう思いながら。



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