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少女は大宇宙で虹と歌う  作者: 羽生ルイ
第2部1章『絆のエレメント』アヴァローン-輪廻の浮島
115/211

#6

>>Alyssa


 私にとってのトワ様はセンスオブワンダーの塊のような方ですが、その驚きにまた新たな一章が加わった気がしました。

 機族(マシナリィ)の魂を首から提げておられた事も驚きでしたが、それがモルガンさん曰くあり得ない存在だったとは。


 いえ、もう私はトワ様の事では驚かないようにしましょう。こういう方なのだと受け止めるだけ。それが愛なのですから。トワ様、愛しています。だからベッドは一つで十分です!

 ……私がそんな現実逃避をしている間にトワ様とモルガンさんは何やら相談をされていたようです。


「じゃあアリサ、行こう」

「はい……。えっ?どちらへ……?いえ、どちらでもお供させて頂きますが」


 いけません、話を聞いていなかった事がばれてしまうではないですか。退屈な評議会で時々居眠りをかましていた時、急に声を掛けられても無難に切り返していた頃の私の危機回避スキルはどこへ行ってしまったのでしょう。


「施設の奥。機族には使えない施設があるって」

「そうなんですね。ではそこへ虹水晶を?」

「うん。どうせならちゃんと調べたい」


 そう言うとトワ様とモルガンさんはさらに奥へと向かわれました。私も置いていかれないように慌て二人の後を追います。こんな沢山のボディが並ぶ霊安室みたいな所へ置き去りとか、ぞっとしませんからね……。

 それにしても魂のサイズ超過というのはどういうことなのでしょうか。魂に大きさがある?重さがある?密度が違う?

 考えてもわかりません。いえ、それ以前に魂がC3に格納されるということ自体が理解の範疇を超えています。


 私が知っている、そしてギルドが扱うC3は単なる便利な道具に過ぎません。フォトンエネルギーの増幅や変調を司り、日々の生活から恒星間通信、果ては航宙船まで。様々な場所で使われていますが……ただそれだけの存在で、希少ではありますがありふれた資源の一つです。

 ですが機族の魂は確かにC3に宿っています。どうやって?あの虹色という、私達ギルドには生み出せない色に関係があるのでしょうか?

 様々な疑問が浮かびますが、答えは一つも思い浮かびません。この向かっている先で……何か疑問が解消できれば、すっきりとするのですが。



 私達が進んでいた通路は飾り立てられた扉の前で行き止まりになっていました。

 扉のレリーフはリンゴの木をモチーフとしたものです。アヴァローンの中央に大きなリンゴの木を模した建造物があったことと照らし合わせれば、ここがアヴァローンの最深部、そして最重要施設なのでしょう。


「ここは?」

「ラク・ダヴァローンという名前だけが伝わっていますが、私達にも詳細はわかりません。ここは、機族の入室が禁じられているので」


 ラク・ダヴァローン……?機族のための施設なのに、機族の入室が禁じられているのですか?矛盾した場所のように思えます。

 それに、モルガンさんも何か確証があってここへ案内した訳ではない様子。一体、この中に何があるんどえしょうか。


「開けられる?」

「いえ、私達では認証が行えません。扉横のパネルは生体認証なのです」

「……人間用ってこと?」

「おそらくは。ですがここは……」

「人間が入り込めない場所でしたよね。確か、200連高エネルギー砲とか言う物騒なもので歓迎される」

「はい。20連ですが」


 思わずトワ様達の会話に割り込んでしまいました。機族のために造られた施設なのに、機族は中に入れない。人間が立ち入れない場所の筈なのに、人間用の認証装置がある。どういうことなのでしょうか、これは。

 私が悩んでいる間に、トワ様はパネルに歩み寄ると認証を試みておられました。さすがトワ様、判断が速いです。


[Authentication FAILED]

[Entry: Denied.]


 ですが、トワ様が翳した手のひらは無情にも拒否されてしまいました。この施設、トワ様を拒絶するとかありえません。あとでアルカンシェルの200連高エネルギー砲で殲滅してやらないと!


「開かない」

「残念です。セレスティエルが開くことが出来ない扉なら、私達にはどうしようもありません。申し訳ありませんが、そのC3の事は――」

「アリサ?」

「はい、何でしょうか、トワ様」

「様はやめて。あと、アリサも試して」


 どさくさに紛れて様付けしたのですが、気付かれてしまったようです。それはともかくとして、トワ様に開けない扉が私に開けるとは思えませんが……。

 でも、トワ様に指名されて断る私ではありません。

 コスモスーツのグローブを外し、扉に対する敵意をみなぎらせながら認証パネルへ手をかざします。


[Authentication SUCCEEDED]


 赤い走査線が私の手をスキャンし終えた直後、音も無く扉が開きました。あれ……?どうして……?改めてパネルに目をやると、文字が表示されていました。


[Welcome Compatriot.]


「ようこそ……同胞……?」

「なるほど、ここはセレスティエルのための施設ではなくテロマーの作った施設です。アリサ様であれば認証できるのですね」

「アリサ、素敵。好き」


 モルガンさんは何やら納得しているようですが、私の理解が追いつきません。だって、だって!トワ様に……好きって言われました!!!

 これはもう結婚ですね?この中はきっと純白のチャペルで、私達は式を挙げるんですね!そうに決まっています!そう決めました!着ているものがコスモスーツなのは少し不満ですが。

 そんな妄想に浸りながら、私は鼻息荒く室内に飛び込みま……したが。


 ――残念ながら、そこはチャペルではありませんでした。ええ、知ってましたよ、もちろん。世の中がそんなに上手くいくなら、私の恋はとっくに成就しているはずですから。


執筆時に連載区切りの事を意識していなかったため、各エピソードの長さがまちまちで申し訳ありません……

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