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HERO  作者: 常月楓
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終わりの始まり

エンディング 前編 Side由紀

彼が去ってからどれだけ時間が経っただろう。十分?一時間?一日?わからない、ただ、その間ずっと泣いていた。

「そこのあなた。大丈夫・・・?ではないですね・・・」その声で我に帰った。雫の声じゃない。誰かと思い、声のかかった方を見ると綺麗な夕日をバックに、短い藍色の髪をした可愛らしい容姿をしている女が心配そうに僕に声をかけてきた。背がとても低く年は僕の方が上のように感じる。

「何だ」僕は涙のついた目を擦り言葉を返す、出会って早速自問自答から始めたやつだ。ろくな奴ではないだろう。そう思っていると「さっき、山の方向にあなたと同じような服装をした子が泣きながら走っていって、走ってきたであろう道を辿ってくると泣き声がして、それで・・・」「そこであなたも同じように泣いていたから、気になちゃって・・」そう不安げに彼女はいう。

本当に心配しているのだろうか、わからない、けど一つだけ疑問が残った。「その山の・・方向には・・何がある?」そう尋ねた。そのを尋ねを優しく彼女は答えた。「竹林の迷宮、とばれる山だけです。他に言うなら星がとても綺麗に見えるスポットがあります。」おかしい、なぜなら雫こういった「死にたくない」と、わざわざ山に行くことんなんてない、死にたく無いのなら駅に行けばいい。

そこで新たに疑問が生じた「なぜそんなことをしたか」、そこで俺は荷物を確認する、俺の死ぬためのロープがない、そして「全部くれてやる」と僕がいった現金はたった四千円しか減っていない。そこで僕は確信した、「彼は死にに行った」と言うことを。

僕はその少女に言った。

「なぁ!その山に俺を連れてってくれ!」いきなり言ったことと、泣きながら言っていることも合わさり、彼女は「なな何急に泣きながら大声をあげるんですかー!一瞬考えるような顔したからどうしたかと思ったら急に言ってくるなんて・・・」と申し訳ないほどに驚いていた。

「けど私はここに初めて来るんで詳しい道わからないんですけど・・・」と不安げに言ってきた、それに「なら大体の道でいい!僕をその山の近くまで連れて行ってくれ!」そういっった、すごく失礼で、迷惑なことはわかっている。

けど、それでも雫の元へ行かなくてはならない。そうすると彼女はある程度事情を理解してくれたように「なら、わかりました、その同じ服装をしていた子がそんなに大事なんですか?」無言で小さく頷く。「なら会いに行きましょうか」そう言って小走りでその山の方へ向かった。僕はそこそこなスピードで走っているというのに、彼女は僕と並走、いや、僕より少し先を余裕そうに走り始めた。

行く途中で、「あなたとその同じ服装の子はどう言う関係なんですか?」そう聞いてきた、「デリカシーがねぇな」と内心思いながらも「ただの親友、だけど、さっき喧嘩して別れちまってな、謝るためにも会いに行くんだ」そう言っただけなのだが、彼女は「あなたたちの様子を見るにただの喧嘩じゃないように見えます。その急ぎ具合から見て取り返しがつかないことだと思うんです、場所も・・・竹林の迷宮と呼ばれている所へ行こうとしているなんてもしかして彼は自殺でもしようとしてるんですか?」たったあれだけの時間と行動で僕と同じ答えを導き出している。だから「俺もそう考えてる。あくまで予想だがな」と気味悪がりながらも答える。

「もし本当に自殺しようとしていて、あなたが彼を大切な親友だと思っているのであれば、何をしてでも止めてくださいね。自殺をするのは思い詰めただけの愚者か、悟った賢者だけです、そして九割九分九厘の確率で前者です、彼もきっと前者でしょう、なので、彼とまた過ごすためにも、彼を愚者にしないためにも、全力で止めてくださいね」まるで宗教の一つの教えのようである、走っている途中とは思えぬほどに話し方一つ一つが優しい。けど、当たり前のように僕の親友を侮辱してくるのは辞めていただきい。

気づけば涙は止まっていて、山の麓にもついた。「では私はここまでです、親友さん、止めてきてあげてくださいね、縁があればまたどこかで会いましょうね」とそう言って彼女は田舎町の方へと戻っていった。

止める気?そんなんもの最初から持っちゃいないね。

さぁ、ここからは僕と君の最期だ、お互い、悔いの残らない人生にしようじゃないか。


エンディング 後編 Side由紀、雫

すっかり夜となった山に入り、真っ先に雫を探す。止まって静かにしていると風が切る音、虫の音と僅かだが草をかき分けて移動する音が聞こえる。けど、どの方向かは正確にはわからない、だからある程度の場所だけならわかる。それを手掛かりに雫を探すために走り続ける。


誰かが、俺を探している。自分の周辺に山を走り抜ける音がすることに気づけたのは山に入ってからたった二十分程のことだった。

誰に見つかろうとも面倒ごとになるため、俺は足音をなるべく消しながら、静かに素早くその捜索から逃れようとした、けれどそいつは足音を戻した瞬間にまたこちら側に接近してくる。気味が悪い、「ストーカーかよ・・」と小声で独り言を言いながら数十分間逃げ続けた。

そして遂に、その「追ってくる何か」と出くわした。出会った瞬間俺は「チッぃ!」といいその場を逃げ出した、「なんでお前がここにいるんだよ!」そういうと「お前に会うためだ!」と強気に返してきた。


数十分か走り続けた。ようやく僕はその移動し続ける人の背後に回れた。「おい!雫!」と声をかけるとそいつは僕に気づいた。その瞬間にそいつは全速力で逃げたため、僕は追いかけた。姿は竹と闇に紛れてよく見えない。

走りながら、僕は目の前のやつとは違うところから足音が聞こえることに気づいた。なら僕が今追いかけているこいつは?「は?お前誰だよ!」と言い、逃げるそいつを追いかけた。


全速力で走っていると、目の前から急に追いかけ合いをしている連中が現れた。「え?雫?」「は?由紀?!」お互いの存在と状況に驚く言葉が飛び交った。なぜなら、僕は、俺は、「警察官」を追いかけて、に追いかけられているのだから。


俺が今、警察よりも会いたくなかった奴が今、目の前にいた。

この山に俺がきていることをなぜ、由紀が知っている?あいつが何十分も泣いていたことは簡単に想像がつく、ならなぜ、今、ここに由紀がいる?

「由紀!なぜお前がここにいるんだ!もう二度と顔を合わせないんじゃないのか?荷物は返さなくていいんだろ?ならなんでお前がここにいる?!」そう尋ねてきた雫に僕は「僕は言ったはずだ、僕たちが知らない世界で「二人で」死のうな、と何勝手に僕を出し抜いて死のうとしている!」僕は雫と話すためにも警察官を追い抜き、二人で並列して走った。

この話を聞いた警察官はいかにも驚いたような声を上げた。「やべ、聞かれるのはめんどいな」と思い、僕は雫の手をとり、今まで出したこともないような全力疾走で走った。雫がスピードについてこれず足がもたついているのがわかったが、警察官も足が速い、引き離すためにはこうでもしないといけない。


由紀の足が速いことを今初めて知った。元から体力と根性で長距離走が得意なのは知っていた、高校一年の時の体育祭の時は選抜リレーの補欠にすらなっていなかったのを知っている。けど、今、その時選抜リレーに出ていた俺を置いていくほど速い。

多分火事場の馬鹿力という奴だろう、俺がお前を置いて死ぬことをわかって、それについていくために、せめて自分たちに相応しいように死ぬために、心がリミッターを外しているのだろう。「よかったよ、お前が最後まで俺についてきてくれて」とそう独り言を俺は呟いた。


数分経つまでもなく、警察官二人を巻いた。「ハァ・・よし、巻いたな、けど時間もねぇ、今ここで死のう」由紀は疲れていた。そりゃそうだろう、体が出せる限界のスピードを出して、その前にも走り続けていたのだから。

「僕は・・・もう死ぬ覚悟はできている、僕はロープで死のうとする。雫はどうする?今からでも、死にたくないというのなら僕も死なない、もう離れない。約束だぞ」僕は体が悲鳴をあげていることがわかっていたが、いつ警察官に捕まるかわからない今、体の心配をする前に、死ぬ準備をしようとしていた。

山まで案内してくれた彼女には悪いが、僕は雫が大切だ、だからこそこの自殺を止めようなんてさらさら思っちゃいない。僕たちは愚者で構わない、無理をしてまでも生きた山まで案内してくれた彼女には悪いが、僕は雫が大切だ、だからこそこの自殺を止めようなんてさらさら思っちゃいない。僕たちは愚者で構わない、無理をしてまでも生きたくはない。

「俺は・・・もう逃げねえよ、逃げたってどこまでもお前が付き纏ってくれるからな!だから、ありがとう、俺はお前がいてくれたからここまでくることができた、死ぬ覚悟はできている、俺は今まで犯した罪を!償うためにも!今!ここで死ぬ!」本当は俺だって由紀と楽しい日々を過ごしたかった。

いじめられない生活が永遠に続けばいいのにとも夢見た。

けど、現実は元から決して自由だったわけではなくて、毎日いじめられて、毎日苦しくて、けど、たまに俺たち二人で楽しく遊んで、その日々も自由ではなかったが、楽しかった。

その日々が惜しい、けど、それ以上に俺は人を殺してからの由紀との数ヶ月の旅が楽しかった。

一生続かない旅だとわかっていても、今まで感じてきたことのない開放感が溢れ出てきた。沢山幸せをもらった。だから、俺は、このシアワセがあせないうちに、罪も、苦しみも全部捨てて、ここで人生を終わらせる。

ただ、俺__が死ぬ世界へ最後の一歩を歩む。


「そうか、わかった、なら僕はロープで首を吊り、雫はナイフで死んでくれ、もう幸せも、罪も、苦しみも全部消える」

僕はこんなことを言いながらも幸せしか持っていない、雫は人殺しだけど、一歩踏み出しただけの僕と何も変わらない、だから雫は悪くない、悪いとしたら、この世には人殺しが山ほど湧いている。皆「俺は悪くない」「私は悪くない」と思い込んでいるだけ、雫はそう思い込むことができなかっただけ、だから、今雫が持っている「罪」も「苦しみ」も僕には持っていない、旅の始まりで全部捨てたから。

この両手で抱えられる雫の苦しみと罪を僕は盗んで、僕はこの旅で感じた「自由な幸せ」を分け与えて、ここで死ぬ。

上空には天の川が綺麗に見えた。確かに星がとても綺麗に見える。色々あったが、僕たちの死に場所は僕たちに似合う場所になるだろう。

僕が木にロープを巻き付け、首にくくりつけて数秒後、「おい!君たち!何をしようとしている!」と言い警察官が現れた。「何かって?自殺だよ、自殺、この世界で生きるのに疲れたんだ、もう自由になりたい、罪からは逃げたい、そう思ったからだよ」「あぁ、僕も同意見だ」僕たちは警察官を煽るように言葉を放つ。雫は手に持っている包丁で警察官を近づけないようにしている「そんなことをして、本当に自由になれると思ってるのか?!君たちが大事にしている人たちが!信じている人がいるだろう!?」

「あぁ、思っているさ、俺たちから見たらこんな世界は窮屈で仕方がなかった、だから死んで逃げるんだよ、死ねば罪にはとらわれないだろ?死ねば苦しむ必要はないだろ!?」俺は全力で煽る。


「大切な人?そんな人、雫以外にどこにいるってんだよ!家族だって、僕に希望なんか抱いちゃいない!友人なんていない!先生だっていじめを黙認していた!どうやって雫以外の他人を信じろってんだよ!」僕がしたことのなかった大人に対する全力の反抗、死ねばこんな反抗した時の罪悪感なんて感じない。

「じゃあな、由紀、先に逝ってくるわ」「そうか、逝ってらっしゃい、来世こそは幸せにな!」もう息が苦しい、視界がぼやけてきたし、首を絞める痛みも感じない、僕ももうすぐ死ねるだろう。そう考えていた時、雫は手に持っていたナイフを首に当て、自らの首を切った。彼の体が一気に脱力し、足から崩れ落ちるようにその場で倒れ込んだ。首を切る瞬間だけ、一瞬僕の視界が戻った、あぁ、本当に来世こそは幸せになってくれ。視界がより一段とぼやけてきた。

雫の血が僕の頬にもついたのを感じる。警察官が何か言っている。けど何を言っているかわからない、まるでノイズのように音が汚く聞こえる。

そして僕の視界は完全な闇に包まれた。ようやく死ねた、彼を同じ場所で、彼の罪を僕は背負うことができないけど、もし君が地獄行くとするなら僕も、一緒に君の手を引いて一緒に行くよ。

今度はもうはぐれない。ずっと、ずっと・・・・

「_________、____。」



『君だけがいない世界で、君だけを探す』

「__、お___ま__っ__く__」雫が何か小さな声で言っていた。けど聞き取れない。


「__!!_を___!」また雫の声がどこからか聞こえる気がする、もう地獄に着いたかな、そう思い目を開けると、そこに広がっていたのは地獄よりも酷い世界が広がっていた。

目が、心が、頭が、現実を拒む。

「は?は?!ハァ?!!なんでだよ!なんでここに雫がいないんだよ!なんで僕だけがこんなところにいるんだよ!」そう騒いだら「由紀、起きたんだな」と心配そうにしていない父がいた。

「ここには雫君はいない!あの子は死んだんだよ!お前と違ってな!」その言葉を聞いた瞬間、見えていた景色に色がなくなった。

色が無くてもわかる。ここは病室。僕は治療を受けて生かされた。

「どうしたんですか?何かあった・・・って御影さん起きているじゃないですか!」と看護師さんらしき人が騒がしく入ってきて、騒がしく出て行った。

「お前はあそこにいた警察官の人に助けてもらったんだ!意識は失っていたが、お前自体の命に関わることはないとさ!」その言葉を聞き、君が死んだあの光景だけを思い出し猛烈な吐き気がした。

ここ数日何も食べていないから吐いたのは胃液だけだった。

それから僕は現在の状態を聞いた。雫は死んだ日は八月三十一日らしく、今日は九月一日、退院したら僕は捕まるらしい。

数日後、問われた罪は「強盗罪」のみで、外傷を負わせたこともなかったから「保護観察処分」となった。

雫も同様に「強盗罪のみ」であった。

あれだけ家の周りに咲いていた青と黄色のカーネーションは枯れてしまい、日常から彩りが失われた。

あいつのいない世界では息の仕方を忘れた。

息がつまりそうな程息苦しくて、食事が喉を通らない。

そんな不養生が続き、もう二度と治らない、不治の病にかかってしまった。余命はあと15ヶ月、来年の11月ごろと言われた。これからどう過ごそうにも何もする気になれない、君がいないから。

誰も報われない、誰もが不幸になる。

僕があの時死ねたらなんてあの日からの夜の数だけ考えてきた。クラスメイトも、家族もいた。

君以外は誰も、何もかわっちゃいない。それなのにどこを探しても君だけは見つからない、この世界は君と僕だけの世界なのに、消える時は同時のはずだったのに、この世界で、

君だけが、どこにも・・・いないのだ・・

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