表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛は消えてなくなりました  作者: もも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/19

19 ウィステリア未来に希望を見る

 あの後お兄様夫婦とマリアンヌとセオドアにはケーキを、使用人には焼き菓子をどっさりお土産に買って帰った。


「叔母ちゃまお土産ありがとうございます。やっぱりキャンディの効き目は絶対ね」 


「キャンディへのお願いはお土産だったの?リボンもケーキも気に入ってもらえたかしら?」


「はい、可愛くて素敵です。ケーキもみんな美味しそうで迷います」


「良かったわ。今度また一緒に出かけましょうね」


「はい、叔母ちゃま。楽しみにしていますね」



キャンディへ込める願いはこの癒しの時間だわ。

これからも続きますように・・とウィステリアは思った。



滞在中兄が「後数年経ったら王都に帰って来ないか?貴族学院に入れるだろう?ロイにも同世代の友人がいた方が良い。勉強が出来るだけでは人との付き合い方が歪になるかもしれない。その時は屋敷のことは考えてやるから。悪い様にはしないよ。可愛い妹と甥のことだからね」と言ってくれた。


「まだ時間はたっぷりありますわ、お兄様。いつも気にかけてくださりありがとうございます。お義姉様にもとても感謝していますの」


「当たり前だ、二人しかいない兄妹なのだからな」


「私にとっては三人ですわ。お義姉様は実のお姉様のような方なのですよ」


「ああ、その通りだな」


兄が嬉しそうに笑った。






 王都での滞在を楽しんだウィステリア達は、一ヶ月後惜しまれながら家に帰ることにした。



ランドル家から籍が抜けていないウィステリアとロイは伯爵令嬢とその令息だった。


デヴィットと離縁した後、籍はランドル家に戻っていた。何年か後には王都に帰るのもありなのかもとウィステリアは思い始めた。ロイを守る為にどうするのが良いのか考えを巡らせた。

いずれはお父様の養子にするのが良いのか相談をしてみようと思ったが、もう少し猶予を貰いたい。愛しい我が子と書類の上で離れることさえウィステリアには耐え難いことだった。



それに帰ったら父親のことも話さないといけない。聡い子だから疑問に思っているだろう。もうこれ以上有耶無耶には出来ない。ウィステリアは覚悟を決めた。



詳しいことなど聞かせるわけもない。お父様は病気で亡くなったのだと教えるつもりだ。いつか大きくなって知りたがったら話す覚悟はあった。

愚かな結婚生活のことを。

ロイが悲しまないと良いけど、思うのはそれだけだった。




久しぶりの自宅はアンやその子供たちとサムが迎えてくれた。


「ただいま、みんな。留守の間ありがとう」


「おかえりなさいませ。ご無事で何よりでございます」


王都のお菓子を見て目を輝かせるアンの子供たちに疲れが飛んだ。

アンには小さな紫水晶の付いたネックレスをプレゼントした。

「こんなにお高い物をよろしいのでしょうか?」


「良いのよ、ピンチの時に駆けつけてくれた貴女にお礼がしたかったの」


「ウィステリア様、ありがとうございます。直ぐ着けて良いですか?」


「良いけど、ゆっくりしてからね」

にっこり笑って言うと


「まあ、まあ私としましたことが、お茶も差し上げず、お坊ちゃまもお疲れですのに大変失礼いたしました」


「ふふ、アンのそんなところが見えて良かったわ。昔は完璧な侍女だったもの」


「ウィステリア様には敵いません。お茶を淹れて参りますね」


「お願いね」


久しぶりのアンの淹れてくれたお茶は美味しく懐かしい味がした。



お土産に買ってきた子供用の玩具の剣は三人のちびっ子剣士を喜ばせた。

遊ぶ時は剣の師匠のダンが見てくれていた。一番強いのは六歳のビルだった。体格の差は子供にとって有利だ。

悔しそうな下の二人は負けても食らいついて行った。



ダンは将来二人がロイ様の従者になると良いがと思いながら、微笑ましそうにその様子を見守っていた。




「みんな手を洗っておやつにしましょう。ジュースもあるわよ」ウィステリアが声をかけた。


「はい、かあ様。ふたりとも手をあらいに行こう」

玩具の剣をダンに預けたロイがにこにこして返事をした。


「体を動かすのはエネルギーを発散できて良いわね。さあおやつを食べてね。ただしご飯を食べないといけないから考えて食べて」


「はい、かあ様。剣であそぶのは思ったよりもたのしかったです。今はビルがつよいけどすぐにおいぬいて見せます」

負けず嫌いなロイを微笑ましく思いながら


「三人が強くなってくれたら母様安心だわ」とウィステリアは言った。


「つよくなってかあ様をわるものから守ります」


「小さなナイトね、ありがとう。ビルとアレクも楽しかった?」


「はい、楽しかったです。ダンさんを師匠にしてこれからももっと強くなって母さまや奥さまをお守りできればいいなと思います」


「あら、嬉しいわ。ダン、小さな弟子が三人出来たわよ」


「無理をさせないようにゆっくりと鍛えます」

厳つい男は優しい顔で笑った。



陽射しの暖かな庭にみんなの笑い声が聞こえていた。






これで最終回になります。読んでいただきありがとうございました。では皆様またお会いできますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ