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愛は消えてなくなりました  作者: もも


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16 閑話 その2

 デヴィットに助けられたのはヨゼフというマリアナ国の大使だった。助けてもらったのに逃げるように去って行ったデヴィットを、目で追っていた彼は薬屋に知っている人かと聞いた。


「いいえ、知らない人です。良かったですね助けられて。この国の言葉が話せるじゃないですか。わざとですか?」


「痛くて話せる状態ではなかったんだ。この店の薬はよく効いた。助かった」


「そうですか、ありがとうございます。余分に買っておかれると良いですよ。食べ過ぎはいけません。さっきみたいに痛くなっったらこの薬を飲んで腹を温めると良いです」


「助かった、ホテルに帰るとしよう」


「お大事になさってください」



 ヨゼフは大使館に帰り辺境に住む黒髪で黒い眼鏡の男を調べ始めた。

住所は薬屋の近くだろうとあたりをつけた。総菜の匂いがしていたからだ。


どうしてもお礼がしたかっただけだった。それにマリアナ語が使えるなんて嬉しいじゃないか。もしかしたらいい拾いものかもしれない。貴重な人材は逃さない主義だった。



 そんなこととは知らないデヴィットは冷たくなってしまったパンと惣菜を水で流し込んだ。


シャワーを浴び紙を取り出しパズルを考え始めた。思いの外楽しい時間が過ごせた。ベッドに横になると珍しくあっという間に眠れた。いつもは剣を振る以外にはぐっすり眠ることが出来なかったが、頭の疲労ても眠ることが出来るのだと発見し嬉しくなった。




 ヨゼフ大使は一ヶ月後恩人の彼が騎士団の文官をしていることを突き止めた。

臨時雇いだった。

有能な彼に良い仕事を与えたいと思ったヨゼフ大使は、騎士団事務所にデヴィットへの面会を申し入れた。街で助けてもらったお礼が言いたいと言って。



騎士団の面会室に現れたのはいつかの中年紳士だった。



「どうしてここが分かったのですか?大したことはしていませんよ」


「私はマリアナ国の大使をしているヨゼフと言います。やはりお礼が言いたかった。それに貴方はマリアナ語が話せる。臨時雇いより正式にマリアナ大使館に勤めませんか?有能な人が必要なのですよ」


「私は有能ではありません。それに女性恐怖症です。此処はそういう配慮もしてもらえています。今のところ移る気はありません」


「だが、短期間の契約ですよね。女性の問題はきちんとした対処をしよう。大使館の者たちに知らしめて近寄らせない様にも出来る。給料だって今の三倍は出します。住む所もある。但し大使館がさほど大きく無いので、広さは期待しないで貰えるとありがたい」



「どうしてそんなことまでして雇いたいのですか?」


「性格が優しい、マリアナ語が出来る、この国の言葉も話せる。君はこの国の出身ではなく多分隣の国アリーダ国の出身でしょう。三ヶ国語以上話せる有能な人物を見つけたのでね。逃がしたくないのですよ。大使館員にぴったりだ」


「性格はどうか分かりませんよ。それに私は母国へは帰りません」


「何か深い理由がありそうだが聞きません。どうかな、働いてみませんか?」


「考えさせてください」


「分かりました。返事は大使館の私宛に手紙を。では帰るとします」


「今日はわざわざありがとうございました。ではこれで」



きっと私のことなど調べ終えているに違いない、助けてしまった紳士のことを考えながらデヴィットはふう~っと息を吐いた。



ハリーが近づいてきて


「街で助けてあげたのかい?デヴィットは親切だね。皆にお土産だと言ってお菓子を持って来られたよ。後でおやつに食べようよ」


「ちょっと助けただけなのに、わざわざ挨拶に来るなんて思ってもいませんでした。ハリーさんのほうが親切ですよ。アパートを紹介してくれたじゃありませんか」


「知ってる所に空きができただけだよ。デヴィットはタイミングが良かっただけだ」


「保証人になってもらったんです。感謝してます」




 デヴィットは貧乏な今の暮らしも満足しておいたが、このままでは次の仕事を探さないといけないところだった。厚意に甘えて移ってもいいかと考えた。


マリアナ大使館で働けば迷惑をかけた国の両親に育ててもらった教育費が少しでも返せるのではないかと思った。どれくらい返せるのか、どれくらいかかるのか分からないが、遠縁の子供を教育し直しているのは自分のせいだ。



生まれてからどれだけの愛情とお金をかけて慈しんでもらったのか漸くわかった。学院、大学、婚約式、結婚式、屋敷も建ててもらったのだ。

それを一瞬で無いものにした。せめてお金を貯めて返済しよう。


デヴィットはマリアナ国のことを図書館で調べ、ヨゼフの元で働こうと決心した。











この時ウィスタリアがロイを産んでいたのだが、デヴィットもクロウ家も知らずにいた。

ロイをクロウ家に取られたくないウィスタリアとランドル家は、一定期間出産をひた隠しにしていた。


幸いロイはウィスタリアにそっくりだった。見つかってもウィスタリアだけの子だと胸を張って言うことが出来る。生物学的な父親が何だというのだ。

断固言い返す自信があった。





読んでいただきありがとうございます。

何故出産を隠せたか?周りの協力の賜物です。皆ウィスタリア様とロイくんを守るぞと一致団結していました。

次回からウィスタリアに戻ります。


夕方もう1話投稿します。よろしくお願いします。


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