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愛は消えてなくなりました  作者: もも


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1 ウィステリア婚約をする

よろしくお願いします

 三歳年下のデヴィット様と婚約した私ウィステリアは十八歳。適齢期の最後ってとこかしら。

語学の勉強が好きで王宮の外交部に勤めたいと試験を受け、合格通知を手にし喜んでいたところにお父様に呼ばれ


「婚約が決まったよ、ウィステリア」と言われてしまった。


「えっお父様せっかく念願の試験に合格しましたのに、諦めなくてはいけないのですか?ちなみにお相手はどなたなのでしょうか?」


「クロウ伯爵家の嫡男デヴィット殿だ」


「私の三歳下で今年学院に入られたお方ですわよね。犯罪者になった様な気がいたしますわ。何故私が選ばれたのでしょう?」


「クロウ伯爵家は外務大臣の家柄だ。お前の語学力が欲しいそうだ。デビット殿を助けて欲しいと言われた」


「で、家にはどのような利がありますの?」


家を継ぐのは二歳年上の兄だ。一生仕事をして生きていっても良いかなと思っていた。

学院で同級生が恋人を作っていても、婚約者と仲良さそうにしてでも、やりがいのある仕事を見つけようと頑張って勉強をしてきた。

王宮の外交部は狭き門だった。

しかし、その分給料が良いのだ。専門職だから普通の文官の二倍は出る。伯爵令嬢だが家の為だけに生きるのは悔しくて必死に勉強して得た立場だ。

このまま辞めるのはあまりに惜しいので粘ってみた。




「家の領地の特産である牛や豚の王都への通行料を半額以下にしてもらう契約だ」


「その為に私のしてきた努力が無になるのですね。領地から王都までにクロウ伯爵家の領地を通らないという訳にはいきませんものね。デビット様は納得されているのでしょうか?年をとってからの三歳差は大したことではありませんが、十代の三歳差は大きいと思いますが」


ウィスタリアは恨めしい気持ちを込めて父の目を見つめた。


「勿論納得されている。お前の優秀な噂は卒業しても残っているそうだ。王宮の試験も最高得点だったと大臣にお聞きした」


「学院の成績と王宮の試験結果が良かったばかりに目を付けられたのですね。仕方がありません、諦めます。結婚はデビット様の卒業を待ってということで合っていますか?」


「そうだ、婚約期間は王宮に勤めて良いと仰っている。花嫁修業は同じ伯爵家だ。必要は無いだろう」


勤めて良いとは随分上から目線だこと。でも三年は勤められるのね。嫁ぎ先は外務大臣のお家だから、努力は無駄にならないはず。

せっかく自立をしようとしていたのに残念だわ。同じ伯爵家なのに断らないなんて、お父様税金に釣られたのね。私も貴族令嬢ですわ。今まで受けてきた貴族の恩恵をお返ししなくてはなりませんわね。


でも婚約中に年上だと言って嫌がられるかもしれませんわ。仕事を見つけておいて良かった。もしもに備えて貯金をしなくてはなりませんわね。では寮に入って一人になっても困らない様にしておきましょうか。


「お父様向こうに落ち度があった場合、こちらから縁を切っても良いようにしておいてくださいませね」


浮気されて愛人を作られても我慢をしなくてはいけないような生活は御免だ。


「ああ、分かった。そのように契約書に書いておくとしよう」


 ウィステリアは見かけは儚げな美人だが、中身はとてもしっかりした女性だった。



「ウィステリア、顔会わせてだが一月後の休みの日でどうだろうか?お前も仕事を始めたばかり、向こうも学院に通い始めたばかりだ。ちょうど良い頃だと思うのだが」


「分かりました。その日は必ず帰って参ります」


「帰るって、家から通うのではないのか?」

父が驚いた様な顔で言った。


「嫌ですわ、通勤に時間を取られたくありませんの。寮に入りますわ」


「侍女を連れて行けるのだろう、アンを連れて行け」


「侍女付きで仕事に行く文官はおりませんわ。食堂もあるようですし、洗濯もランドリー部門があるそうですの。不自由ではありません。流石王宮ですわ」


「風呂や身支度が困るだろう、何もした事が無いのだから」


「初めてのことを経験するのは楽しみですわ。でもアンにはお風呂の入り方は聞いておいた方が良さそうですわね。ドレスは帰宅して着せて貰うことにします。多分回数も少ないと思いますので」


「取り敢えず最初の休みの前日には帰って来るのだぞ。迎えを出す」


「分かりました、お父様」



☆☆☆




 そうして勤め始めた勤め先はとても忙しい部署だった。外国語の書類が机の上に散乱しごちゃごちゃに置かれていた。案内してくれたスージーさんは平民だが優秀で、大きな商会のお嬢様だった。


「私はスージーよ、ようこそ外交部へ。伯爵令嬢様だっけ、ウィステリア様と呼べば良いのかしら」


「いえ、リアとお呼びください。先輩」


「先輩だらけだからスージーで良いわ。リアちゃん」


「ではスージーさんと呼んでも良いですか?」


「勿論、貴女みたいな可愛い子が来てくれて嬉しいわ」


「早速国別に書類を分けて良いですか?」


「ありがとう、助かるわ。目の前のことが忙しすぎて整理まで手が回らないのよ」



同期は二人いた。子爵家の令息と男爵家の令嬢だった。忙しく挨拶もままならない関係になった。






寮は貴族用らしく三部屋もあり広くてお風呂やトイレも付いていた。

これなら慣れるまでアンに来て貰っても良いかもしれない。それだけの給料は貰えるのだからとウィステリアは独り言ちた。


アンはウィステリアが小さな頃からの専属侍女だった。三歳年上で姉のようなアンは両親の次に寮暮らしを心配していた。

お嬢様が一人でやっていけるのでしょうかと。



デビット様との顔合わせは直ぐやって来た。








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