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双星の夜

作者:
掲載日:2025/10/20

星に選ばれた子は、願いを叶えて街を去る。

その夜、親友の無私の願いが、「一夜に一つ」という古い掟を

打ち破る。


愛と絆の力で運命を共有した二人の、切なく美しい旅立ちの物語です。

 ここは、まだ名を持たない小さき命たちだけの町。

朝は澄んだ笑いで目を覚まし、昼は跳ねる心音で満ちる。


 そして、日が沈み始めると、町じゅうの子が外へ出る。

誰の手に星が落ちてくるのか、息をひそめて待つためだ。

今日こそ自分かもしれないし、何年も先かもしれない。


 石畳の広場は白い息で満たされ、空には数え切れない光が瞬いている。

そのうちの一粒が、必ず誰か一人の頭上にだけ、まっすぐ落ちてくる。

その星に触れた瞬間、心の奥に眠る願いが必ず叶う

――そして日の出とともに、選ばれた子は山をくり抜いた一本のトンネルをくぐり、町を去らなければならない。

理由も行き先も、誰も知らない。


 「もし君の番が来たら、どんな願いをする?」

隣で笑うのは幼なじみの親友だ。

 「まだ言わない」

ぼくは答えながら、夜空を仰いだ。

言わない理由はひとつ。願いを言葉にしたら、すぐにでも叶ってしまいそうで怖かったからだ。

親友は小石を蹴りながら笑った。

 「じゃあ、ぼくも秘密にしておく」


 静かな夜が何日も過ぎた。

そして、その時は突然やって来た。

ひときわ大きな光が、親友の頭上にまっすぐ落ちてきた。

その瞬間、広場にいた子どもたちは息を止める。

星は迷わず親友の掌へ吸い込まれ、淡い温もりだけを残した。


 「……今、何を願ったの?」

胸の奥が凍えるのを感じながら、ぼくは訊いた。


 「なにも」

親友は笑った。

その笑顔が、かえってすべてを物語っていた。


 東の稜線が明るくなり始めた頃、親友の足は自然にトンネルへ向かっていた。

町外れの森を抜ける一本道。

その先に、深い闇を抱えた長いトンネルが口を開けている。

そこを通った子が、二度と戻ったことはない。


 「行くんだね」

ぼくは声を震わせながら言った。


 「うん。……でも怖くないよ」

親友は振り返り、少しだけうつむいた。


「本当の願いは、君が幸せであることだったから」


 その言葉が落ちると同時に、ぼくの胸に強い衝動が走った。

夜空を見上げる。

――その時、あり得ないことが起きた


二つ目の星が、同じ夜に降りてきた。

光はゆっくりとぼくの頭上へ落ち、掌に吸い込まれる。

町の子どもたちが一斉にどよめいた。

一夜に一つという古い掟は、まるで存在しないかのように破られていた。


胸の奥でただ一つ、願いが結晶になる。


――親友とずっと一緒にいられますように


光が弾け、足が自然にトンネルへ向かう。

親友が驚いた顔で、やがて泣き笑いのように微笑んだ。


 「……君の願い、聞いていい?」

 「今、もうわかったでしょ」


ぼくたちは手をつないだ。

トンネルの奥から、まだ名もない薫りが、そっと頬をなでた。

二人の影はゆっくりと闇に溶けていった。

読んでくださり、ありがとうございました!


もしあなたがこの町の子どもだったら、どんな願いをしますか?


一言でも構いません、感想をいただけると飛び上がって喜びます。


この物語と出会ってくださり、本当にありがとうございます。


あなたにも素敵な星が降ってきますように。

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