〜5〜美形
「はあ…さっきからしつこい。てめぇらなんかに興味ないからさっさと消えて?」
「……ぁ?」
口に出してから焦る。
(あ、やべ。わたしのばかぁ!!)
こういうタイプの奴らは沸点が低い上にキレると何してくるか分からない。案の定男達から笑顔が消えた。
「さっきから下手に出てやりゃなんだその口の聞き方は!!ほんとは声かけられて嬉しいくせによ、黙って着いてくりゃいいんだよ!」
ほんとは声かけられて嬉しいくせに?こいつらは本気でそう思っているのか?思わず呆れた顔をしてしまう。心底理解ができない。理解したいとも思わないが。
「は?そんなわけないでしょ?バカなの?」
「あ゙ぁん!?」
「すぐキレんのやめてよ。うるさい」
焦る心とは裏腹に言葉は勝手に相手を煽る。でもここで諦めて謝るのも絶対に嫌だ。それに謝ったところで許してもらえるわけはないし、こんな奴らに頭を下げるなんて新手の拷問だ。謝るくらいなら殴られた方が百倍マシ。そんなことを考えていると相手が拳を構える。
(ほんとに殴んの?やば。もういいや、好きにしよ)
マオはにこりと笑みを浮かべる。そして言い放つ。
「こぉんなにかわいい美少女に手あげるなんてほんっと無様だねぇ?」
「てんめぇ!!!」
この言葉で男は殴りかかってくる。
拳が見える。逃げなければいけないのに、身体は動かない。
(ああ、やっぱりこうなるのか)
目を閉じ、迫り来る衝撃に耐える為身体を固くする。
──衝撃は来なかった。
バシュッ、と空気を裂くような音がした。
なぜだと目を開くと、ピンク髪の男がナンパ男を投げ飛ばしていた。ピンク髪は更に仲間達も手刀で気絶させていく。
(手刀!?ほんとにできる人いるの!?ていうか誰!?)
周りがざわつく中、呆然としながら男を眺める。そういえば喧嘩を止めていたのもこの男だった。こんな少女漫画みたいな事が実際にあってたまるか、と脳内で吐き捨てる。いや薄々予想はしてたが、ほんとに現れるとは思わないだろう。
「ねぇ、大丈夫だった?」
男に話しかけられる。少し高めの柔らかい声色でとても聞き馴染みが良い。というか顔もいい。ピンク髪のハーフアップに、優しげな垂れ目、茶味がかったピンクの瞳。通った鼻筋に艶々した唇。まるで二次元から飛び出してきたかのような見た目だ。二次元じゃないのにピンク髪ハーフアップが似合う人間なんているはずが無い。
(ここって乙女ゲーの世界だっけ?)
そんなことをぼけっと考えながら突っ立っていると、困った顔をした男に再度話しかけられる。
「………大丈夫?どこか怪我してる?」
「あっ全然大丈夫です!どこも怪我してません!助けて頂いてありがとうございました!」
慌ててお礼を言うとその人は微笑んだ。良かった、と。ふわりと花が舞うように。いや、花が開いて周りに花びらと蝶が舞うように。あまりの眩しさに目が潰れそうになる。
「ぇぐい…」
「ん?どうかした?」
「いえなんでもないです!」
「ならいいけど…」
マオがあまりの美に恐れ慄いていると、流石に遅いと思ったのか探しにきたリノとラウが来る。
「マオ!大丈夫!?」
「リノ!ラウ!ごめん遅くなって…」
「そんな事はいいから!!何があったの!?」
謝ると怒られ、事情を説明すると更に怒られた。そこで煽るのはバカじゃん!だそうで…
(そうだけどさ!?被害者じゃんわたし!)
一応被害者な筈だが二人に謝っているとふふっと笑い声が聞こえた。三人してそちらを見ると更にあははっとその人は笑った。また一瞬見惚れるも、取り敢えず謝罪をしておく。
「すみませんお見苦しいところを…」
「ふっ…くく、ううん、面白かったから大丈夫。仲良いんだね」
──その目の奥に、仄暗い光が宿るがマオは気付かない。
「は、はい」
ここで面白いと言う事に若干引きつつ、仲はいいと思うので頷いておく。そうこうしている間にリノとラウの興味がその人へ向いたようで、質問が飛ぶ。




