〜2〜転生
「…ぉ!…まお!マオ!起きて!朝だよー!」
「んぅ……あさ?」
八歳くらいの女の子に名前を呼ばれ、朝だと起こされる。だんだん目が覚めていくと共に混乱していく。
(まってまって、ここどこよ!?誰よこの子!?誘拐!?)
バッと起き上がり、周りを見回す。すると突如、頭の中に情報が流れ込んでくる。
この女の子はリノ。八歳だ。このリトルフィーネという国の北西部の孤児院にて暮らしている。そしてそんなリノと共に暮らしているのが、マオだ。どうやらこの世界では名前がカタカナになっているらしい。
そしてなんとこの世界には魔物がいるらしい。魔物がいるという事は魔法もあるという事だが、限られた人間とこことは隔離された場所にある魔族しか魔法は使えないとか。しかしこの世界に現れる魔物を倒せるのは魔法だけらしく、使える者はとても感謝されるらしい。
だが、マオは魔法が使えないそうだ。
(ラノベの世界線やん…転生って普通チートじゃん!!なんでわたし違うの!!)
脳内でキレ散らかす。そうこうしていたら時間が経っていたようで、リノに声をかけられる。
「もう!マオ!ごはんだよ?どうしたの、ぼーっとして」
(あー!ごめんほっといてでもまだ状況の整理が!!)
「早く食堂行くよ」
「ハイ」
八歳とは思えない威圧感で急かされ、思わず背筋を正し返事をする。
歩き出す前にチラッと部屋にある鏡を見る。そこにはとんでもない美少女がいた。
サラサラの紺色の髪、ピンクがかった紫の瞳、ツンとした目元と鼻、長い睫毛、薄い小さな唇。白いさらさらしたワンピース。首元のレースが可愛らしく、どこか冷たくも可愛らしい印象を持つマオに似合っていた。
(美少女になってる!?あんなに冴えなかったのに…)
過去の自分が今の自分に嫉妬するという謎の現象に陥りながらもマオは少し、ほんの少し、決して認めたくはないが自分に見惚れた。
「マオ〜早く〜」
呼びかけられリノを待たせていた事に気づき謝罪をする。
(おしゃれ楽しそうだけどナンパとか酷そうだな…)
少しの不安を抱きつつもメイクやおしゃれが楽しそうだとはしゃいでしまった自分を落ち着かせながら歩き出し、今度こそ食堂へ向かった。
食事を終え部屋に戻って考える。なぜ自分がこんな事になっているのか。幸いと言うべきか、両親は自分の子供が好きでは無いようで幼い頃から1人でいることが多かった。故に友達もいなかった自分が死んでも、悲しむ人がいないと考えた。
(あの人達はわたしが死んでも悲しまないだろうな。あ〜あと後処理とかめんどくさがるだろうなぁ)
そんなことを考えてネガティブになってしまったが、頭を振って切り替える。
(違う、今は状況の整理だ)
今自分には日本での真緒の記憶とこちらの世界でのマオの記憶が混在している感じだ。だがこちらの世界の記憶もあるので、戸惑う事は無さそうでひとまずは安心できる。
ふと、転生もののラノベで読んだ主人公がやるべき事を紙に書き記していた事を思い出した。まあ、今の自分はラノベの主人公のような状況になっているわけだが。ともかく、先人にならい自分も書いてみる事にした。
机を開けると、丁寧に整理整頓されていた。
それを見て思う。
前世の記憶を思い出したパターンと、この世界のマオの人格を乗っ取ったパターンがあるのではないか。
(乗っ取ってたらどうしたらいいのよ…)
恐怖を覚えながらも恐る恐る紙と万年筆を取り出す。
(すご…こんなのに書いた事ない…)
コピー用紙ではない紙に万年筆で書くという日本ではあまり無い環境に内心興奮しながら、慎重に箇条式で書いていく。
一、自分は事故に遭って死んだ。
二、なんらかの力が働いてこの世界に転生した。
三、皆死んだら転生するのか、自分だけ何故か転生したのかは謎。
四、人格を乗っ取った可能性もある。
五、この世界で暮らしてきた記憶と向こうの記憶がごっちゃにならないように気を付ける。
六、周りにこの事はバレないようにする。
この世界と元の世界は文字が違うので、万が一の為に日本語で紙に書き記す。
周りに相談する事も考えたが即座にその考えを打ち消した。自分に違う世界の記憶があるなんて言ったら病院送りだ。
(変人だと思われたら癪だしね)
そんなこんなで隠すことを決めた所で、何書いてるの?と後ろから呼びかけられ思わず飛び上がって驚いてしまう。
「うわぁっ!?!??!」




