〜18〜普通
風がびゅーびゅーと吹き荒れる。星も月も見えない夜、一つの人影が孤児院の前に現れた。影がゆらりと揺れるとただ一つの灯りである街灯がふっと消え、影も消えた。
孤児院へ行く事が決まった次の日、四人は孤児院の前へ来ていた。
マオは髪の色を変え、眼鏡をかけ、帽子を目深に被った変装姿だ。
雲ひとつない青空の中、マオは扉を開ける。すると中から人がどばっと溢れ出してくる。
「うわっ!!なに!?」
「マオ!!どこ行ってたの!?それにその格好は…」
リノが飛びついてきて、困惑の声を上げる。
「突然いなくなってごめん…説明するから、この人達と一緒に入らせて」
「え…コンくん?なんでコンくんが…」
「突然ごめんね、失礼します」
スイとシロも失礼します、とマオたちと共に中へ入る。
皆が座ったところで、マオは口を開きことの次第を説明する。
「こんな事になっちゃって、ほんとにごめん」
マオは目を伏せ、頭を下げる。即座に孤児院の皆が否定する。
「マオが謝る事ないわよ!悪いのは攫おうとするやつらなんだから!」
「そうそう!!マオは被害者なんだから謝らなくていいの!」
「うん…」
(被害者…そう、だね。でも)
(わたしは、自分が被害者だとは思えない…)
自分が生きている事によって、色んな人たちに迷惑をかける。こちらから与えられるものは何も無いのに。
どうしても消えない罪の意識。それによって素直に慰めの言葉を受け取れない、その様子をコンは悲しそうな顔で見つめていた。
「じゃ、そろそろ帰ろっか」
「え〜、もう帰っちゃうの?」
コンがマオに言い、リノは悲しそうな声を出す。コンは眉を歪めながら、リノに言う。
「ごめんね。あんまり長居すると、危険だから」
「ごめんね、リノ…またね」
悲しそうな、寂しそうな顔をしながらリノの頭を撫で、マオは立ち上がり出口へと向かった。
「じゃーねー!!またねー!!」
皆に見送られながら、四人は帰路へとついた。
「みんな明るくて、いい子達だったね」
「うん、すっごく優しくて、人を笑顔にできて…すごい子たちなの」
マオは口元を緩ませながら、答える。が、すぐに顔を歪ませ三人を見る。
「ねえ…どうして、こんな目に遭わなきゃいけないの?どうして…どうして、"普通"の幸せも許されないの?」
「っ……それは……」
縋るように見つめたマオの問いには答えられず、目を逸らすコン。スイとシロも傷ましそうな顔をする。
「わたしは…わたしは、いつだって"普通"にはなれなかった!!みんなは当たり前の顔して、親と、友達と、笑ってるのに!!」
「マオちゃん…」
何かを思い出しながら声を張り上げるマオ。伸ばしたコンの手を払いのけ、更に言葉を発する。
「しあわせだって思うと、いつも壊れるの…無くなるの…ねぇ…なんで…っなんでなの…?」




