〜10〜保護
赤い、紅い、月。
思考を戻し、コンに答える。
「…大丈夫です。すみませんが、家に帰りたいので案内していただけますか」
「んー、そうしたいのは山々なんだけど」
マオは首を傾げる。
(けど?)
コンは困った顔をして言う。
「君、裏社会ですっごい価値ついてて。千年に一人の美人だー、とか言って。だーかーら!俺のところで保護する事になったんだよね〜」
俺のところで、保護、する?聞き間違いだろうか。ものすごく恐ろしい言葉が聞こえたような。
「あの、なんて?」
「ん?だから、マオちゃんを俺のところで保護する事になったよって!」
聞き返すと律儀に答えてくれる。…聞き間違いではなかったようだ。
(は、え?近づきたくないと思ったばっかなのに??)
一拍置いてマオは叫ぶ。
「は〜〜〜!?!?!?!?」
コンは困ったように笑いながらこちらを見ている。笑っている場合では無い。よく知らん男の元へ行けと!?誰がそんな勝手な事決めた!?マオからすれば得体の知れない男という点では先程の男と同じなのだ。正直恐怖心がまだ抜けていない。そんな状況で保護されろと言われても無理に決まっている。
「いやいや!!無理ですって!!!!誰がそんなこと決めたんですか!!!」
「まーまー、落ち着いて?とりあえずここから出よ?そしたら説明するから」
そう言われ先程の男の事を思い出す。確かにこんな所にいるのは気分が悪いし早く離れたい。マオはしぶしぶ頷く。
「分かりました」
「うん。じゃ、ちょっとごめんね?」
「は?」
ごめんね?と言うとコンはマオを横抱きにした。大事な事なのでもう一度言おう。コンはマオを横抱きにした。マオはまたもや混乱する。もう非日常な事が起こりすぎてキャパオーバーだ。
「ちょっ!?ちょっと待って!な、何でお姫様抱っこ!?」
「この方が速いし…」
「いや、歩けますって!おろして!!」
コンはんーだの言いながらも下ろす気はなさそうだ。そしていきなり口閉じてなね〜と言いながら窓から飛び降りた。
(!?!?!?と、飛び降りた!?!?)
咄嗟に口を閉じたおかげで舌を噛むことは無かったが、コンはマオを姫抱きにしながら屋根を飛び移っていく。まさに漫画でしか見たことない状況だ。人一人抱きながら飛び移るなんてどんな身体能力だ。
(やっぱり異世界だな)
前世を思い出してからあまり実感が無かったが、ここが異世界だということを実感する。
やがてコンは豪奢な屋敷の前へと降り立った。その頃にはマオはへとへとで、コンにしがみついていることしかできなかった。
「着いたよ〜」
(着いたよ〜じゃないわっ!!先に一言言え!!)
コンは屋敷へ入り、更に奥の部屋へと進んだ。そして椅子に座り、話し出す。
「じゃ、説明なんだけど。マオちゃんへとへとだけどだいじょーぶ?」
「大丈夫なわけ無いじゃん!!死ぬかと思ったわよ!!!」
マオは思わず敬語も忘れて噛みつく。だって本当に怖かったのだ。冗談じゃなくガチで寿命が十年くらい縮んだ気がする。ごめんごめん、と謝ってくるが軽い!と怒りは収まらない。
「ほんとにごめんね。びっくりするよね、ごめんね」
しゅん、としたコンは捨てられた子犬のようで、これ以上追求する気にはなれなかった。決して許したわけでは無いが、確かにすぐ着いたしこの場は見逃してやらんでもない、と考える。詳しい説明も早く聞きたいし、取り敢えずは流す事にした。




