〜1〜神
「あ〜〜つっかれた〜!!」
高校生の双葉真緒は、学校とバイトをこなし家へと帰ってきたところだった。
親は高校生になった途端お金を置いてどこかへ消えたので一人の寂しい一軒家だ。
(今日先生にキレられるわ迷惑客現れるわもう散々、まじむかつく)
どうしようもない苛立ちを持ちながら、鞄を投げ捨てるように置く。
もう身体はへとへとだ。ここで寝たところで怒る人はいないだろう。だが足は勝手に机へと向かっていく。
(こんなとこで真面目さ出さんで良いって自分よ)
そう、真緒は真面目なのだ。毎日こつこつと勉強をし、勉強範囲の予習復習をする事は日課と課している。
ため息をつき、ペンケースとノートを取り出す。
「もはや中毒じゃん、ウケる。いや何も面白くないけど」
(てか一人で喋ってんのきも。)
ふと自分へ意識が向き、苛立ちと悲しみが溢れ出す。
虚しくなり気分が落ちていく。疲れるとテンションが下がるのは皆同じだろう。
(なんですぐ人と比べちゃうんだろ。落ち込むだけなのに。馬鹿じゃんわたし)
自然と俯くが、慌てて顔をあげて頬をぱちん、と叩く。
(だめだめ、えらいよ、かわいいよ、わたし!うん、いい子!)
落ち込んだ時に慰めてくれる人がいない人は自分で慰めるしかない。自分の機嫌は自分で取れ、だ。
そんな事を考えながら消しゴムを使うと、力が入りすぎたようで割れてしまった。元から小さくなっていた物が割れてしまい、ろくに使えやしない。
(さいっあく。ほんと今日ついてない)
予備がないか引き出しを漁るが、入っていない。
(…買いに行くか)
別に今すぐ買わなければいけないわけではないが、ついでにアイスを買おうと思い立ち財布とスマホを持つ。
「行ってきます」
誰もいない家に声を掛け、コンビニへと向かった。
夜空に浮かぶ月は、紅く輝いていた。
(エナドリ味のアイス楽しみ〜!!)
目的のものを買い終え、るんるんで歩く。信号は青。──ここで油断したのが悪かった。
ヘッドライトの眩しい光と吐き出された排気ガスの匂い、擦れたタイヤの音。それに気付いた時、もう車は目の前に迫っていた。
(あ、間に合わない)
ブレーキ音と眩しい光、フロントガラスに映る慌てた運転手とどこか間の抜けた顔の自分。永遠とも取れた一瞬の時間。直後ドンッと鈍い衝撃音が響き渡ると同時に身体に激痛が走る。
(いったいなあ、くそ)
ああ、自分は死ぬんだ、そう直感した。
(…マジでふざけんな。てか普通に信号青なのにこっちが周り確認しなきゃいけないのバグじゃね?)
前々から思っていた事を考えながら走り去っていく車を眺める。
(ふざ、け、んな…クソ野郎、死んだら祟ってやる)
徐々に思考がぼやけていき、遠くに叫び声と怒号、月の光を浴びながら意識は遠のいていき、真緒は眼を閉じた。
真っ白な空間、二柱の神がきゃいきゃいと騒いでいた。二人ともとても美しいが、いまいちはっきりと認識できない。見えているはずなのに、見えないような、曖昧な感覚。
「ねえ!!!まおちゃん死んじゃったんだけど!!!わたしの推し!!!」
「え〜、まじ!?あ、今日ちょうどあの日だしあれやっちゃう?」
「やる!!このまま終わらせるのやだし可哀想だし!!」
「じゃやろやろ〜チートにしようよ」
「するする!で、これも入れて、あれもこうして、よし!いい感じ!」
楽しそうに、無邪気に神たちは真緒の見た目、属性などを弄っていく。
「じゃ〜行ってらっしゃ〜い!」
ここで終わらせるにはあまりにも勿体無い、それに自分も悲しい、そんな言うなれば自分勝手な思考で神達は、真緒をある世界へ転生させた。
側から見て真緒はとても可哀想だった。親にほっとかれ、学校ではいじめられ。
故に今度こそは最高の幸せを手に入れられるようにと神は、様々な属性を付け足した。推しの幸せは自分の幸せ、神だろうがそこは同じなのだ。
(なにここ、まっしろい)
ゆっくりと、落ちていく感覚がする。だが不思議と恐怖感は無く、暖かい。
「───、─────」
(誰?なんでそんなこと…)
ふわりふわりと沈みゆく。真緒の意識はそこで途切れた。




