新:変な桃太郎
昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしていました。
ある日、おばあさんが川へ洗濯に行くと、川上からどんぶらこ、どんぶらこと、見たこともないほど大きな桃が流れてきました。
「まぁまぁ、なんて大きな桃なんでしょう。でもこんな桃、家に入らないわねぇ。諦めましょ」
おばあさんは桃をそのまま見送りました。桃は静かに、下流へと流れていきました。
めでたし、めでたし……?
……の、はずだったのです。
◆
桃の中——。
「ちょっ、ちょっ、助けてー! 空気がなーい! 窒息するー! 誰かーー!」
流れ着いた先では、ひとりの意地悪なおばあさんが洗濯をしていました。
「おやまぁ、なんて大きな桃だい。こりゃ食べごたえがありそうだよ。持って帰って爺さんと食べよう」
家に帰ると、意地悪じいさんが言いました。
「おうおう、大きな桃じゃねぇか。前は花咲かじいさんの臼に痛い目見たが、今度は慰めにでもなるといいな」
「さぁ、切るよ!」
スパンッ!
桃が割られると、中からふわりと現れたのは、ひとりの赤ん坊。とても可愛らしい男の子でした。
「なんだいこの桃は、中がほぼ空洞じゃないか。食べるところなんてありゃしない」
「おぎゃぁおぎゃぁ!」
「うるさい子だねぇ、黙りな! なんで桃の中に入ってたんだい」
「おんぎゃあ!」
「うるさいねぇ、桃太郎だお前は。ったく……」
なんやかんや言いながらも、意地悪ばあさんは桃太郎を育てることにしました。
「今日は言葉を教えてやるよ。『金くれよ』、はい、言ってみな」
「金くれよ!」
こうして桃太郎は、ちょっと間違った言葉を覚えながら育っていきました。
◆
ある日、村に役人が訪れました。
「最近、鬼ヶ島の鬼たちが人間の町に降りてきて暴れています。誰か退治してくれないか……」
意地悪ばあさんがすかさず尋ねます。
「報酬はあるのかい?」
「もちろん。今なら任〇堂Sw〇tchを差し上げます」
「おい桃太郎、行ってこい」
「はァ? 行くわけねぇだろババァ、ばーか」
「スイッチもらえるらしいよ?」
「なにぃ! 行きましょう!」
こうして、物欲に動かされた桃太郎は鬼退治に出発することに。
旅の途中、犬・猿・キジが現れました。
「味方になりましょうか?」
「いや、結構っす。じゃ!」
「へっ?」
桃太郎は鬼ヶ島には向かわず、港からユーラシア大陸行きの船に乗り込みました。
「雑魚なんて使ってられねぇよ、もっと強い仲間を集めに行くぜぇ!」
◆
ユーラシア大陸——。
「おっ、虎だ!」
桃太郎は剣を抜き、虎に突きつけました。
「オイ白虎! 俺の鬼退治の手伝いしろ。さもなくば……(ニヤリ)」
その後も朱雀、玄武を強引に仲間に引き入れ、ついには四聖獣を従える最強のチームを作り上げました。
◆
鬼ヶ島——。
「ここが鬼ヶ島か……オイ鬼ども、俺が倒してやる!」
鬼たちは笑いました。
「猿、犬、キジなど怖くもなんともないわ!」
「……行けぇーーーーー!!」
ウォオオォォォォォ!!
鳴き響く咆哮。現れたのは、伝説の四聖獣。
「えっ、えっ!? なぜ中国にいるはずの最強モンスターがここに!? 嘘だろ!? 」
圧倒的な力の前に、鬼たちは瞬く間に敗北しました。
桃太郎は堂々と勝ち誇り、こう言い放ちました。
「二度と町に来んなよ。次は容赦しねぇぞ」
報酬として任〇堂Sw〇tchを手に入れた桃太郎は大喜び。
その凶悪な鬼を倒した噂は、海を越えて中国の皇帝の耳にも届きました。
「ぜひとも我が娘の婿に迎えたい」
かくして桃太郎は中国へ渡り、やがて皇帝となったという——
おしまい?